命乞いする蜘蛛

俺の部屋には蚊取り名人がいる。
部屋の隅を縄張りにしている小さい蜘蛛だ。
本当は蜘蛛の巣を除去したいが、蜘蛛のおかげで蚊は一匹もいない。
「その調子で蚊を食べ続けてくれ。さもなければ……」
蜘蛛に殺虫スプレーを見せる。
スプレーを見た蜘蛛は、目を大きく見開きながらウンウンと頷く。
駆除しない代わりに蚊を食べるよう蜘蛛と契約を交わした。
ある日、蜘蛛の巣を見ると、蜘蛛と蚊が楽しそうに話している。
「今日中にその蚊を食べろ。さもなければ……」
蜘蛛に殺虫スプレーを見せる。
蜘蛛は前足を合わせ、ペコペコと頭を下げている。
「駄目だ駄目だ。今日中にだぞ。いいな?」
蜘蛛は肩を落とし、小さく頷いた。
次の日、蜘蛛の巣を見ると、蜘蛛と蚊がいない。
耳元で蚊の飛ぶ音が聞こえた。
振り向くと、蚊の上に蜘蛛が乗っていて、俺にバイバイと前足を振りながら通り過ぎていく。
「てんめぇ!」
殺虫スプレーを持って、蚊と蜘蛛を追いかけた。


たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。


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