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[人間中心デザイン] 人間中心デザイン入門

はじめに

産業技術大学院大学の履修証明プログラム「人間中心デザイン」 に通い始めました。講義の内容を後からでも思い出せるように、ここでは個人的なまとめや気づきを書いていきます。随時加筆修正予定。

人間中心デザイン入門1〜7(2019/10/4 - 10/11)
講師:安藤昌也先生

HCD/UXD専門家は何を考えるべきか?

人間中心デザインを一言で言うならば、
利用状況/利用文脈 CONTEXT OF USE
をいかに捉えるか?が全て。

ありがちなのは、直接ユーザーの声を聞けばいいんでしょ?となること。でもこれは初心者にありがちなパターン。人の行動は環境によって左右される。利用状況を適切に捉えることが大事。

・D.A.ノーマンの逸話
ノーマンがポップアップ式のパン焼き器を使っていて、ある日パンが焦げて挟まったまま出てこなくなった。
→ 慌ててフォークを使って取り出そうとしてしまった。
(そんなことしたら、内部には電熱線が通っているから感電の危険があるのに!)
画像5→『普段ならこんなことやらないのに、ゾッとした』
人間の行動は、環境に大きな影響を受ける。

UXとは?

・UX(ユーザー体験)とは?
製品やサービスを実際の利用状況(利用文脈)の中で利用する際の、
ユーザーの中に生じるもの。
ユーザー体験(UX)の位置付け2-2

ユーザー体験(体験価値):ユーザーの主観
ユーザービリティ(利用品質):モノの品質

・UXは意外と古い考え方
『作る人と使う人が違うよ』と言う前提で成り立つ、割と古い考え方。
UXはユーザーの側に生じる主観なのに、作った人とユーザーは直接話せない!
ユーザーとデザイナーの関係は二次的理解に基づく。

二次的理解

UXデザインは、この二次的理解を基盤とするデザインの実践。
(designing for users)

一方で最近は、作る人と使う人が同じケース(参加型デザイン)も出て来ている。
(designing with users)


・ISO9241−210:2019におけるUXの定義

ユーザーエクスペリエンス(UX):
システム、製品又はサービスの使用、及び/又は使用を想定したことにより生じるユーザーの知覚と反応

→ ちょっと、特許みたいにわかりにくい文ですね…。個人的には、以下のように分けて書くと、もう少しわかりやすいかも。

ユーザーエクスペリエンス(UX):
・システム、製品又はサービスを使用したことで生じるユーザーの知覚と反応
・システム、製品又はサービスの使用を想定したことで生じるユーザーの知覚と反応

・モノやサービスを使った時に、ユーザー側に生じるもので、
・時間的には、モノやサービスを使ったあとだけでなく、使う前も含みますよ
と言うことですね。

ただ、実際のところ、UXの定義には様々なものがあり、学術的にはUXを直接には定義できないと言うコンセンサスさえあるらしいです。(しかし、UXの位置付けは明確。)


・時間の観点から捉える

UXは時間の観点で捉えるのが大事。UXの期間別の種類 教科書P.55_2

各フェーズは、おばけ屋敷になぞらえて考えるととても分かりやすい!おばけ屋敷2

一言でUXと言っても、人や立場によってどの時間のUXのことを話しているのかが異なるので注意!

例えば、役割によって、次のようになることが多いようです。

予期的UX・・・ マーケティングを行うマーケター
瞬間的UX・・・ エンジニアやUIデザイナー
エピソード的UX ・・・ マネージャ
累積的UX・・・ ブランドマネージャ

本当はこれら全体を一貫して見れる人がいると良いのだろうな…。
せめて、各役割の人たちが(縦割り行政にならずに)お互い上手く連携・協力し合って、良いUXを構築して行けたら理想ですね。


・UXデザインは、(ユーザーの)時間を扱う専門職

UXデザイン・・・ ユーザーの時間を扱う
プロダクトデザイン・・・ 製品機器とか、3Dモデルとかを扱う
グラフィックデザイン・・・ グラフィックを扱う

これまでUXデザインと言うと、何だかフワッとしていて、とらえ所がなくて、何をしているのか分からないと思われがちな気がしていました。もしくはUXデザイン=UIデザインだと勘違いされたり…。
そんなモヤモヤした感情の中、『UXデザインは、ユーザーの時間を扱う専門職である』と言う考え方は自分にとってはとても斬新で、目から鱗で、目の前がパッと明るくなるような印象を受けました。こうした言語化や理解が自分の中で進んで行くと、モヤモヤの霧が少しずつ晴れて行くのかもしれませんね。

UX(ユーザー体験)とUXD(UXデザイン)

インダストリアル・デザインとしてのUXD_3

UXとUXデザインは、ついつい混同して使いがち。どんな体験をしてもらうかを計画し、所望のUXを実現するための仕組みを作るのがUXデザイン。専門家として、しっかり用語を使い分けるようにしたい。

HCDとUXD

こちらも個人的には混同しがちだった。
人間中心設計(HCD)は、UXデザインを実現するための一つのツール。

UXD:User eXperience Design
ユーザー体験のデザイン。正確には、所望のユーザー体験をしてもらえるように、製品やサービスをデザインすること。
HCD:Human Centered Design
人間中心設計、人間中心デザイン。UXDを行うための一つの手法

ユーザーを重視したデザインの歴史


・人と道具のインタフェースの歴史的変化

やはり、コンピュータの登場と普及がおおきなキッカケ。
道具、機械の進化_2

昔は単純な道具(お箸)を直接そのまま使っていたが、産業革命/情報革命以後、人と対象の間に機械や情報処理を挟むようになり(スーパーお箸)、初期の頃は使いにくい製品やサービスが多かった。→使う人間の立場に立って使いやすい製品やシステムを設計する必要性が出てきた。

・『人間中心設計』が成立するまでの概略史

人間中心設計が成立するまでの概略史_2

長い歴史の中で、戦後のPDCAサイクルを初め、様々な潮流を飲み込んで形成されてきたのが人間中心設計プロセス。

1960年代から始まった参加型デザイン
コンピュータが企業に導入され始めた頃、その頃のコンピュータはとても扱いにくく、働く人にとって、環境が悪くなってしまうものだった。→この状況を打破するために北欧のノルウェーを中心に生まれたのが参加型デザインだった。(この活動は労働組合が主導し、労働運動的な側面もあったらしい。)

個人的な気づき(UCDとHCD):
・これまでUCDHCDはほぼ同義と思って使っていたので、HCDの源流にUCDがあったのは面白い発見。(ノーマン:1980s 認知工学・ユーザー中心設計

User Centered Designではなく、Human Centered Designとしているのは、製品やサービスを使うのはエンドユーザーだけでなく、複数の利害関係者に使われると言うことを強調する意味もあるらしい。

ヨーロッパHumanと言いたい。
アメリカUserと言いたい。
と言う傾向もあるらしい。なるほど…。(実際に身近で、アメリカのメンバーはUCD、日本ではHCDと呼ぶ傾向があって、ここ1年くらいずっと謎だったので、ちょっと納得。)
個人的な気づき(デザイン思考とHCD):
・デザイン思考とHCDには類似した点が多々見られると感じていたので、きっとHCD成立の流れの中にデザイン思考も絡んでくるのだろうと想像していたが、HCDの概略史の図にデザイン思考は含まれていなかった。どうやらHCDとデザイン思考は別の流派と言うことらしい。


人間中心デザインとISO9241−210

・ISO9241シリーズ:人間とシステムのインタラクションの人間工学

ISO 9241-11: ユーザビリティの定義とコンセプト
ISO 9241-110:  ソフトウェアのインタラクションに関する一般的な原則
      『対話の原則』(教科書P.102)
ISO 9241-210, 220: 人間中心設計

・人間中心設計の規格

ISO 13407: 1999・・・人間中心設計の国際規格が作られる。
ISO 9241-210: 2010・・・UXの概念が追加される。
ISO 9241-210: 2019・・・アクセシビリティが強調される。

・人間中心設計の定義(教科書P.84)

システムの使用に焦点を当て,人間工学及びユーザビリティの知識と技法とを適用することによって,インタラクティブシステムをより使えるものにすることを目的としたシステムの設計及び開発へのアプローチ

・人間中心設計(9241-210)の6つの原則(教科書P.86)

1. ユーザー,タスク及び環境の明確な理解に基づいて設計する
2. 設計及び開発の全体を通してユーザーが関与する
3. ユーザー中心の評価に基づいて設計を方向付け,改良する
4. プロセスを繰り返す
5. ユーザーエクスペリエンスを考慮して設計する
6. 設計チームに様々な専門分野の技能及び視点をもつ人々がいる

1→Context of Use
2→例えば、ご愛用者アンケートなども含まれる
3→ユーザーの立場で評価すると言うこと。ユーザーテストに限らない。

・ISO9241-210が示す人間中心設計プロセス

人間中心設計プロセス2

・各ステップで行った作業が正しかったかどうかは、次のステップに行くまでわからない。相互依存性のあるプロセスとなっている。
・真ん中のぐるぐるサイクルを繰り返すことで品質を高めていく。

Q: このサイクルは何回繰り返せば良いのか?
A: 基本はゴールの『設計案がユーザーの要求事項を満たす』になるまでだが、そこは判断。現実的には時間も限られているので、Damage Level判定などを行って判断していくことになる。


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参考文献・資料

・産業技術大学院大学履修証明プログラム『人間中心デザイン』, 2019「人間中心デザイン入門'19」講義資料

『UXデザインの教科書』, 丸善出版, 2016
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4621300377/

・UX白書

翻訳 http://site.hcdvalue.org/docs
原文 http://www.allaboutux.org/uxwhitepaper


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