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第1話「編集会議は始まらない!?」

ここは、都会の片隅にひっそりと存在するとある雑誌の編集部。
いきなり「ひっそりでいいのか」というツッコミはご容赦願いたい。
グルメ動画や食べ歩き番組があふれかえるイマドキの世の中で、そうした華やかなコンテンツとは一線を画す我が編集部。
わりと…いや、かなり真面目に「食の安心と安全」をテーマに掲げる我らの雑誌は、控えめに言って地味である。
その自覚はある。が、改めるつもりはない。
それが私たちの使命だからだ! そもそも…

「編集会議、10時から始めますよ♡」

あ、時間だ。使命については後日、ゆっくりたっぷり語るとしよう。

ちなみに、ハート付き発言をしたのは、我らが編集長・まりりん。
年齢不詳の美魔女で、人生でモテたことしかないという、嫉妬すら意味をなさない人物だ。
そんな人が、なぜこんな地味な編集部の長についているのか、業界の七不思議に数えられているとか、いないとか。
まあ、つまりは稀有な存在である。

さて、某流行り病以降、編集会議といえばリモートでしている編集部も多いことだろう。
我が編集部も、一時期はそうした世間の流れに乗っかった。
そりゃもう、全力で乗っかろうとした。
子育て中の敏腕編集者・しもむーなどは、
「いっそ、完全リモート勤務にしたい。いや、しましょう!」
とリモート激推しだった…のだが、どういうわけか、社員もバイトも、何なら外部のライターまで、みんな編集部に来たがるのだ。
リモートのほうが断然便利なのに、である。
原因は、事務のひろこさんにある。

「この間、柿をいただいたからパイにしてみたんだけど」

そう、これ、これ、これである。
リモートでもいい編集会議に、わざわざオフラインで出席するメンバーは皆、ひろこさんの手作りスイーツが目当てなのだ。
リモート激推しだったしもむーすら、その魅力には抗えないらしい。
今日もしっかり出社してきている。

「ひろこさんのスイーツって、松坂大輔よねぇ。あ、いや、安定感からすると西口文也の方か…」

唐突な発言に編集部全体にはてなマークが飛び交う中、それを意にも介さず、

「絶対的エースっていうか、ひろこさんのスイーツがなくちゃ始まらないでしょ? うちの編集会議」

とドヤ顔で語るのは、我が社のミドル・ボス、ゆみさんだ。いつも編集部の誰もわからない例えをぶっこんでくる、少々厄介な人である。
ミドル・ボスという呼び名にしても、
「ファイターズの新庄がビッグ・ボスって言うなら、私は今日からミドル・ボスを名乗らせてもらうわ」
と3年前に言い出し、むりやり定着させた。埼玉西武ライオンズ命で、パ・リーグ最高、な人。うん、やっぱり厄介だ。

というわけで、なかなか始まらない編集会議。
肝心な中身は、次回に続く…のである。

※この物語はフィクションです。あくまでも、フィクションなんです!

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