VO2maxを高めたいんなら、トレイルを走ろうよ!っていう研究結果の話し
自称トレイルランナーが、“走る“をテーマにnoteを書いてます。
今回は“$${\dot{V}O_2max}$$を高めたいんなら…“を書きます。$${\dot{V}O_2max}$$の表記がけっこうアレなので、VO2maxと表記します。さらに、個人的な備忘録の要素も含んでいます。悪しからず。
いまさらながらRSSという機能を使って、研究論文を漁ってるんですよね〜って記事に書いたところだ。
さっそく網に引っ掛かった研究論文がこれだ。
Effects of Trail Running versus Road Running—Effects on Neuromuscular and Endurance Performance—A Two Arm Randomized Controlled Study
トレイルランナー的な視点で深掘る
…というか、都合の良さそうなところをかい摘んでみる。
このTable7をよーく見るとわかること。
8週間、計29回のワークアウトでVO2maxは、どう変化したのかを表している。
VO2maxの変化
TRAIL 28.4 → 35.8 mL/kg/min
ROAD 35.3 → 40.5 mL/kg/min
ということだ。
ここでアレっ???
トレーニング前(Pre-test)のVO2max低くないカイ???
chatGPTの解説では『健康な中程度のフィットネスレベル』と言っているのだが…論文を自分の目で確かめると、
「currently sedentary or not exercising more than twice a week for the last three months」
と書いてあった。
現在、過去3ヶ月間、座りがちであるか、週に2回以上運動していない
なるほど納得できた。
さて、TRAILもROADもワークアウトを続けると、どっちもVO2maxは向上することがわかったところだが
どっちがより向上するんだ!
気になるところだ。
もう一度Table7に登場してもらおう。
Cohen’s dに注目。
違いがどのくらいあったんだ‼︎を示す値として捉えて良いだろう。
TRAILの0.95に、ROADの0.53と示されても⁇?である。
我々にはモノサシが必要だ。
Cohen’s dのモノサシ
d < 0.2 = trivial effect(ごく僅かな違い)
d ≥ 0.2 = small effect(ちょっぴりな違い)
d ≥ 0.5 = moderate effect(まあまあな違い)
d ≥ 0.8 = large effect(大きな違い)
ということで、ワークアウト前後のVO2maxの違いは
TRAIL→大きな違い
ROAD→まあまあな違い
であるとこの研究では言っている。
ただし
Table7には「rANOVA」というワードがあることを無視できない。
この研究は8週間、計29回のワークアウトを追っかけた研究デザインだ。
Pre-testとPost-testだけじゃない
つまり、使用前と使用後だけを比べているのではなく、その間の経過を検証するのがrANOVAだ。本名はrepeated-measures ANOVA 。日本名は反復測定分散分析。
「time」は8週間という時間の流れをイメージする。
「group×time」は時間の流れとともにTRAILのgroup、ROADのgroupが異なる傾向示すかどうかとイメージする。
「p=○○」に注目。いわゆるp値。この論文には「Statistical significance level was set at p < 0.05.」と書いてあった。データ分析したときにP値が0.05以下だったら「8週間、計29回のワークアウトを続けたら変化の傾向に差があることにします‼︎」の宣言が「Statistical significance level was set at p < 0.05.」。
「time」のp=0.14の解釈は、宣言に従って「8週間、計29回のワークアウトを続けたけど変化の傾向に差があるって言えないよね」となる。そして、差がない確率が14%で差がある確率が86%というふうに深読みできる。「group×time」のp=0.13も然り。TRAILであっても、ROADであっても変化の傾向に差があるって言えないよねって。
「ηp2」に注目。読みは「偏イータ2乗」。本来は$${{η_p^2}}$$のように表記するが、例によってηp2と表記する。
このηp2というのは、統計業界では効果量(effect size)というジャンルに属する。この業界に馴染みのない方はとっつきにくいと思っているし僕もとっつきにくい方の人種だ。そうそう、Cohen’s dもチーム効果量のメンバーだった。
p値を深読みするためのパラメーターと理解しておく。p値は曲者で本当は差があるのに計算すると0.05よりでっかい値になったり、本当は差がないのに計算すると0.05よりちっちゃくなったり研究する本人も論文を読む人も騙されてしまうことがある。そこで、効果量というパラメーターがp値の「真の姿」を教えてくれる。
効果量にもその種類ごとにモノサシが用意されているのだが、残念なことにこの研究論文に登場するηp2にはモノサシが存在しない。
この研究者の解釈は…
う〜ん。ηp2に触れてなかった。
この回答を信じるのであれば、
p値的には差があると言えないけれど、ηp2的には『実質的に効果があるんじゃねっ』と結論できる。だって、「差がないないって言ったって差がある確率は86%もあるんだよ。」という解釈をしたくなる。
ということで、
8週間、計29回のワークアウトでどう変化したのかは上手いこと証明できないけど、結果論としてVO2maxは向上しましたよ。しかも、TRAILを走った方がより向上しますよ…というのが、この研究者のメッセージだと思っている。
この研究はVO2maxに限ったことではなくて、静的バランス、動的バランスなどなどTRALとROADを比較している。
今回は僕がVO2maxにココロ惹かれたので、Table7を深掘ってみた。
どんな研究にも限界というものがあってこの研究の場合は、8週間、計29回のワークアウトの運動強度を研究者はコントロールしきれていない。「現在、過去3ヶ月間、座りがちであるか、週に2回以上運動していない」研究対象者に任せられていたことが挙げられている。
全てのランナーに当てはまるものではないかもしれないが、この研究結果から学べることは、VO2maxを向上させたいならワークアウト続けようぜ‼︎ということだな。
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