「好き」を仕事にすること

去年の今頃には全く想像もしていなかった2020年の夏を過ごしている。家から1歩も出ない/人に会わない日が増えてくると、曜日のみならず季節感までも見失いそうな感覚に陥る。窓の外から聞こえるセミの鳴き声すら、夏を待ち焦がれすぎた自分の脳が生み出した、都合のいい幻聴なのでは?ま、それはさすがに無いけど。こんな冗談を言えるだけまだマシだ。

会社員を辞めてフリーランスになって(と言えば聞こえはいいけど、フリーターと紙一重のようなもんだとよく自嘲する)、なんとか生計を立て始め、気づけばもうすぐ丸2年が経つ。ようやく、1年間の仕事のペースだとか、自分がどういうバランス感で生きていきたいかが掴めてきたタイミングでの、コロナ禍。こればっかりは、もう気の利いた冗談すら出てこない。

それでも本当にありがたいことに、これまでのご縁でリモートワークのお仕事をいただいたりして、こうして今日も衣食住に困らずに生きている。だからしれっと先延ばしてしまっていたのだけど、そろそろ、腰を据えて今後のことを考えねばなと思い立った。このままじゃまずいよなー、という不安感が脳裏をチラつく頻度が増えてきた今日この頃。そりゃそうだ。逆によくこの数ヶ月もの間、見て見ぬ振りしながら呑気に暮らしてこれたな、と自分のお気楽さに我ながら呆れる。ポジティブすぎるのも考えもの。

とにかく時間だけはたっぷりあるので、就活生のごとく、仕事について、自分について、まぁそれはそれはじっくり考えた。最終的には、日本人の大好物「好きなことを仕事にするのは幸せか否か」的なテーマにまで行きついて、考えすぎて頭がパンクしかけて、その度に不貞寝して。

ようやくたどり着いた持論は、幸せに思うかどうかは人それぞれ。その上で、自分は「好き」を仕事にしたいタイプの人間だよな、ということ。頭がパンクしかけている時に見かけた3つの記事に随分助けられたので、ここで勝手にご紹介します。

誤解を恐れずに言うと、こちらは「好きを仕事にする=幸せ」派の眩しい文章。(大事なことだからもう一度言うけど、幸せに思うかどうかは人それぞれ!そこには善も悪も!ない!)彼女は、水野敬也さん「夢を叶えるゾウ」の言葉も引用しながら丁寧に自分の気付きを整理していて、

本が好きだから書店員になった、コーヒーが好きだからカフェ店員になった。でも、自分が好きなのは「読書すること」「カフェでコーヒーを飲むこと」なのだとすぐさま気付いた。
好きを仕事にする=自分が好きな作業の中で人の役に立てるものは何か、という基準で仕事を選択する

この考え方のおかげで、終わりなき脳内の樹海にも少し希望が差し込んだ。好きな「作業」を仕事にできたら楽しいワークライフを送れるだろうな。うんうん。そしてその作業が、自分の好きなものと接点のある仕事だったらより一層幸せだな。うんうん。

しつこいようだけど、ここで取り違えちゃいけないのは、好きな「もの」を仕事に、というのはまた別の話だということ。それは先ほどの、書店員やカフェ店員になった時の違和感がぶり返すハメになる。混ぜるな危険。

私にとって本当に好きなものの存在とは、とても崇高だ。神棚に祀ってあるような崇高さだ。だから、あまり近付き過ぎたくない、近付き過ぎてはならない、と感じる。神棚に祀ってある崇高なものを引っ張り出して、わざわざ「仕事」という動作にぶち込むのは、なんだか気が咎めてしまう。(中略)どうにもこうにもならない時、最後に救ってくれる存在であってほしい。恐らく「好きなこと」が「嫌いなこと」に変わってしまうのが、ものすごく怖いのだ。

「好き(な作業)を仕事に」というコンパスを手に入れてもなお、私がまだ樹海をすっきり抜け出せない理由はただ1つ。もうこれ以上、仕事のせいで好きなものを嫌いになりたくないのだ。

どうにもこうにもならない時に救ってくれる存在の消失。そりゃもうかなりの深傷で、あれからそれなりの年月を重ねたのに、今だにじくじく痛むから笑えない。だから、「好きを仕事にするのが幸せとは限らない」派の意見もものすごくよく分かる。

最後の記事は、お仕事の話題からは逸れるんだけど、好きなものを失った時の走馬灯が蘇って思わず胸を押さえた。

それなのに、困ったことに私はもう、自分の好きなものに携われる「仕事」の旨味も覚えてしまった。贅沢な悩みだ。好きなものと好きな作業は混ぜるな危険だけど、うまく噛み合った時の爆発力は何物にも変えられない。遠くから崇めるだけなら視界に入らないであろう裏事情まで知ることになっても、それも全部ひっくるめて好き!が勝った経験の方が圧倒的に多いのも事実。職業病だって私にとっては立派な勲章だ。

というわけで、これからも好きな作業の腕を磨いていきたいと襟を正すと同時に、もしも仕事を通じて好きなものに貢献できるご縁がまた巡ってきたならば、その時は勿体ぶらずに全身全霊で恩返しがしたい。

これが私の、「好き」を仕事にすることへの思い。今のところはね。

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