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なぜ心理的安全性はチームの業績向上につながるのか?

心理的安全性とは

心理的安全性とは「組織・チームの中で、対人リスクを恐れずに思っていることを気兼ねなく発言できる、話し合える状態」のことを指します。

心理的安全性の関心が高まったきっかけは、Googleによる調査でした。
Googleのピープルアナリティクスチームは効果的なチームに必要な因子を導き出しました。まずチームにおいて重要なことは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることです。そしてそのために最も重要な因子が「心理的安全性」と分かりました。

心理的安全性の高いチームでは、失敗、ミスについて気兼ねなく話し合うことができます。また、チーム内において、質問や異なる意見を言っても、批判にさらされたり邪魔に扱われない、このチームなら大丈夫だと信じられている状態になります。

心理的安全性にまつわる誤解

私はコンサルタントという職業柄、多くの企業の方と組織やチームについて意見を交わす機会が多いです。中でも「心理的安全性」については関心も高く、すでに多くの会社では1on1ミーティングなど、何らかの取り組みを始めています。

一方で、心理的安全性に対して間違った理解やその結果として間違った取り組みに出会うこともあるのです。

誤解の多くは、心理的安全性に含まれる「安全」や「気兼ねなく発言できる、話し合える状態」の捉え方によるもので、結果としてチームに不具合が起こってしまいます。

まず、仲の良い人間関係や和気あいあいとした雰囲気を過剰に求とめることです。その結果として、意見の衝突を避けるために、衝突が起きるテーマについては議題に上げない、他人が上げてこなくても指摘しないなどの事業が起こります。

また、高い心理的安全性はミスや失敗についても気兼ねなく話し合える状態を生み出します。しかしながら、過剰に意識しすぎることで、チームとしての責任感を持てない状態を生み出してしまっていることもあります。

心理的安全性を個人の意識の問題と誤解していることも散見されます。つまり「気兼ねなく話し合える状態」を作るために、「率直に意見を言ってね」と促しているだけになっているのです。

心理的安全性と責任

心理的安全性を正しく理解する上では、「責任」について触れなければなりません。

気兼ねなく言い合える状態は、ともすると緩い空気、雰囲気が良いだけのチームになりかねません。それは、心理的安全性を高めるためには、高い目標を目指したり規律を守ったりする「責任」は邪魔な存在だと思われるからです。

しかしながら、心理的安全性は責任と対概念ではありません。どちらも人間関係の構成要素であり、「明確に異なる二つの特質である」と『チームが機能するとはどういうことか』に書かれています。

つまり、心理的安全性と責任は同時に高めることが大切です。下図の右上どちらも高い状態にあるチームでは「学習」が起こります。

無題のプレゼンテーション

「学習」にあるチームでは、失敗やミスを誰もが話すことで、時には厳しい意見対立やネガティブなフィードバックが起こるでしょう。しかし、それは自分そしてチームの成長に対する「責任」の高さによっておこるものであり、決して人間関係を壊すため、誰かを貶めるために行われるものではないとチームの誰もが思っている状態だからです。その結果として、チームの学習が蓄積されて高い業績や成長につながります。

一方、心理的安全性が高くても、責任の伴わない左上の「快適」ゾーンはどういった状態でしょうか?先述した通り居心地の良い雰囲気ではあるでしょうが、成長や挑戦、そしてそのための学習が起こりません。

心理的安全性が高いチームのリーダーとは

同時にチームで学習が起こるために理解しておかなくてはいけないことは、心理的安全性がチームメンバー個人の意識ではなく、チーム全体の心理状態であるということです。

メンバーが率直な意見を言うためには、率直な意見を受け入れる場をチームとして生み出すことが欠かせません。そこで、大切になることが場づくりを率先して行うリーダーの心構えです。職場におけるリーダーは否が応でも立場、権力のパワーを持っています。そのため、リーダーが業績や学習への関心が高くなりすぎるがあまり、個人の意思、個性を尊重せずまるで機械のように振舞い、メンバーをコントロールする(メンバーからはそう見える)ことがないようにしなければなりません。

まず、メンバー一人ひとりの意見、考えに興味を持つことから始めましょう。同時、立場、権力を持っているからと言ってリーダーが常に正しいとは限らないことを深く意識してください。つまりはメンバーの多様な意見、考えを認めることです。異なる意見が対話によっても決まらないときは、リーダーが最終決断を下すことになりますが、その過程においてはしっかりメンバーの意見を聞き入れましょう。また、メンバーは決してリーダーの引き立て役、黒子ではありません。メンバーの貢献、活躍を表舞台に出すべく承認、称賛を行いましょう。

そして、リーダーの資質だけに頼らず心理的安全性が高める場を仕組みとして持つことも必要です。チームの多様な意見、フィードバックを活かす振り返りの場として「KPT」はおすすめです。

https://jinjibu.jp/spcl/tabanel-okuda/cl/detl/2818/

また、定期的にメンバー同士が承認、称賛し合える場を持つ「ウィンセッション」も心理的安全性を高め、信頼と学習の土壌を育むことができますので、ぜひお試しください。

心理的安全性をベースにチームを強くする

チームが良い業績、成果を生む前提として、良い業績、成果の定義とその先にある目的がありチーム内で共有されていなければなりません。共有された目的、目標に対して、挑戦し学習が起こるからこそチームは成長します。

個人が挑戦することで、ときには失敗しながら学習し成長します。心理的安全性の高いチームでは、挑戦が促進され、失敗、学習が共有されます。

そして個人の学習がチームの学習になることで、チームは成長します。さらに組織全体の心理的安全性が高いことで、チームの学習は組織内のより広範に展開します。ときには施策や制度となり、文化になり、組織としての学習が高まります。

つまり、心理的安全性は学習する個人、チーム、組織の土台であると言えるでしょう。土台であるがゆえにただそれだけでは学習に繋がるとは限りません。挑戦、学習に向かう挑戦や、目的・目標の共有があってこそ、好業績につながります。