見出し画像

#10 『はじめての自家製パン作り』


小麦粉
イースト発酵…?
自宅で粉からパンを作るなんて、なんだかすごく難しそう

確かにパンは限り無く奥深い料理ですので極めようとするとキリがありません

ですが最低限の基礎さえマスターすれば、後はちょっとした応用ひと手間を加えるだけで、お店の菓子パンや惣菜パンに似たようなものが意外と簡単にどんどん作れてしまうんです。

どうしても基本の道具一式だけは必要になりますが一度そろえてしまえば、それ以降の毎回の原材料費なんて安いものですし、そのまま朝でも昼でも夜でも主食として食べられますので休日の実益を兼ねた趣味としてもパン作りはおすすめです。

何より自家製パンの焼き立ての美味しさは他の何にも代えがたいほど格別です。一度も手作りしたことのない人には是非とも味わって頂きたい最上級の美味しさですよ。

今回は人生ではじめて自家製パンに挑戦する入門者さんを主な対象とし、最初の第一歩から、ごく簡単なアレンジくらいまでの超初歩的な製パン技術についてご紹介します。

なお、この基礎講座を学んだ上で、さらにもっとパンについて詳しく知りたくなったという方はぜひ以下の入門書を次のステップアップの参考にされてください。どれもカラー写真が多く、解説の仕方も丁寧で初心者に分かりやすい内容となっており、僕が自信をもって推薦する良書です。


僕のおすすめするパン入門書 BEST3


もちろん、お金をかけずにネット上の記事や動画を調べるだけでも面白いアレンジ驚きのアイデア、さらに美味しさが増すプラスアルファの工夫などの有益な情報はたくさん見つかり、パン作りにハマる人はきっとどこまでも深くハマっていくはずです。

ようこそ、魅惑の自家製パンの世界へ!


① パン作りの基本道具

パン作りに使う道具はいくらでもありますが、ここでは最低限必要な基本道具に絞ってご紹介していきます。

1. オーブンレンジ
まず、パンを焼くのに必要不可欠なのがオーブンレンジです。厳密にはオーブンの機能だけがあれば良いのですが一般家庭ではオーブンとレンジが兼用になっているものが現実的でしょう。似たようなものにオーブントースターがありますがトースターは細かい温度設定ができませんため、パンを生地から焼くのには適していません。パンを焼く前提で購入するのであれば一気にたくさんのパンが焼けるよう内部が2段式になっているもの、さらに熱風が庫内に効率よく循環し、ムラなくスピーディーに焼き上がるコンベクション機能の付いた商品がおすすめです。


2. ペストリーボード
いわゆる生地のこね台です。手軽に扱えて収納場所も取らないシリコンマットタイプの商品もありますが、やはりパン生地をしっかりこねるためには安定感のあるボードタイプをおすすめします。あまりに大きいサイズだとシンクで洗いづらく、あまりに小さいと不便なので40㎝×40㎝くらいのサイズ感がベストだと思います。僕は少し高価な大理石ボードを持っていますが初心者の方には重くて扱いづらいと思いますので木製のほうが総合的にはベターかと思います。なお、ペストリーボードにはメモリが付いており、パン生地を切り分けるときにガイドとして使えるのも便利です。


3. めん棒
生地を均一に伸ばす作業に使うのがめん棒です。パン作りに照準を絞るのであればガス抜き用の凹凸加工が施されている商品が伸ばすときに同時にガス抜きができて便利です。ただ、パスタや餃子の皮などを作る場合には凹凸のない普通のめん棒のほうがおすすめです。それほど高額なものでもありませんので両方持っておくのが良いでしょう。


4. スケッパー
パン生地を分割したり、流し込んだり、ならしたりするときに使う道具がスケッパーです。カードやドレッジとも呼ばれます。比較的安価でペストリーボードを傷つけず、お子様が触ったり、足元に落としたりしてもケガをする危険性の少ないポリエチレン製の商品がおすすめです。軽いですがしっかりとした硬さがあるため、ボードやボウルにこびりついた生地もこそぎ落とすことができ、地味に後片付けの時にも役立ちます。


5. 電子スケール
美味しいパンを作るための最も基本的な作業として小麦粉やイーストなど材料の正確な計量があげられます。パンを始め、小麦粉を使った生地類は他の一般的な料理に比べて特に配合割合による状態変化が顕著で非常に繊細なのです。0.1g単位まで計測できる電子スケールで神経質なくらい丁寧に計ることが失敗を防ぐための大きなポイントとなります。


6. ベーキングシート
パンを焼く度に毎回、市販のクッキングシートを広げて使っていると思いのほか消費量が多くなって費用もかさんでしまいます。そこでプロアマ問わず多くの方が愛用しているのがシリコンとグラスファイバーで作られたベーキングシートというものです。高熱に耐えられ生地もくっつかず、非常に丈夫で耐久性に優れているため何度でも洗って繰り返し使用でき、パンの他にもクッキーやマカロンなどの焼き菓子やピザなどあらゆる料理に活用できます。素材は柔らかく、使わないときはクルクル丸めて収納しておけますので場所も取りません。ご自宅のオーブンの天板サイズに合わせてハサミでカットして使われている方も多いようです。

他にも温度計、霧吹き、ケーキクーラー、刷毛など、あるとより本格的なパン作りに便利な道具は多々ありますが今回は上記の道具だけで作れる簡単な基本のプチパンからご紹介していきます。


② 基本のプチパンの材料

【基本のプチパン】 ※8個分
強力粉 … 200g
上白糖 … 15g ※グラニュー糖でも可
インスタントドライイースト … 3g
・ ぬるい水 … 130ml
エキストラバージンオリーブオイル … 大さじ1
 … 4g 


③ 生地を配合する

1. 大きめのボウル強力粉上白糖インスタントドライイースト電子スケールで量って入れる(※イーストは糖分を栄養素として発酵するので砂糖の近くに入れます)。


2. 人肌くらいに温めたぬるい水(※温度の目安は約40度。ほのかに温かさを感じるくらい)をイースト砂糖の上から注ぎ加える。

3. などを使って全体を手早く混ぜ合わせて軽くなじませる。

4. ある程度、粉気がなくなったら分量のオリーブオイルも加えて、さらにスケッパースパチュラを使って生地を良く練り合わせていく。

5. 水っぽさがなくなり、ひとかたまりになったらボウルからスケッパーで生地をすくってとり出し、ペストリーボードの上にのせる(※このボウルは後ほど再使用するので内側にこびりついた生地もきれいに取り除いておきます)。

画像10


④ 生地をこねる

1. まずは手のひらの付け根で手前から奥へ押し出すようにして生地をすり広げるように伸ばし、かき集めて、また伸ばすという作業を繰り返す。ペストリーボードにこびりついた生地もスケッパーで寄せ集めて生地に加え混ぜ、何度ものばし続ける(※ボードにあまりにも生地がくっつく場合は分量外の強力粉少々を打ち粉にしてこねます)。

2. すり広げてもペストリーボードに生地がベタ付かなくなってきたら今度は両手で生地を包み込むようにして優しくこねていく(※両手で生地を覆いながらこねることによって生地が温まり、乾燥も防ぐことができます)。

画像11


3. 生地にゴムのような弾力感が出てきたら、中指~小指の3本指で引っ掛けるようにして生地を持ち上げ、ペストリーボードに強く叩きつける。

4. 叩きつけた生地はそのまま手前に引っ張って伸ばして2つに折りたたみ、再度持ち上げて叩きつけるを繰り返します。

5. 何度か叩きつけたら、また両手で生地を包み込むようにして優しくこねていく…といった工程を合計5分~10分ほど丹念に繰り返す。

6. 生地の表面がつるっとなめらかな感じになれば手ごね作業は完了。適度な弾力があり、触るとしっとりしていている状態がベスト。あまり長時間こね過ぎると生地が乾燥してしまうので注意。

7. 両手指で生地の一部をつまんで左右にゆっくりと伸ばしたとき、ちぎれずに向こう側がゴム手袋のように薄く透けて見えるような状態であればOK(※これをグルテンチェックと呼びます)。

画像8


⑤ 一次発酵

1. 生地を両手で持ち、生地の表面をピンと張るようにして前後左右の生地の周囲を下側へ丸め込む。

2. 生地裏側の合わせ目をつまんでとじ、とじ目を下にして最初に使ったボウルにそっと入れ、ぴったりとラップをかける。

3. 約2倍の大きさに膨らむまで、なるべく温かいところに放置しておく(一次発酵)。発酵時間の目安は50~60分。

4. 強力粉をつけた人差し指を生地の真ん中に軽く押し込んでみて、指の跡がそのまま閉じずに残っていれば一次発酵完了のサイン(※これをフィンガーテストと呼びます)。

画像9


⑥ 生地の分割

1. 膨らんだ生地をスケッパーで底からすくって丁寧に取り出し、生地の上に優しくめん棒を転がしてガス抜きする(※強く押さえすぎないこと)。

2. 生地をスケッパーで8等分にカットする(※半分の半分の半分という流れで感覚で8分割してもいいですし、電子スケールで全体の重さを量って正確に重量で8等分しても構いません)。

画像12

生地は手で引きちぎると傷みやすいので必ずスケッパーを使うこと(※スケッパー包丁のように前後に動かしたりせず、上から真っ直ぐに押さえつけて断ち切るようにします)。

3. 分割したひとつひとつの生地を表面がピンと張るようにキレイに丸め直し、生地裏側の合わせ目をつまんでとじる(※できるだけ表面に継ぎ目や凹凸のない、つるんとした大福のような状態にします)。

画像14


⑦ ベンチタイム

1. とじ目を下にして生地同士がくっつかないよう、ある程度の間隔をあけてペストリーボードの上に並べる。

2. 生地が乾燥しないように、かたく絞ったぬれ布巾をかぶせて室温で10分ほど休ませる(※丸めて固くなった生地を再び緩めて伸びよくし、次の成形をしやすくするために休ませる時間をベンチタイムといいます)。 

画像14


⑧ 成形と二次発酵

1. オーブン天板の上にベーキングシートを敷き、先と同じく、ひとつひとつの生地を表面がピンと張るようにキレイに丸め直し、生地裏側の合わせ目をつまんでとじたものを充分に間隔を開けて並べていく。

2. 再び、かたく絞ったぬれ布巾をかぶせて温かいところで30分ほど置いて二次発酵させる。元の2倍くらいの大きさにまで膨らめば二次発酵も完了。

画像15


3. この間にオーブンを190度に予熱しておく。


⑨ 焼成

1. 生地を190度に予熱しておいたオーブンに入れ、10分~13分ほど焼く。

2. オーブンの扉を開けずに外から焼き色を確認し、こんがりと美味しそうなきつね色に焼き上がったら取り出して通気性の良いところで少しだけ休ませて粗熱がとれれば基本のプチパン完成。

画像16


⑩ アレンジ術

[大きさや形状を変えてみよう]
もっとも簡単にできる初歩アレンジはサイズや形状を変えてみることです。

サイズを変えたいときは上記⑥の分割のタイミング。
形状を変えたいときは上記⑧の成形のタイミングで行います。

・ 8等分していた生地を12等分や4等分にしてみる
・ ⑧の成形の工程でレモンのような形状にしてみる
・ 転がして棒状のスティックパンにしてみる
・ 棒状にした生地をやさしく縛ってみる
・ 長い棒状を半分に折りたたんでねじってみる
・ 3本の紐状に延ばして三編みにしてみる
・ 指で数カ所を押さえつけて凸凹にしてみる
・ 2つの団子型を並べてくっつけてみる
・ パン専用のスタンプ型で抜いてみる
・ 平たくしてからロール状に巻いてみる
・ 指や道具を使って押し型をつけてみる
・ 包丁で数カ所に浅い切り込みを入れてみる
・ 市販のパン型にはめて焼いてみる etc...

軽く考えてみただけでも一気にパンの世界が大きく拓けます。

もちろん、サイズや形状を変えるだけでも生地への火の通り方が全く変化するため、かなり焼き上がりの雰囲気や食感が変わってきますので色々と試してみてください。

画像7



[生地の上に具材をのせてみよう]
パンの上に具材をのせるだけで様々なアレンジパンを作ることができます。

具材をのせたいときは上記⑧の成形後のタイミングで行います。

・ 生地の表面に刷毛で卵黄を塗ってみる
・ 生地の表面に刷毛でオリーブ油を塗ってみる
・ 茶こしで強力粉を表面にふりかけてみる
・ 炒りゴマ(白ゴマ or 黒ゴマ)を散らしてみる
・ ローズマリーなどの生ハーブを突き刺してみる
・ マヨネーズであえたコーンやツナをのせてみる
・ ミニトマトスライスとドライオレガノをのせてみる
・ 包丁で表面に切り込みを入れバターをのせてみる
・ ウインナーとケチャップをのせてみる
・ ミートボールやミニハンバーグなどをのせてみる
・ ハムと一緒に渦巻状にしてみる etc...

なんだか、どこかのお店で見たことのある惣菜パンも自分で作れてしまいそうな気がしてきませんか?

画像6



[生地に具材を練り込んでみよう]
上に何かを追加でのせるのではなく、生地そのものに練り込んでしまうことができるのも手作りならではの利点です。

生地に具材を練り込みたいときは上記④の生地をこねる工程の一番最後、一次発酵の直前のタイミングで行います。

・ レーズンやドライフルーツを練り込んでみる
・ くるみなどのナッツ類を砕いて練り込んでみる
・ 刻んだクリームチーズや粉チーズを練り込んでみる
・ 汁気をきったスイートコーンを練り込んでみる
・ 細かく刻んだオリーブ(黒 or 緑)を練り込んでみる
・ 甘く炒めたオニオンスライスを練り込んでみる
・ よもぎやほうれん草など野菜ペーストを練り込んでみる
・ バナナなど果実のペーストを練り込んでみる
・ ココアパウダーやココナッツパウダーを練り込んでみる
・ チョコチップやオレンジピールを練り込んでみる etc...

練り込み系でも様々な色や見た目や風味の違ったパンが作れます。

画像5



[生地に使う素材を変えてみよう]
ここからは応用といいましょうか少しだけ難易度が高まるのですが基本のプチパンレシピに使用している素材そのものを変えてみるパターンです。

配合バランスが崩れる可能性があるため、ベストなバランスに仕上げるには調整が必要になるかもしれません。

でもここまでくれば、それさえも楽しめるはず!

何度も失敗して自分にとってのベストレシピを見つけ出しましょう。

生地に使う素材を変えたいときは上記③の生地を配合するタイミングで行います。

・ 強力粉と薄力粉を混ぜて作ってみる
・ セモリナ粉やふすま入り小麦粉や米粉で作ってみる
・ 上白糖を黒糖やきび砂糖、ハチミツなどに変えてみる
・ ドライイーストを生イーストや天然酵母に変えてみる
・ 水を牛乳や豆乳などに変えてみる
・ 水分の一部をヨーグルトやコーヒーに変えてみる
・ オリーブオイルをバターやごま油に変えてみる
・ 塩や砂糖の量を増やしたり減らしたりしてみる etc...

ありきたりな黒糖パンミルクパンでも自分で作ると思い入れも味わいも違ってくるはずです。

画像4



[その他の応用テクニック]

上記のようなアレンジを単体だけではなく複合させることで、例えば『牛乳と黒糖入りの米粉生地にレーズンを練り込んで卵黄を塗ったねじれ型パン』などといったように、よりこだわりを感じるレベルの高いパンへと進化させていくことが可能となります。

画像2

他にもパン生地を油で揚げてみたり(揚げパン)、ピザのように延ばしてピザ生地として使ってみたり、2色の色違いの生地を作って組み合わせて焼いてみたり、絞り袋を使ってパンの内部にあんこやホイップクリームを詰め込んだりと、その可能性は無限大です。

画像3

別でクッキー生地を作ってパン生地の上にのせ、スケッパーで模様を付けて焼けば、あの難しそうなメロンパンだって作れちゃいます。

画像18

たった一つの基本生地を覚えるだけでこれだけの応用が効くのですから、他にもフランスパンに代表されるようなハード系生地やデニッシュ生地、パイ生地、食パンやクロワッサンなど、さまざまなタイプの生地を作れるようになれば友人や家族からは『もう、パン屋さんやりなよ!』って言われるに違いありません。

画像19

ちなみに食べきれなかったパンは完全にさめてからビニール袋や密閉容器に入れて冷凍すれば2週間くらいは保存可能です。食べるときは小さいパンなら凍ったままの状態から、大きいパンならしばらく自然解凍してからオーブンやトースターで焼くと作りたてに近い美味しさで食べられます。

画像17



いかがでしたでしょうか。

最初は少し工程が面倒で複雑に感じられるかも知れませんが慣れてくれば実質の作業なんてほんのわずかで大半は放置しているだけ。後片付けの洗い物もそれほど多くなく、パン作りって意外と手軽なんだということに気付くはずです。

もし、お持ちのオーブンに『発酵機能』がついていれば発酵も短時間で効率よく行えますよ。

この講座をきっかけに是非、初めての自家製パン作りに挑戦されてみてください。

画像1


⑪ 要点まとめ

・ まずは最低限の基本道具を揃えよう。
・ 自家製パン作りの流れを把握する。
・ ① 生地の材料を配合してこねる。
・ ② 一次発酵し、生地を分割して休ませる。
・ ③ 整形し、二次発酵してから焼成。
・ アレンジでバリエーションを楽しもう。
・ ① 大きさや形状を変えてみる。
・ ② 生地の上に具材をのせてみる。
・ ③ 生地に具材を練り込んでみる。
・ ④ 生地の素材自体を変えてみる。
・ ⑤ 複数のアレンジを組み合わせてみる。
・ 余ったパンは冷凍で2週間ほど保存可能。

※内容にご意見ご質問等ございましたらお気軽にコメントくださいませ。

← 前の講座を見る  次の講座を見る →
← はじめの講座から見る

いただいたサポートは子供食堂の運営活動資金として有効に活用させていただきます。