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余計なことが知りたい

様々な絵画の「なに?」「なぜ?」という1の質問に対して、10どころか20も30も答えてくださる五郎さんが面白過ぎて公式動画にすっかりハマってしまった。


あまりにもハマりすぎて本も購入。


専門書系が強い、大きめの本屋に寄れるチャンスがあり「あそこならばきっと…」と探して狙い通りに発見!
隣に並んでいたルソー先生の表紙が素敵すぎるこちらも確保。
(こういうのが本屋で買う喜びですよね)


まだ全部に目を通したわけじゃないけれど、『世界一やばい(略)』のほうは動画で流し見していた部分の詳細について、時系列などを整理しながら理解できるのがいい。
特に人物相関図は、複数の動画を見ていて混乱していた印象派まわりの理解が楽になった。(あの辺、特にフクザツだから…)
動画だといちいち止めないと見られない絵もじっくりと見放題だ。

ただ、本はあくまで「絵画の見方」という視点で整理されているので、動画の醍醐味である「20も30も(余計な)ことを教えてくれる」というところや、教訓の部分は大分カットされている。

逆に言うと、シンプルに整理されているので、入門としてはとても敷居が低くなっている…とおもう。
各章ごとに動画へのリンクコードがついているので、気になったものはすぐに見ることができる。
本から入る人にもやさしい仕掛けだし、もう一度見たくなったときにも便利だ。
(こういう、本と動画がリンクしているの今っぽくていいとおもう)


『へんな(略)』は画像が多くて、何度見ても楽しい。
表紙と裏表紙で既に2トップ感あるけど、中身もかなり笑かしてくれる。
特に好きなのは「可愛くない子どもたち」の章。
可愛くはないけど、なんとも言えない、いい表情してるよ…
憂鬱を裸で踊り狂って吹き飛ばそうって発想も素晴らしいとおもう。

自画像を並べてみることもあまりなかったから、こうしてみると色んな「自己像」があって興味深い。
クールベ先輩の「絶望してても格好良い俺」も嫌いじゃないけど、やはりルソー先生が特出していらっしゃる…
(元々嫌いじゃなかったけど、動画とこの本で圧倒的に好きになったのはアンリ・ルソー大先生とセザンヌなんだよな…)



絵画の見方に唯一絶対の正解があるわけではないだろう。
なにも知らない状態でみて自分が素直にどう感じるかというのも、重要な見方のひとつだとはおもう。
「細かいことはいいから作品だけ見てくれよ」という作者も少なくなかろう。

でも、知ったうえでみると、やはり大分印象が変わってくる。
親近感が違うし、見る解像度が格段にアップする。
いつでも生き苦しさを感じていただろうゴッホの鮮やかなひまわり、ルソーとセザンヌの天然っぷりとその自己認識の圧倒的な差、抜群のビジネスセンスを持つクラーナハ(父)の狙い、「俺が、俺が、俺こそが!」というデューラーの職人魂…
俺たちのドガの癖、アングルのこだわり、半グレなカラバッジョ…
そのほとんどが絵画を見るうえでは、たぶん、ひょっとすると「余計な」知識なのかもしれない。

ただ、そうだとしても、作者はどこで生まれ、どう育ち、何を思い、考え、どういう状況でこれを描いたのか…それを知ったうえで改めて画面をみるのは、やはり独特な感慨がある。
画家の名前に詳しくなって、改めていく美術館も楽しくなるに違いない。
どちらの本も、動画も、今まであまり美術に関心の無かった方でも、充分に面白がれる要素がたくさんあるとおもう。

往々にして、知識は、余計なことほど楽しいものなのかもしれない。
(歴史の授業が脱線しがちで、そっちのほうが面白いのはそのせいね)


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