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臨床力をアップさせる!触察とハンドリング〜股関節編〜

【8月22日】
「5:股関節の機能的エクササイズ」
を追記しました。
【3月14日】
「2:股関節機能のチェックポイント」を追記しました。
【3月11日】
「1:股関節の機能解剖」を追記しました。
【2月27日】
セミナー時の動画をアップしました!各項目についての説明も随時更新していきます!
【2月20日】
2019年2月20日、22日、27日に開催する『臨床力をアップさせる!触察とハンドリング〜股関節編〜』の内容をアップしていきます
※本ノートは1000円で販売しております
※職場でのスタッフ教育にも活用できる内容にしていきますので、ご活用ください


こんにちは!

セラピストラボKIZUKIのだいじろう(@idoco_daijiro)です。


本ノートでは、KIZUKIスキルアップセミナー「臨床力をアップさせる!触察とハンドリング」の股関節編についてまとめていきます


股関節は荷重関節のなかで最も自由度の高い関節です。


そのため、荷重時の重心コントロールや動作において、とても重要な役割を担う反面、股関節の機能低下が下肢・体幹の関節への負担を大きくすることになります。


つまり、股関節の評価・アプローチが適切に行えることは、下肢・体幹へのストレスを減らすことに直結するため、非常に重要です。


股関節周囲は多くの筋が存在するため、それぞれを正確に触知し、骨盤帯と大腿骨を適切に動かせるハンドリング技術が求められます。


本セミナーでは、股関節の機能解剖を理解していき、触察とハンドリングの技術を高めていくことを目標とします!


では、実際に股関節について学んでいきましょう。



1:股関節の機能解剖

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まずは股関節の機能解剖についてまとめていきます。


股関節に限ったことではありませんが、評価やアプローチを展開していくためには、機能解剖学や運動学を十分に理解しておくことが重要です。


機能解剖や運動学を十分に理解しておくことで、評価やアプローチの正確性・再現性が高まり、効果的・効率的に展開していけるようになります。


臨床でしっかりとした結果を出すためにも、まずは機能解剖学から学んでいきましょう!



1−1:股関節の解剖

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股関節に関与する解剖をまとめました。


今回は、大腰筋、腸骨筋、縫工筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋、小臀筋、中臀筋、大臀筋、梨状筋を対象として進めていきます。



1−2:大腰筋・腸骨筋の機能

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養成校では『腸腰筋』と一括りにして教えられることもありますが、臨床では『大腰筋』と『腸骨筋』という風にしっかりと分けて考えていくことが大切です。


【大腰筋】
・起始:全腰椎の肋骨突起、第12胸椎〜第4腰椎の椎体と椎間円板
・停止:小転子
・神経支配:腰神経叢
・作用:腰椎の屈曲、腰椎の剛性向上、股関節屈曲
【腸骨筋】
・起始:腸骨窩
・停止:小転子
・神経支配:大腿神経
・作用:寛骨前傾、股関節屈曲


臨床的には大腰筋と腸骨筋は、それぞれインナーマッスル、アウターマッスルとしての役割を持ちます。


股関節屈曲域では、大腰筋はアウターマッスルとして、腸骨筋はインナーマッスルとして働きます。


逆に、股関節伸展域では、大腰筋はインナーマッスルとして、腸骨筋はインナーマッスルとして働きます。


さらに腸腰筋を一括りに捉えていくと、股関節屈曲としては、腸腰筋がインナーマッスルとして、大腿直筋がアウターマッスルとして機能してきます。


臨床でよくみられる大腰筋・腸骨筋の機能不全の要因は大きく4つあります。

◆体幹機能低下の代償
体幹機能の代表的なものとして、「腰部の安定性」があります。体幹機能が低下すると腰部の不安定性が生じます。このとき、大腰筋が腰部の安定性を代償するために働くようになります。
その結果として、大腰筋の股関節屈筋としての機能が低下し、腸骨筋の過剰収縮を引き起こされます。
◆股関節求心位保持機能低下の代償
小・中臀筋、梨状筋など、股関節を求心位に保持する筋群の機能低下が起こると、股関節の不安定性が生じます。それを代償するために大腰筋・腸骨筋は過剰収縮します。
◆股関節伸展機能低下の代償
大臀筋やハムストリングスなどの股関節伸展筋の筋機能低下が生じた際、腸骨筋が過剰収縮し、寛骨を前傾させます。
寛骨前傾によって、大臀筋、ハムストリングスは筋長が長くなるため、筋聴力が高まり、股関節伸展機能を代償することができます。
◆膝関節伸展機能低下の代償
膝関節になんらかの器質的・機能的破綻が存在すると、膝関節伸展機能が低下することがあります。これは内側広筋の萎縮として現れやすく、同時に大腿直筋の過剰収縮が起こります。
股関節屈曲のアウターマッスルである大腿直筋が過剰収縮するため、腸腰筋は働きにくくなります。


解剖を詳しく見ていくと、大腰筋の筋腹を多くの神経が通過したり、大腰筋と腸骨筋の間を大腿神経が通過しています。


このことから、大腰筋や腸骨筋の機能不全が生じることで、股関節屈曲機能の低下はもちろんですが、それ以外にも下肢の神経症状なども引き起こされることも考えられます。


臨床的には非常に重要な機能を果たしていますね。



1−3:小殿筋・中殿筋・梨状筋の機能

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【中殿筋】
・起始:腸骨翼の外面で前殿筋線と後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋膜
・停止:大転子尖端の外側後面
・神経支配:上殿神経(L4〜S1)
・機能:股関節伸展・外転・外旋、(屈曲位)股関節内旋
【小殿筋】
・起始:腸骨翼の外面で前殿筋線と下殿筋線の間、下殿筋線
・停止:大転子の外側前面
・神経支配:上殿神経(L4〜S1)
・機能:股関節屈曲・外転・内旋
【梨状筋】
・起始:仙骨前面の前仙骨孔の間およびその周囲
・停止:大転子の上縁
・神経支配:仙骨神経叢(L5〜S2)
・機能:下部参照


小殿筋・中殿筋は外転筋としての機能があり、とくに立脚期の骨盤の側方動揺を制御するとされています。


もちろんそういった機能もありますが、臨床的には梨状筋とともに股関節を求心位に保持する機能も重要です。


大腰筋や腸骨筋にも同様の機能がありますが、起始・停止が寛骨をまたぐ構造になっていることから、小殿筋・中殿筋・梨状筋の方が重要な役割を担っていると考えます。


この骨頭を求心位に保持する機能が低下してしまうと、骨頭が不安定になります。


その結果、アウターマッスルの過剰収縮が引き起こされ、正常な関節運動が行えなくなると考えます。


股関節を診ていく上では、まずこの機能が働いているかどうかがポイントになりますね!



1−4:大殿筋の機能

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【大殿筋】
・起始:腸骨翼の外面、後殿筋線の後方、仙骨および尾骨の外側縁
    胸腰筋膜、仙結節靭帯
・停止:大腿筋膜の外側部(腸脛靭帯に移行)、大腿骨の殿筋粗面
・神経支配:下殿神経(L4〜S2)
・機能:股関節伸展、股関節外旋、(上部)股関節外転
    (下部)股関節内転


大殿筋は伸展機能に着目されており、運動療法でもブリッジエクササイズ(股関節伸展運動)が取り入れられることが多いです。


しかし、加齢に伴い前方推進力が低下してくると、より股関節伸展機能を働かせるために広背筋を同時収縮させ仙骨を前傾させます。


それにより、大臀筋は筋出力に加え、伸張力も発揮できるようになります。


もちろんこれは代償機能ですので、仙骨後傾位で大臀筋を機能させていくことが大切です。


また、解剖から考えていくと、上部線維と下部線維とで機能が異なることが推測できます。


まず上部線維は、大腿骨頭の上方に位置し、大腿筋膜外側部から腸脛靭帯に移行していくことから、股関節外転筋として作用することが考えられます。


小臀筋・中臀筋の外転機能が低下すると、大腿筋膜張筋や大臀筋上部線維が代償することが考えられます。


それにより腸脛靭帯が緊張し、膝関節へは外反モーメントが生じます。


加えて、腸脛靭帯の緊張に伴う外側広筋の過剰収縮によって、膝関節の動的な内側支持機構である内側広筋の機能が低下しやすくなります。


日常生活レベルであれば、できる限り上部線維が過剰に働かないようにした方が良いので、下部線維や小臀筋・中臀筋をしっかりと強化することが大切です。


下部線維は、大腿骨頭の下方に位置し、大腿骨の臀筋粗面に付着することから、股関節内転・外旋に作用することが考えられます。


前述したとおり、下部線維をしっかりと強化していくことが大切です。


下部線維は上部線維とは異なり、内転作用をもちます。


下部線維を選択的に強化していくためには、ブリッジエクササイズの際にボールなどを挟み、内転させながら行うことが効果的です。



1−5:大腿筋膜張筋・大腿直筋・縫工筋の機能

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【大腿筋膜張筋】
・起始:上前腸骨棘
・停止:脛骨外側顆
・神経支配:上殿神経(L4〜S1)
・機能:寛骨前傾、股関節屈曲、股関節外転、膝関節伸展
【縫工筋】
・起始:上前腸骨棘のすぐ下方
・停止:脛骨粗面の内側(鵞足部)
・神経支配:大腿神経(L2、L3)
・機能:寛骨前傾、股関節屈曲・外転・外旋、膝関節屈曲・内旋
【大腿直筋】
・起始:下前腸骨棘、寛骨臼上縁
・停止:膝蓋骨底(一部は膝蓋靱帯を介して脛骨粗面へ)
・神経支配:大腿神経(L2〜L4)
・機能:寛骨前傾、股関節屈曲、膝関節伸展


大腿筋膜張筋は、屈筋群と外転筋群の中間に位置するような形状をしており、それぞれの機能を代償する役割があると考えられます。


屈筋群では、大腰筋や腸骨筋などの主動作筋の機能低下の代償として、大腿直筋や縫工筋とともに働きます。


外転筋群では、小臀筋や中臀筋などの機能低下の代償として、大臀筋とともに働きます。


後述するFA Adduction Drop Testで大腿筋膜張筋の短縮が認められた場合は、屈筋群や外転筋群の機能低下を代償していることが予測されます。


縫工筋は、寛骨前傾、股関節屈曲・外転・外旋、膝屈曲・下腿内旋の機能がありますが、臨床的には下腿内旋筋(下腿外旋制動筋)としての機能が最も重要となります。


なので、前述した要因によって股関節機能が低下し、縫工筋が寛骨前傾筋や股関節屈曲筋として機能し過ぎることは、望ましいことではないと考えます。


大腿直筋は、寛骨前傾、股関節屈曲、膝関節伸展の機能があります。


臨床的には、どの機能も過剰に働くことはよくないケースが多いです。


寛骨前傾や股関節屈曲については、腸腰筋がインナーマッスルとして機能した上で、大腿直筋が機能することで、股関節が求心位を保持した状態で動くことができます。


膝関節伸展については、大腿直筋が過剰に働くと、膝関節に剪断ストレスが増大するという報告や内側広筋の収縮効率が低下するという報告があります。


臨床においても、大腿直筋が過剰に働いている症例では、膝前面の疼痛を訴えたり、内側広筋の収縮が十分に得られなかったりします。


おそらく大腿直筋は、股関節、膝関節、どちらの機能においても、過剰に働くことなく、適度に機能することが求められる筋ではないかと考えます。


また、国家試験などでは大腿直筋の起始部は“下前腸骨棘”と習いますが、実際には”寛骨臼上溝”に付着する『反転頭』という起始部もあります。


こちらは関節包のインピンジを防いだり、股関節の位置覚や運動覚に関与すると言われています。


大腿直筋の過剰収縮により、この反転頭の機能が低下することも予測されます。



1−6:外旋六筋の機能について

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【梨状筋】
・起始:仙骨前面の前仙骨孔の間およびその周囲
・停止:大転子の上縁
・神経支配:仙骨神経叢(L5〜S2)
・機能:下部参照
【上双子筋】
・起始:坐骨棘
・停止:大腿骨転子窩
・神経支配:仙骨神経叢(L4〜S1)
・機能:下部参照
【下双子筋】
・起始:坐骨結節上部
・停止:大腿骨転子窩
・神経支配:仙骨神経叢(L4〜S1)
・機能:下部参照
【内閉鎖筋】
・起始:寛骨の内面で閉鎖膜とその周囲
・停止:大腿骨転子窩
・神経支配:仙骨神経叢(L5〜S2)
・機能:下部参照
【外閉鎖筋】
・起始:閉鎖孔の内側骨縁の外面と閉鎖膜
・停止:大腿骨転子窩
・神経支配:閉鎖神経(L4〜S1)
・機能:下部参照
【大腿方形筋】
・起始:坐骨結節
・停止:大転子下部、大腿骨転子間稜
・神経支配:坐骨神経(L4〜S1)
・機能:股関節外旋


外旋六筋は梨状筋、上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、外閉鎖筋、大腿方形筋で構成されます。


筋の作用としては股関節外旋と記載されていますが、これは解剖学的肢位での作用であり、実際の作用は複雑です。


股関節は球関節で、その肢位により外旋六筋はそれぞれの作用が多様に変化していきます。


その作用の変化を解剖から予測してみましょう。



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梨状筋は外旋六筋のなかでも最も注目されやすい筋です。


触察が比較的容易である点や坐骨神経が通過する点などがその要因です。


梨状筋は伸展域では教科書通りに外旋筋として作用しますが、屈曲角度が増してくると、内旋に作用するようになります。


梨状筋のストレッチが屈曲+外旋で行われるのはこういう理由ですね。


軽度屈曲域では、外転の作用が強くなるため、Knee-in Toe-outのマルアライメントを改善させる重要な役割を担います。



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上双子筋と内閉鎖筋は梨状筋と同じような作用をもっています。


伸展域では、梨状筋よりも屈曲作用が強く、軽度屈曲域では、梨状筋よりも外旋作用が強くなります。


基本的には梨状筋と同様に屈曲域〜軽度屈曲域でのKnee-in Toe-outを改善させる役割を担っています。


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下双子筋と外閉鎖筋は、他の外旋六筋とはことなる作用をもちます。


外旋筋として作用するのは、屈曲域のみになります。


したがって、深屈曲位でのKnee-in Toe-outの改善には、この下双子筋と外閉鎖筋が重要な役割を担うことになります。



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以上のように、外旋六筋は股関節の肢位(屈曲角度)によって作用が異なります。


とくに臨床上の問題となりやすいKnee-in Toe-outの改善を目的とした場合、伸展域では梨状筋が、軽度屈曲域では上双子筋と内閉鎖筋が、屈曲域では下双子筋と外閉鎖筋が重要な役割を担います。


それぞれの筋にたいする個別の評価やアプローチが確立しているわけではありませんが、股関節の肢位によって筋の作用が変化していくことを理解しておくことは非常に重要です。


解剖の起始・停止からその筋の作用を考えていくようにしましょう!



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これまで股関節の機能解剖についてまとめてきました。


ADLのなかで疼痛や不調を訴える場合、その動作時の関節角度を参考にすることが大切です。


以下のように歩行や段差昇降、立ち上がりといったADL上の代表的な動作でも、股関節の肢位は伸展域〜軽度屈曲域〜屈曲域と変化していきます。

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症例がADL上のどの動作で症状を訴えるのか、その動作時に重要な役割を担っている機能は何なのかを理解することが、評価・アプローチを展開していく上で、非常に重要になります。


これから、股関節の機能解剖を踏まえた上で、股関節にたいする評価・アプローチをどのように展開していくかの一例を紹介していきたいと思います。


今回、紹介するものは私が臨床上に活用しているものなので、トップダウンでの考え方になります。


実際に臨床で活用してみての疑問や気づきがあれば、こちらにお願いします!


>> 『KIZUKI質問箱』



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