見出し画像

表記統一ノート①リストの見方と基本方針

こんにちは。初めましての方は初めまして。出版界隈の末席のへりに小指一本でぶら下がって細々と読み物を書いている者です。書いたものに付与している目印(=筆名)は「十市 社」です。

私事ですが、来月(24年1月)末をもって商業1作目が世に出てからちょうど10年が経過します。めでたい。一方、奇遇にもほぼ同時期に生活資金が尽きる見込みであり、廃業(あるいは無期限休業)待ったなしの状況でもあります。めでたくない。ふがいなくも22年にも同じような状況があり、その際は出版社からの救いの手によって当面の生存が可能になりました。しかし順当にその効力も風前の灯火、二度めの崖っぷちはどうやら落下不可避の様相です。Livin' On The Edge。

そんなわけで、塵と消えゆく前に何か残しましょう、という気持ちになりました。しかし胸を張って開陳するほどの創作ノウハウを持ちあわせるでもなく、であるなら唯一手元にあるものを見てもらうほかないだろう、という結論に至りました。それが表題にある、10年間こつこつと更新しつづけてきた表記統一リストです。というわけでここからが本題。


表記統一とは?

そもそも表記統一とは何か。ざっくりいうと一冊の本のなかで、可能なかぎり〈意図的ではない表記の揺れ〉がないようにしましょうね、という出版物としての体裁を整える要素の一つです。鉛筆は「鉛筆」なのか「エンピツ」なのか決めておけ、ということですね。
読み手の方はあまり意識することもないのかなと思いますが、読み手に意識されないことが書く側としての理想ともいえます。歩く人がつまずかないように道路をきれいに舗装するのと似た作業といえるかもしれません。

表記統一リストのリンク

うだうだ言ってないでリストへのリンクを貼りましょう。普段からGoogleのスプレッドシートで管理しているので、Googleドライブの共有用リンクになっています。ここに置いたものは公開用にある程度整理したものなので、いわゆる原本ではありませんが、内容は同等です。むしろ表を整えたら見やすくなって共有用からオリジナルに逆輸入したので、現時点での最新版といえます。

こちらのファイルの取り扱いについてですが、共有の仕様に慣れておらず自信がないんですが、ファイル本体の編集はできないようになっています。コピーはできるはず。たぶん。なので、もし有用だと思われたらコピーしてそのまま使用するなり、もちろんお好みで改変を加えるなり自由に運用してもらってかまいません。スプレッドシートではあるものの、関数や計算式は一切入っていないので、丸っとコピぺすれば大きな破綻なくExcel等でも管理はできると思います。

また、ないとは思いますが、一応断っておくと改変後であっても他者への有償譲渡は禁止の方向でお願いします。時間だけはかかっているリストですので、どうしても換金したいならきちんと自分の手で運用ルール作りから始めましょう。売れるかどうかは知りません。

ファイルの概略

さて、画像下部のタブを見てもらうとわかりますが、ファイルには4つのシートが含まれています。

〈リスト〉~〈「行く/いく」運用〉の4つ
  1. リスト:このファイルの本体。それぞれの言葉をどう表記するかが五十音順に並んでいます。現時点で1900語弱。

  2. 複合動詞運用:複合動詞(「分け与える」のように2つの動詞がくっついたもの)をどう運用しているかの一覧表。このリストの一番の特徴でもあり、一番ややこしいところでもあるため詳細は後日別記事で説明します。

  3. 「取る/とる」運用:動詞「取る」は意味合いによって使いわけているため、どのような用法のときに漢字になり、あるいは平仮名になるのかを確認するための表。

  4. 「行く/いく」運用:上記3.の「取る」と同様です。

〈リスト〉タブの見方

〈リスト〉の見方ですが、左端の列が「読み」、中央が「表記」なのは見たまんまです。
表記の欄がまれに「上がる・~あがる」のように2種類書いてある場合があります。これは単体では「上がる」になり、「立ちあがる」のような複合動詞の後ろに配置されたときは「あがる」になるよ、という意味です。

その右欄の「根拠・使用例・類語・備考」は、次に自分が見たときのための覚え書きです。ので、基本なんでもあり。わりと意味不明なところも残ったままですがそのへんはスルーしてください。
ちょくちょく出てくる2aだの2bだのというメモは複合動詞運用に関連するので次回の記事で説明する予定です。

統一の基本方針というか傾向というか

最後に軽く当リストの傾向について触れておきます。表記統一に唯一の正解はないので、どう表記するかは個人の好みによります。結果としてこのリストにも多分に好みが反映されています。

ではどんな好みかというと、なるべく平易にしたい――ページを開いたときの文圧というか面圧というのか文面圧というべきか、とにかくあまりゴリゴリとした硬いものにしたくない、という気持ちが強いです。結果、ひらけるものは開きたい=無駄に漢字を増やしたくない、という方向になっています。このあたりは縦書きの文章が前提であること、さらには自分の書くものが余白少なめであることも影響しています。なので前提が変われば最適解も変わると思います。究極的には、表記統一の目的はすべからく「読みやすさ」に収束すると思われます。

平易にするという意味ではもう一つ、おしゃれ感のためだけに無駄にかっこいい漢字を使わない、という指針も採用しています。涙を意味もなく「泪」にするとか、覚えているを「憶えている」にするとか、滴を「雫」にするとか。「想い出」とか。そういうのができないタチなのでやっていません。

ぱっと思いつくのはこのくらいでしょうか。また思い出したことがあれば次回以降に補足します。

終わりに

文章を書く人にとって、このリストが少しでも参考になればいいなと思います。また読み手の方には、ほーん、こんなこと考えて書いてるんだなー、くらいにご笑覧いただけたなら幸いです。

それでは。


表記統一ノート②に続く


がんばる気持ちが湧いてにっこりします。