新しい法律事務所のあり方を模索する

「もし自分がこれから全く新しい企業向けの法律事務所を作るとしたら、どんな法律事務所を作りたいか」という点について、何回かに分けて、私見たっぷりの仮説をつらつらと綴りたいと思います。キーワードはサブスクリプションです。

前提として、私は、会社や法律事務所を自分で経営した経験がありません。そのため、これから述べることは全て想像に基づく机上の空論であり、ツッコミどころも多いと思います。そのため、「こいつ、わかってないな」と思うことがあれば、ダメ出しを頂ければこの上ない幸せです

一方で、経営の経験がないからこそ、既存の常識や慣習の枠にとらわれず、ゼロベースから全く新しい法律事務所のあり方を模索することができると考えています


そもそもなぜ新しい法律事務所が必要なのか?

法律事務所のクライアントにとってのUX(user experience)は、現状、決して高くないと感じています。元弁護士でHolmesのCEOである笹原さん曰く、

しかし、多くの伝説的なプロダクトやサービスが追求しているような「UX」(=顧客体験)については、法律事務所は、大きく改善の余地があると思っています。
 怒られることを覚悟で言えば、顧客体験の追求について言えば、全産業の中でも下から数えた方が早いのでは?とさえ思います。

自分を振り返って見ても耳が痛いばかりです。


現状の顧問弁護士はなぜいけないのか?

顧問弁護士を雇っている企業は多いですが、一般的に企業側のUXが高いかと言われると大いに疑問が残ります。

一般的な顧問契約は、例えば、「5万円/月で3時間まで稼働、3時間を超えたら2万円/時間でタイムチャージ」といった形が多いです。

月3時間の稼働でできることと言ったら、せいぜい1、2通の契約書のレビューやちょっとした電話相談、簡単なリサーチ程度です。その程度の時間で、クライアントのビジネスや人、文化を理解することは現実的には難しい。

また、顧問弁護士はあくまでクライアントからの質問に受動的に答えることがメインとなるので、クライアントが法的な問題点に気づかなかった結果、顧問弁護士を雇っているにも関わらず、後から問題が表面化することもあります。

その結果、

「自社のビジネスや文化を何もわかってくれていない」
「弁護士に何をどう尋ねたらいいのかわからない」
「弁護士が特に何もしてくれない」

といった不満やミスマッチに繋がっているのではないかと想像しています。

高額ではないし、「いないよりはまし」かもしれませんが、弁護士が本来持ち合わせているポテンシャルを充分に活かせているとは考えにくいです。その結果として、インハウス弁護士が増えるという昨今のトレンドに繋がっているのではないかと推測されます。


なお、顧問契約のメリット・デメリットは、弁護士の水野祐さんのブログにわかりやすく纏められています。


インハウス弁護士を雇えばいいの?

インハウス弁護士は、(顧問弁護士とは異なり)文字通り会社の内部の人間です。そのため、会社のビジネスや人間関係を理解しやすいことはもちろん、ビジネスサイドが見落としがちな法的問題点を能動的に拾いにいけるポジションです。

しかしながら、インハウス弁護士がその会社で活躍できるかどうかは、会社の規模やステージ、既存の法務体制や弁護士自身の経験値に大きく左右されます。

特にスタートアップの場合、フルタイムでインハウス弁護士を雇うほどの仕事がなかったり、そもそも待遇面のミスマッチでそもそも弁護士からの応募がない、というケースも聞くところです。

上記の日経新聞の記事ではインハウス弁護士の数が大きく増えていることが取り上げられています。しかし、これはあくまで上場企業・大企業中心の話であり、中小企業・スタートアップにまでこの潮流が浸透しているかというと、そうとは言えません。それは当然の話で、日本で活動している事業者は360万者であるのに対し、弁護士の数は4万人しかいないのですから。

じゃあどうすればいいの?

ということで、出てくるアイデアがサブスクリプションモデルです。


従来の顧問弁護士も、月額固定とオプション料金を組み合わせたサブスクリプションモデルと呼べるものですが、これを、現在世の中を席巻しており、研究が進んでいるサブスクリプション型SaaSに関する知見や起業の科学といった情報を元に、弁護士の役割、クライアントとの関係性などを一新できないか、というのが今考えていることです。



この辺りを次回以降少しずつ書き連ねて行こうと思います。




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