データの一部だけで解釈するのはやめよう

最近のスウェーデンとイスラエルの(相対)死者数を比較して、ワクチン4回目の接種など考えずに放っておけば収束するんじゃないか、という投稿を見ました。今回は、一部のデータを取り出して解釈しようとすると何が起きるかを考えてみましょう。

投稿されていた期間と同じグラフはこちら。

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確かに、この期間の前半は、スウェーデンもイスラエルも同じように死者が減って来たのですが、8月に入ってからイスラエルだけが急増しているように見えます。3回目のワクチン接種が始まった後に急増、というのは正しいかも知れません。しかしこのグラフだけから結論することはできません。

まず基本はもっと長い期間を確認することですね。全期間では以下のようなグラフが得られました。

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スウェーデン:
・死者数は当初から非常に多かった
・ピークの間には死者が非常に少ない期間がある
・ここ数日、死者が急増?(下記グラフ参照)

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イスラエル:
・2021年2月頃の死者は非常に多い
・今はまだ相対的に少ない
・高い水準ではあるが、最近増加に歯止めがかかった可能性がある

簡単には単純な結論が出せそうもないことがわかります。そこでもう少し考えてみましょう。例えば死者数は感染者数に大きく影響しますので、グラフを並べてみました。

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上が感染者数、下が死者数です。縦の補助線(実線)はイスラエルのピーク、点線はイスラエルの最近の急増が始まったと考えられる時期です。イスラエルだけで見ると、2021年2月頃と最近を比べると、感染者数が急増している割には、今の所、死者はそれほど増えていないように見えます。

そこで今度は、致死率のグラフを確認してみましょう。

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これを見ると、イスラエルで最近死者数が増加するも致死率は全く増えていない、むしろ下がっていることがわかります。逆にスウェーデンでは致死率が急増中のようにも見えます。


個人的見解です。
最近のスウェーデンとイスラエルの死者数の推移(つまり切り取った情報)だけから、何もしない方が良い、いやワクチン接種だ、といった議論をするのは無理があると思います。

新型コロナウイルスに関係するデータの解釈では、単純な結果が拡散されている場合が多いと感じます。単純な結果は要注意です。新型コロナウイルスもワクチンも、まだわからないことばかり。そんな中、自分が欲しい情報を切り出して真実だと思ってしまう、という例がとても多いようです。

 単純な結果に注意:簡単に理解できたつもりになっていないか
 認知バイアスの存在を意識:見たい情報だけを切り出していないか

データという客観的だと思われるものであっても、このような注意を怠ると、簡単に騙されたり誤解がおきてしまう。これが新型コロナウイルス関係のデータを見ていて常に感じていることです。