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2009年(くらい)のゴールデン街

梅山さんに何度かお酒に誘っていただいたのに、お金がなくて、でもそうは言えないから適当にごまかして、行くのを断っていた。2009年くらいの話。

たぶん2回断って、3度目の誘いも断って、でもやっぱり行かなきゃ、行くべきだって腹をくくって、クレジットカードで1万円をキャッシングして、ゴールデン街に行った。

すごく怒られた記憶がある。

「編集者なんだから、お酒の席に呼ばれたらぜったい行かなきゃだめ」
「断る意味がわかんない」

そこに同席していたのが、竹内さんだった。

「竹内くんはさ、定職にもつかずに好きなことなんでもやってて。田島くんも見習ったほうがいいよ」

たしか、そんなことを言われた気がする。
それで、当時フリーだった僕は、自分でサイトを作って、竹内さんにインタビューをした。「どうやって食ってるんですか?」「何者になりたいんですか?」って。

ぜんぶ、あの日から始まった気がする。
サイトを見た人が連絡をくれて、仕事を振ってくれるようになり、アライさんとも知り合えて、いま所属してる会社の最初のきっかけもそう。

よくあるインタビューでの常套句、「ターニングポイントは?」。
もし自分だったら、間違いなくあの夜。最初に誘われた日でもなく、2回目でもなく、3回目ではじめて行ったあの夜。

たぶん僕はもう、あのころの梅山さんの年齢になっている。

豪胆で、無頼で、多彩で、心底あこがれてた梅山さんのように、いまの僕はまったくなれていない。
でも、こんな今も最高だよねって笑えてはいる。

こちらはこちらで、僕のやり方でがんばります。
いつか、ちゃんとまたお酒を飲みに行って、あの日のお礼を言わないとな。

ただ、まだちょっと怖いから。まあ、いつか。

おととい、隣の席で知人が梅山さんと電話していて。
昨日、ひさしぶりに竹内さんに原稿をお願いして。
10年前かぁ、と思った今日です。

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