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夏の読書2
攻殻機動隊といえばすでに有名な漫画ですが、この作品のアニメ版の中に「攻殻機動隊 S.A.C(スタンド・アローン・コンプレックス)」というものがあります。その劇中に出てくる本がずっと気になっていたので読んでみました。それは「ライ麦畑でつかまえて」(J.D.サリンジャー)です。
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青二才の青年の行動を通して、世の中の欺瞞(ぎまん)をあぶり出しているようなこの作品は、主人公に感情移入するとその行動に振り回されてしまうけど、人の二面性の裏を知ると、人はなんておろかなんだろうと考えさせられたりします。
そして、この本の中で最も深いこの言葉にはまいってしまいました。
「未成熟な人間の特徴は、理想のために高貴な死を選ぼうとする点にある。これに反して成熟した人間の特徴は、理想のために卑小な生を選ぼうとする点にある」
大口をたたき、態度の大きい人間ほど、自分が人より偉い人間のようにふるまうものです。そんなあわれな人間を何人見たことか…。
「攻殻機動隊 S.A.C」では、この本の引用がたくさん出てきます。とくに「笑い男」(複数話にまたがる話)の中では本そのものが出てきます。
ただ「笑い男」の話では、私としてはそのストーリーの根本になっているものが、1980年代に起きた薬害エイズ事件そのものに思えて、そちらのほうがずっと気になっていました。
あまりにもひどいこの事件は当時とても問題となり、私も本を買って読み、この事件のひどさに怒りを覚えました。
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「笑い男」の主人公の青年の声はまさに、この薬害エイズ事件の被害者の声そのものに思えてなりません。
「攻殻機動隊 S.A.C」の「笑い男」は、まるで過去のことを忘れるな、教訓として覚えておけとばかりに、その内容を「電脳硬化症」という病気に置き換えて、過ちを繰り返す人間に、SF作品として残している大変すばらしい作品です。
現在は「攻殻機動隊 S.A.C The Laughing Man」として再編集され、1作品になっているものがありますが、少しカットされていたりするので、私としては、「攻殻機動隊 S.A.C」(全26話)で鑑賞するほうをおすすめします。
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