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VO2maxを高めたいんなら、トレイルを走ろうよ!っていう研究結果の話し

自称トレイルランナーが、“走る“をテーマにnoteを書いてます。
今回は“$${\dot{V}O_2max}$$を高めたいんなら…“を書きます。$${\dot{V}O_2max}$$の表記がけっこうアレなので、VO2maxと表記します。さらに、個人的な備忘録の要素も含んでいます。悪しからず。

・ トレイルランニングとロードランニングの8週間のワークアウトで、VO2maxは両方とも向上。
・ ワークアウト前には運動していないグループだったが、差があるかどうかは測定値よりもp値や効果量に注目を。
・ TRAILの方がROADよりもVO2max向上に適しているという結論はあるが、他の比較についても研究有り。
AIアシスタント(β)が今回の記事を3行にまとめてくれました

いまさらながらRSSという機能を使って、研究論文を漁ってるんですよね〜って記事に書いたところだ。

さっそく網に引っ掛かった研究論文がこれだ。
Effects of Trail Running versus Road Running—Effects on Neuromuscular and Endurance Performance—A Two Arm Randomized Controlled Study

この研究は、トレイルランニングとロードランニングの比較を行い、神経筋および持久力パフォーマンスに及ぼす影響を調査しました。

研究は、健康な中程度のフィットネスレベルを持つ男性18人を対象に、2つのグループに無作為に割り付けて行われました。一方のグループはトレイルランニングを行い、もう一方のグループはロードランニングを行いました。研究は、8週間にわたり週3回、同じ距離と時間で行われました。

研究結果によると、トレイルランニンググループは、ロードランニンググループに比べて筋力と筋肉の発達が大幅に高まりました。また、トレイルランニンググループは、VO2max(最大酸素摂取量)および持久力の向上にもより効果的であったことが示されました。

この研究の重要な発見は、トレイルランニングが筋力と筋肉発達により効果的であるということです。また、トレイルランニングは、持久力を高めるためにも有効であることが示されました。これは、ランニングにおいてトレイルランニングが新たなトレーニング手段として注目される理由の1つとなっています。
chatGPTに要点と研究の肝を教えてもらった

トレイルランナー的な視点で深掘る

…というか、都合の良さそうなところをかい摘んでみる。

出典:Effects of Trail Running versus Road Running—Effects on Neuromuscular and Endurance Performance—A Two Arm Randomized Controlled Study

このTable7をよーく見るとわかること。
8週間、計29回のワークアウトでVO2maxは、どう変化したのかを表している。
VO2maxの変化
TRAIL 28.4 → 35.8 mL/kg/min
ROAD 35.3 → 40.5 mL/kg/min
ということだ。
ここでアレっ???
トレーニング前(Pre-test)のVO2max低くないカイ???

chatGPTの解説では『健康な中程度のフィットネスレベル』と言っているのだが…論文を自分の目で確かめると、
「currently sedentary or not exercising more than twice a week for the last three months」
と書いてあった。
現在、過去3ヶ月間、座りがちであるか、週に2回以上運動していない
なるほど納得できた。

さて、TRAILもROADもワークアウトを続けると、どっちもVO2maxは向上することがわかったところだが

どっちがより向上するんだ!

気になるところだ。
もう一度Table7に登場してもらおう。

出典:Effects of Trail Running versus Road Running—Effects on Neuromuscular and Endurance Performance—A Two Arm Randomized Controlled Study

Cohen’s dに注目。
違いがどのくらいあったんだ‼︎を示す値として捉えて良いだろう。
TRAILの0.95に、ROADの0.53と示されても⁇?である。
我々にはモノサシが必要だ。

Cohen’s dのモノサシ
d < 0.2 = trivial effect(ごく僅かな違い)
d ≥ 0.2 = small effect(ちょっぴりな違い)
d ≥ 0.5 = moderate effect(まあまあな違い)
d ≥ 0.8 = large effect(大きな違い)

ということで、ワークアウト前後のVO2maxの違いは
TRAIL→大きな違い
ROAD→まあまあな違い
であるとこの研究では言っている。

ただし

Table7には「rANOVA」というワードがあることを無視できない。
この研究は8週間、計29回のワークアウトを追っかけた研究デザインだ。
Pre-testとPost-testだけじゃない
つまり、使用前と使用後だけを比べているのではなく、その間の経過を検証するのがrANOVAだ。本名はrepeated-measures ANOVA 。日本名は反復測定分散分析。

「time」は8週間という時間の流れをイメージする。
「group×time」は時間の流れとともにTRAILのgroup、ROADのgroupが異なる傾向示すかどうかとイメージする。

「p=○○」に注目。いわゆるp値。この論文には「Statistical significance level was set at p < 0.05.」と書いてあった。データ分析したときにP値が0.05以下だったら「8週間、計29回のワークアウトを続けたら変化の傾向に差があることにします‼︎」の宣言が「Statistical significance level was set at p < 0.05.」。
「time」のp=0.14の解釈は、宣言に従って「8週間、計29回のワークアウトを続けたけど変化の傾向に差があるって言えないよね」となる。そして、差がない確率が14%で差がある確率が86%というふうに深読みできる。「group×time」のp=0.13も然り。TRAILであっても、ROADであっても変化の傾向に差があるって言えないよねって。

「ηp2」に注目。読みは「偏イータ2乗」。本来は$${{η_p^2}}$$のように表記するが、例によってηp2と表記する。
このηp2というのは、統計業界では効果量(effect size)というジャンルに属する。この業界に馴染みのない方はとっつきにくいと思っているし僕もとっつきにくい方の人種だ。そうそう、Cohen’s dもチーム効果量のメンバーだった。
p値を深読みするためのパラメーターと理解しておく。p値は曲者で本当は差があるのに計算すると0.05よりでっかい値になったり、本当は差がないのに計算すると0.05よりちっちゃくなったり研究する本人も論文を読む人も騙されてしまうことがある。そこで、効果量というパラメーターがp値の「真の姿」を教えてくれる。
効果量にもその種類ごとにモノサシが用意されているのだが、残念なことにこの研究論文に登場するηp2にはモノサシが存在しない。
この研究者の解釈は…

The results of the aerobic endurance testing (VO2max pred) show the greatest probability for a substantial beneficial effect between pre- and post-testing with 97% in favor of TRAIL. These findings are supported by the calculated Cohen’s d effect sizes (d = 0.95 in TRAIL; d = 0.53 in ROAD). Time-effect (p = 0.14) and between-group differences (p = 0.13) did not reach statistical significance. Results for VO2max pred are depicted in Table 7.

有酸素持久力テスト(VO2max pred)の結果は、テスト前とテスト後の間に実質的な有益な効果をもたらす可能性が最も高いことが示されており、97%がTRAILを支持しています。これらの調査結果は、計算されたコーエンのd効果サイズ(TRAILではd = 0.95、ROADではd = 0.53)によってサポートされています。時間効果(p = 0.14)とグループ間の差(p = 0.13)は統計的有意性に達しなかった。VO2max predの結果を表7に示します。
出典:Effects of Trail Running versus Road Running—Effects on Neuromuscular and Endurance Performance—A Two Arm Randomized Controlled Study

う〜ん。ηp2に触れてなかった。

η2とηp2はどちらも効果量の指標ですが、計算方法に違いがあります。そのため、目安にも差異があります。

η2の場合、一般的に以下のような目安があります。

小さい効果量:η2 = 0.01
中程度の効果量:η2 = 0.06
大きい効果量:η2 = 0.14
一方、ηp2の場合は、以下のような目安が一般的です。

小さい効果量:ηp2 = 0.01
中程度の効果量:ηp2 = 0.06
大きい効果量:ηp2 = 0.14
つまり、効果量の目安においては、η2とηp2で大きな違いはありません。ただし、研究分野や文脈によって、どちらかがより適切な指標である場合があります。
chatGPTに聞いてみた

この回答を信じるのであれば、
p値的には差があると言えないけれど、ηp2的には『実質的に効果があるんじゃねっ』と結論できる。だって、「差がないないって言ったって差がある確率は86%もあるんだよ。」という解釈をしたくなる。

ということで、

8週間、計29回のワークアウトでどう変化したのかは上手いこと証明できないけど、結果論としてVO2maxは向上しましたよ。しかも、TRAILを走った方がより向上しますよ…というのが、この研究者のメッセージだと思っている。
この研究はVO2maxに限ったことではなくて、静的バランス、動的バランスなどなどTRALとROADを比較している。
今回は僕がVO2maxにココロ惹かれたので、Table7を深掘ってみた。

どんな研究にも限界というものがあってこの研究の場合は、8週間、計29回のワークアウトの運動強度を研究者はコントロールしきれていない。「現在、過去3ヶ月間、座りがちであるか、週に2回以上運動していない」研究対象者に任せられていたことが挙げられている。

全てのランナーに当てはまるものではないかもしれないが、この研究結果から学べることは、VO2maxを向上させたいならワークアウト続けようぜ‼︎ということだな。

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