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詩集:どこにもいけない

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行き場もなく日々わだかまる言葉達は、詩の中以外はどこにも行けない
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2017年12月の記事一覧

詩:うどんがもうもうと立てる湯気をみていた

詩:うどんがもうもうと立てる湯気をみていた

うどんがもうもうと立てる湯気を見ていた

立ち上る白い蒸気は色が違えば炎の形状と寸分変わりなく

色が違うだけなのだと思ってみている

年の瀬も近くなり

母がベランダの窓を忙しなく拭いており

「大掃除してたのよ」などという

彼女も立派な日本人なのだという事を感じ入り

またもうもうと湯気を立てる椎茸に見入り

外では冬の風が大げさに洗濯物をあおっていた

窓を拭き終えた母は手首にシップを巻い

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詩:炊飯母系宇宙

ふゆのだいどころ
炊かれていくお米

一合

今は凍るような水の中で
ふつふつと夢を見ている

一同

かつて世界は
巨大なホヤホヤの実におさまり
人はその殻の
内側に住んでいて
地表はそのふるいふるい殻が
崩れて盛り上がった場所で
空は今よりも堅く厚く
その先を見通すなど誰にもできず

真理を告げる樹からは
ホヤホヤの実がパラパラと
生まれ出でては落ち続ける

冷たい水がつぶやくように
熱湯へと

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詩:水中の葬儀

詩:水中の葬儀

鯉の群れが岸に沿う

長い行列つくってて

凍ったように動かない

長蛇の列とはこの事で

綺麗に長く列をなす

黒い魚体が並ぶ様

お葬式の参列だ

冷たそうな水の中

何かを思って身を寄せる

一体何への哀悼か

鯉達だけが知っている

百五十匹以上

泣いたかどうかは分からない

冬の旅路の橋の下

暗い沈黙厳かに