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『歩くような速さで』

今年はつい先日まで夏の切れ端のような気温が続いたせいで、急な寒さで叩き起こされた私の身体はまだまだ冬支度には対応できず、案の定癖になっている副鼻腔炎が再発している。

私も今月で32歳になった。もう32年も生きていると11月の誕生日が来てから、年が明けるまでのスピードがどれくらい速いか理解しているつもりだが、毎年想像を上回るスピードで年が明けている気がする。
ネタバレすると、きっと今年はもっと早く終わる。
それこそこれを書いているのは出張帰りの新幹線だが、そのくらい速い。知らん。

本日の帰路は先日リリースされたばかりのandO2『Take the long way home.』を聴きながら、新幹線に乗って地上を高速移動をしている。

そこでちょっと私のyouthの話をしようかと思い立った。

盤に関しては、私のような人間からあれこれ言うのはおこがましい。
一点だけ言及させていただくと、途轍もなくジューシーなサウンドだと感じる。音楽は聴き手によって完成するとするならば、この盤は私にとってジューシーである。きっと思い出とか記憶とか花椒の香りとかのせいで。

andO2の皆様には大変お世話になった。初めて見たのは私が19歳のころ、北大水産学祭の公演だった。あの場にいた全員が、心をぶっ叩かれたと記憶しているが、私もその一人だった。
トイレでギタリストの北崎氏にばったり会ったとき、ドキドキ緊張しながらジャガーについて質問したのを今でも覚えている。
その頃、私は居酒屋でバイトしていたのだが、もっとライヴを観たい、どうせなら対バンできるくらい成長したいと思い、その帰り道にバイト先に辞めたいと連絡した。結局なかなか辞められず、最後のバイトの日がandO2のあうん堂公演だったのが何とも切ない記憶だ。

その後andO2はメンバーの拠点が散り散りで、積極的な活動ではなかったと記憶している。
ただ、在学中にはベースの寺島氏に可愛がってもらった。大学も違うのに、ポップコーンの帰りには必ずと言っていいほど家に押しかけた。唐揚げパーティーをやると小耳に挟んだ私はまたも押しかけ、にんにくを油で揚げて塩振って食べたりしていた。(変な思い出だすな)

私は函館の大学生だったのだが、その後就職して関東に引っ越すことになった。
それからしばらくは、先述した北崎氏と遠藤氏に大変お世話になった。
関東と言っても私は春日部に住んでいたのだが、遠藤氏の三軒茶屋の自宅へ毎週末のように入り浸った。自慢じゃないが春日部から三軒茶屋は乗り換えなしなのだ。1時間30分かかるが。都内住の方には「何処だそれ?」と思われているであろう半蔵門線の南栗橋行に乗ると行ける場所なのだ。

三軒茶屋の三角地帯、日本酒の立ち飲み、もんじゃ、ラーメン、バカほど熱い銭湯、シュラスコ、ちゃんぽん、そして陳麻家。
三茶の家に戻ってはボードゲームを飽きるまでやり、最近のオススメの音楽を教えてもらった。
紛れもなく私の20代前半のyouthはここで形成された。

その頃私もバンド活動をしており、一緒に札幌函館ツアーを回らせてもらったりもした。
思い返すと夢のような時間だ。

その後、よく集まっていたメンツが転勤や、私が今の妻と出会ったりなど、他にも理由は然々で段々と会う頻度が減ってしまった。

なんの合図もなく始まった時間は、なんの合図もなく終わるのだ。

地上時速300km近くで移動する車体の中で、思いもよらないスピードで季節を通り過ぎ、歳を食い潰す生活で、このミニアルバムを聴くと、歩くような速さで過ぎる愛しい日々が思い出されます。

リリース、おめでとうございます。

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