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認知症の人の家族介護の状況の変化

一昔前は嫁が介護の担い手だった

2001年ごろ介護の主たる担い手で多かったのは、嫁です。嫁が舅や姑を連れて病院に来ていました。夫・妻が介護をしていることはもちろんありました。実の娘が対応していることもありましたが今よりは少なかったです。

嫁は診察中は一歩下がったところで、伏し目がちにしており、診察が終わっても席を立とうとしませんでした。舅姑が診察室の外に出てから、舅姑が話していた内容と全く異なる説明をするという状況がありました。話が全く異なるため、治療方針をどうするか頭を抱えていました。

息子さんや娘さんが介護をすることもありました。娘さんの場合はほとんどが専業主婦かパートの方が多く、介護にかける時間も多かった気がします。息子さんは退職して年金生活されていました。今のように60歳を超えて働いている人は少なかったように思います。

今の介護の担い手は、パートナーや子供

今や、家族介護者のほとんどがパートナーや子供です。たまに姪、お孫さんというケースもあります。お嫁さんが介護をしているのをほとんど見かけなくなりました。
物忘れ外来に来られる患者さんは、実質70代後半以降の方が多いです。そのため、息子さんや娘さんは50代から60代の方が主流となっています。娘さんが常勤で勤務していることが増えてきており、仕事と介護の両立支援が必要な状況であることが多くなってきました。


出産時期の高年齢化で介護者の低年齢化が進んでいる

最近では徐々に晩婚化、高齢出産になってきていることもあるのか、40代で親の介護に突入する人が増えてきた印象があります。この年代は、団塊ジュニア世代とも重なります。親が地方に住んでいると、平日は共働きで仕事をし、週末にそれぞれの親の介護をしているパターンもあります。ただ、ちょうど高校生・大学生の子供を持つ年代とも重なるため、仕事と介護と子育てのトリプルワークになっている家族も少なくありません。


事例
75歳男性Aさん
73歳の妻と二人暮らし
近県に50歳長男、48歳嫁、18歳と16歳の孫が住んでいる
1年ほど前から、Aさんは物忘れが増えてきた。買い物に行っても買ってこなければいけないものを忘れる、財布を置き忘れる、携帯の使い方がわからなくなるなどの症状が出現。
1年前の正月に長男が帰省した際、母親から相談を受けて、Aさんを物忘れ外来に連れて行こうとした。本人が拒否したため、そのままとなっていた。
半年前の夏、暑い中、買い物に出て道に迷い脱水で入院。その後認知機能低下が著しくなり、尿失禁もするようになった。妻が長男にSOSを出し、毎週土日は長男だけ実家に戻るようになった。
長男は、仕事と介護の両立をしていたが、100㎞離れた実家に毎週通っているうちに、交通事故にあった。幸い命はとりとめたものの、この生活を送るのは困難と考え、実家のある町の地域包括支援センターに相談した。

複数の事例をもとに創作


軽い段階での認知症の人への支援が重要

先日も、書きましたが、軽度認知症の方への支援がこれからはポイントになってくると思います。こういった段階では、介護予防サービスとしての通所サービスなどがすすめられると思います。

ただ、通所サービスを利用したとしても、自宅で起きている困りごとに対する支援はなかなか受けられないのではないかと思います。
そこで必要となってくるのが、個別の障害に対するアドバイスとそれに伴うサービスでしょう。

Aさんの場合ですと、夏に至る前に何らかの支援につながっておくチャンスはありましたが、本人が診断を拒否したことからその支援にもつながらなくなってしまいました。
その際に取れた対処方法を考えてみたいと思います。

1つ目の方法としては、お正月のタイミングで受診ができなかったとしても包括支援センターに相談をしてみるということです。基本チェックリストというものを行い、日常総合支援事業につながる場合もあります。また認知症カフェなどのインフォーマルな集まりなどで相談することができる道も開けます。

2つ目の方法としては、もとのかかりつけ医に相談するということです。かかりつけ医の先生が、その地域に合ったより良い手立てを考えてくれることもあります。必要性があると感じれば、訪問看護などの自宅に行く医療保険の支援を考えてくれる可能性もあります。

私は、ご本人やご家族が、一人で認知症に向き合う時間をできるだけ少なくしていただきたいと考えています🍀。




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