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僕らのプレゼンにはこれが足りない #スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

“Today Apple is going to reinvent the phone!”
ー 今日 アップルは電話を再発明する!ー

Appleの創業者にして世界を変えた男、スティーブ・ジョブズ。彼の傑出した魅力的なプレゼンテーションは伝説として語り継がれていることでも有名です。

伝説的なプレゼンテーションとして語り継がれるものの中で、特に有名なのは2001年の“iPod”、2007年の“iPhone”、そして2008年の“iPhone3G、MacBook Air”ではないでしょうか。

その度にAppleは世界の常識を変えてきました。もちろん、これがよくある退屈な製品発表会だったなら、これほどまでに世界は熱狂しなかったでしょう。

なぜ彼の言葉はこれほどまでに人を惹きつけるのでしょうか。本書には、全18もの法則が詰まっています。

今回は、その18ある法則の中から特に重要だと思ったポイントを3つ抽出して紹介します。

そして、現代の私たちのビジネスに活かすことができれば幸いです。

スティーブ・ジョブズ伝説のプレゼン

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本題に入る前に少し、ジョブズのプレゼンについて触れておきましょう。今やYouTubeで検索すればジョブズのプレゼン映像が日本語字幕付きで見られるようにもなっているので、そちらで確認してもらってもいいでしょう。

2007年 - iPhone -

 僕はこの日が来るのを2年半も前から楽しみにしていた。ときどき、あらゆるものを変えてしまう革命的な製品が登場する。ひとつでもいいから、そういう製品の仕事ができれば幸せな仕事人生だと言えるだろう。アップルはとても幸せな会社だ。そういう製品をすでにいくつも世に送り出してきたのだから。
 1984年、僕らはマッキントッシュを発売した。これはアップルだけではなく、コンピューター業界全体が大きく変わった。
 2001年、僕らは初代のiPodを発売した。これで音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体が大きく変わった。
 今日は同じくらい革命的な製品を3つ、紹介する。
 まず最初は、タッチコントロール機能を持つワイドスクリーンのiPodだ。
 2番目は、革命的な携帯電話。
 そして3番目。インターネットコミュニケーション用の画期的な機器だ。
 つまり、この3つだ。タッチコントロールによるワイドスクリーンのiPod、革命的な携帯電話、画期的なインターネット機器。
 iPod、電話、インターネットコミュニケーター。iPod、電話…わからないかい?3つに分かれているわけじゃないんだ。実はひとつ。
iPhoneっていうんだ。
 今日、アップルは電話を再発明する!

ジョブズは製品に対して妥協をせず徹底的に理想を追求することで有名ですが、その追求はプレゼンにも及びます。まるで物語を綴るように語られる製品発表会は一体どのように作られているのでしょうか。

空間をも掴み、人を惹きつける力は、間違いなく私たちのようなビジネスマンにとっても身に付けたいスキルです。それを身につけることができれば、きっとプレセンで話すことが楽しくなるでしょう。

では、ジョブズのプレゼン18の法則を3つだけ抽出したのでご覧ください。

1. Twitterのようなヘッドラインを作る

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70文字以内のヘッドラインを作り、繰り返し口にする

アップルの製品にはいつもその製品の特徴を一言で表すヘッドラインがあります。

【アップル製品のヘッドライン】
1000曲を、ポケットに。(初代 iPod)
今日、アップルが電話を再発明する。(初代 iPhone)
世界最薄のノートパソコン(MacBook Air)

ヘッドラインとは、製品がどういうものなのかをわかりやすく表現するもの。ジョブズの作るヘッドラインは英語で140字以内、日本語にすると70文字以内で表現されています。

Twitterに投稿できそうなほど短く明確なヘッドラインは記憶に残りやすいため、プレゼンの中で何度も強調して同じ言葉を使います。また、プレゼンを始めウェブサイトやプレスリリース、その他マーケティングのすべてで全く同じ言葉を使います。

そして、驚くことにこのヘッドラインは製品の企画段階で最新の注意を払って作成されており、一度決定したら絶対に変えないというのです。

ここにアップルの、ジョブズの強い製品へのこだわりと愛を感じます。

製品が完成してからキャッチコピーを考えるというケースが多いと思いますが、アップルの場合は企画が決まった時点で既にそれが決まっているのです。

私たちの立場に置き換えた場合、製品の企画からプレゼンまで一貫して自身で行うという方は少数派でしょう。もしその機会がある方は、企画段階からヘッドラインにこだわって作ってみてください。

既に完成している製品やサービスのプレゼンをする場合は、まず70文字以内のヘッドラインを作るようにしましょう。そのヘッドラインは、必ず「聴衆に最も知っておいてもらいたいことをひとつだけ」にすることが条件です。

製品・サービスの特徴や打ち出したいポイントなど、考えだすとドンドンでてきてついついあれもこれも詰め込みすぎてしまうでしょう。しかし、そこは限りなくシンプルにして徹底的に削ります。

聴衆は、最初はこちらのプレゼンに全く興味を持ちません。製品発表会ならまだしも、会議でのプレゼンの場合、参加者は自分の番が回ってくるのに備えて自分のことばかり考えています。もしかすると、あなたにも経験があるかもしれません。

あれもこれもとややこしい話を詰め込みすぎても話の輪郭・解像度が下がり、全く興味を惹きつける話にはなりません。

ヘッドラインは必ず70文字以内でまとめ、プレゼン内で何度も言葉にする。それが重要です。

2. ロードマップを描く - 3点ルール -

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- 革命的な製品を3つ、紹介する -

ジョブズはプレゼンの本題に入る前、聴衆にロードマップを示します。この先に、どんなアトラクションがあるのかを語るのです。加えて、ジョブズのプレゼンでは「3」という数字がキーとなることが多いです。

プレゼンのシーンを「3つ」に分ける。
製品を「3つの機能」で紹介する。
デモが「3つの部分」で構成されている。
という具合に。

・今日は革命的な製品を3つ、紹介する。
・この業界には、今まで、マイルストンと言えるほどの画期的な製品は2つしかありませんでした。1977年のアップルⅡと1981年のIBM PCです。今日は3番目となる製品をご紹介します。マッキントッシュです。これがめちゃくちゃいいんですよ。

道標となる言葉をしゃべりに混ぜるとそれがロードマップとなり、聴衆はストーリーを追いやすくなります。これがなければいつまで続くのかがわからない話を延々と聴き続けなくてはならないので、聞き手の集中力が切れてしまいます。

・プレゼンにおいて重要なポイントを3つ挙げる
・話のセクションを3分割しておく
・3つの特徴を挙げる

「3」という数字を意識し、ロードマップを事前に冒頭で伝えましょう。

3. 禅の心で伝える - 徹底的にシンプル -

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スティーブ・ジョブズは徹底的にシンプルさにこだわることでも有名です。そのこだわりはちょっと異常なくらいに。

マッキントッシュを広めるときに、最も重視していたポイントは「誰でも使えること」。ビジネスパーソンはもちろん、主婦や子供、郊外に住むお年寄りまでみんなが買えてすぐに使えるパーソナルコンピュータを作る。

だからこそ、価格設定にもこだわっていたほどです。

シンプルへのこだわりは製品だけでなく話し方やプレゼンにも向けられています。

YouTubeでジョブズのプレゼンを見たことがある方はお気づきだと思いますが、ジョブズが用意するスライドには無駄な言葉は一切並んでいません。

スライドに箇条書きは使わない

マックワールド2008の基調講演でのジョブズのプレゼンの冒頭部分に注目してみましょう。

「まず、2007年を軽く振り返ってみたい。2007年は、アップルにとってすごい年だった。はっとする新型iMac、ため息がでるような新型iPod、そして革命的なiPhoneなど、素晴らしい新製品を出せた。そのほか、レパードなどのすごいソフトウェアも2007年にリリースしたんだ。」

前年のアップルの功績を振り返るシーンです。ここでジョブズの背後に映し出されたスライドがこちら。

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(Keynoteで真似て作っているので実際のフォントや大きさとは違いますが、その点はご容赦ください)

この話をするために用意したスライドに記されているのは、「2007」というわずか4文字だけ。ジョブズが用意するスライドはどれもこのようにシンプルでかつキーとなる言葉しか書かれていません。

よくある日本企業のプレゼンだと以下のようになってしまうでしょう。

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これでもかなりシンプルですが、酷い場合にはそれぞれに何万台の出荷があったかまで詳細に書いてしまうでしょう。しかし、それではダメです。

最新の神経科学の研究によると、大事な情報を伝える上で箇条書きは効果が小さいということがわかっています。

先ほども少し触れましたが、聴衆は基本的にこちらの話を聞いていません。人間は人の話を聞くときに脳の前頭前野を使い、必要な情報を選り分けています。

その選別には思考力を使いますが、人間が一日で思考できる総量はあらかじめ決まっています。そのため、人は無意識に思考力をセーブするために限りなく少ない労力で情報が追えるものを探します。

それが、事細かく書かれたスライドです。

これから話すことを細かくスライドに書いてしまうと、聴衆は話し手の言葉ではなくスライドの文字を追うようになります。

学生時代、私も授業中は先生の話を聞くよりも黒板の文字を追って板書する方に集中してしまっていました。

不思議なことに、文字を目で追うだけでは短期記憶に残りにくいのです。メモを取りながら聞くのであればまだマシですが、会社のプレゼンの場合聞き手は自分が話す番のことしか考えていないことが多いので、一切記憶に残りません。

全員がこんなプレゼンをしてしまったら、長い時間をかけて発表したけど結局誰も他の人のプレゼンを聞いていないという不毛な時間を過ごすことになります。

重要なのは、情熱を言葉で伝えること。そのためには、スライドはシンプルにするべきなのです。

簡単な言葉を使う

ジョブズのプレゼンのもう一つの特徴は「簡単な言葉を使う」という点です。

「イノベーティブな製品を発表する」とは言いません。
「革命的な製品を発表する」と言います。

他にも「すごいよね?」「それはとても幸せなことだ」「世界で最も薄いノートパソコンだ」など、直感的で感情的な言葉を好んで使います。

あなたの会社でも、聞き慣れない専門用語や横文字ばかりが並んだ会議をやってはいませんか?その会議が終わった後、内容の理解度は高いでしょうか?目的ややることは明確になっているでしょうか?感情レベルで理解できているでしょうか?

専門用語や横文字を多用すると、なぜか仕事をした気分になります。それはおそらく、脳が言葉を理解しようと思考力を駆使して疲れてしまったからでしょう。

「思考力を使ったのだからしっかりと仕事をした」と感じているだけで、実際には何も身についていない可能性があります。

言葉をシンプルで直感的に表現することで、伝えたいことを確実に相手に届ける。これこそが、プレゼンの最重要ポイントであると私は考えます。

芯を持って思いを伝えよう

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私が本書を読んで、まず真っ先に自分自身で活かせそうだと思ったのが今回ご紹介した3つのポイントです。

・Twitterのようなヘッドラインを作る
・ロードマップを描く
・禅の心で伝える

今までの自分のプレゼンを振り返ってみて、「伝わってないかな?」と感じた大部分の原因はこれができていないからだと感じました。そして、他人のプレゼンを聞いていても同じことを感じます。

一言でまとめると、「話の全体像をイメージさせた上でシンプルな伝え方をする」ということです。

しかし、実はそのシンプルさの裏には膨大な準備物が潜んでいます。

本書では今回ご紹介したもの以外にも素晴らしいプレゼンの法則が多数記されています。その中でも、最もボリュームが厚く語られているのは「ストーリーを作る」段階。つまり事前準備の重要性です。

ジョブズはプレゼンで語るための準備を徹底的に行います。そのノウハウについては、ぜひ本書を読んでいただければと思います。

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