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かっこよすぎる英語歌詞!YOASOBI『夜に駆ける』by Anonymouzを【徹底解剖】

<追記>この記事は2021/07/02に発表されたYOASOBIの『Into The Night』の記事ではありません。が、そちらも面白すぎるので解剖予定です!!

<追記>第2弾Pretenderはこちら!




2020年の暮れのこと。

YouTubeを開いた。

この頃はTHE FIRST TAKE、YOASOBIの夜に駆けるにハマっていた。

この日も、夜に駆けるを再生。あぁ、良い声だなぁ、癒されるなぁと思って鑑賞。関連動画に目をやると。

【英語ver.】YOASOBI『夜に駆ける』by Anonymouz

英語Ver……なにそれ聞きたい!!

英語歌詞が超好きなのですぐに飛びついた。正直、本家が素晴らしすぎる曲なのであんまり期待はしていなかった。


聞いてみた感想。「うわ、これやばい」。麻薬依存になった中毒者みたいに繰り返し聞きまくる。
聞く→依存度が上がる→聞きたくなる→聞く……の繰り返し。たぶん、このときだけで時間を忘れて30回は聞いた。

なにこのオシャな曲。たまらん過ぎ。BGMで流しながら告白したら絶対成功しそうw

熱しやすく冷めやすいタイプの私が、数日経っても熱狂の嵐。


次の休日にまた聞く。「うわ、これやばい」。そして、Anonymouz(アノニムーズ)のほかの曲も聞いてみる。「うわ、これやばい」。聞く→依存度が上がる→聞きたくなる→聞く……の繰り返し。もうほんと虜になってしまった。

勢いあまってライブのチケットも応募してしまった。そして当選してしまった。生で聴いたらどうなるんだろう。武者震い、そして鳥肌の準備万端。


で、なぜこんなに惹きつけられたのか考えてみた。バンドやユニットを組んでいた身としては「あぁ、すごいなぁ」だけで終わらずに、研究するのもたまにはやってみよう、と超上から目線で考えてみたw

でも、自分が好きになった理由をツラツラと書き殴るくらいはできそうだなと。


第一部 Anonymouz(アノニムーズ)の英語歌詞を徹底解剖

惚れ惚れしたのはズバリ、その歌詞。英語の歌詞が素晴らしいことはもちろん、原曲の旋律を崩さない言葉の選び方と並べ方、そしてリズムの良さ。中毒になってしまう、ほんとに。

YOASOBIの原文とAnonymouz(アノニムーズ)の英文を少しずつ比較しながら、その世界観をじっくりと味わいたいと思った。普段、そんなに意識しない歌詞だからこそ、果てしない魅力がじっくり詰まってる気がして。Anonymouz(アノニムーズ)は英語の発音も素晴らしいので、ちょいちょいその辺にも触れていきたいです。


ここからは超変態の領域。マニアックすぎると思うので、ほとんどの方は読み飛ばしちゃってください。

まずは冒頭。最初のブレス(息を吸う音)が素敵すぎる。ほんと、素晴らしい。美しすぎる。ブレスフェチになっちゃうくらいに。

00:00

沈むように溶けてゆくように/
二人だけの空が広がる夜に

as if sinking down through the night
like we are melting in air/
like a sky made for you and
I is spreading out high above

のっけから素晴らしい。「○○のように」を「as if:~かのように」+「sinking」と「melting」の現在進行形で表現。ホントに、今、沈むように溶けていくように、が完ぺきに表現されている、ほんと。あぁ……溶けてく溶けてくって感じ。聞いてる方も溶けそう。

曲をよく聞くと「sinking」と「melting」がそれぞれ「シンキン」と「メルティン」になってますね。Gの欠落。英語の世界ではよくある現象。

例えば、マクドナルドの「パラッパッパッパ~、アイムラビニット」。あれもI'm loving it. のGが欠落してlovin it、それが引っ付いてlovinit、そして結果、ラビニット。Gはよく消えてどっかいっちゃいますね。あと、DTもよくいなくなります。なのでthrough the nightはドゥルーザナイ。

Anonymouz(アノニムーズ)は発音も素晴らしいので英語の勉強にももってこい。その辺の教科書よりもよっぽど楽しい。この発音を真似して歌ってたら、あっという間にネイティブレベルの発音になりそう。

sinking downがシンキンダウン、melting in airがメルティンネアになってます。エアのR音(巻き舌)もしっかり出てる。かっこいい!

そして、and I is spreading out highの高音が美しすぎる。これ、ファルセット(裏声)ですか? 地声ですか? いやほんとここで耳がフワ~ってなります。素敵すぎる。溶けそう。そしてaboveの最後のV音(下唇を噛む)音も出てる。素敵。

00:20

「さよなら」だけだった/
その一言で全てが分かった/
日が沈み出した空と君の姿/
フェンス越しに重なっていた/

I only needed a “good bye”/
with only seeing that
I understood everything right/
the setting sun,
the sky inhaling nightfall
and you in side my eyes/
through the fence they would
melt in each other

は~。neededの低音かっこいい。声の芯(声量)を落として低くかっこよく。そしてここでもTDGがもれなく欠落。ほんと、いなくなりすぎでしょ。もはや欠落三兄弟に任命。TDG。TDL(東京ディズニーランド)みたい。

そしてingの進み具合も絶好調。setting sun:サンセット(夕日)がing、で絶賛沈みかけ。しかも、inhaling nightfall:夕日を吸っている(直訳)→日が沈みだした(意訳)、って表現がかっこよすぎる。溜息。ここでも、もれなくGの欠落。

そしてthey would melt in each otherも秀逸すぎ。「フェンス越しに重なっていた」っていう日本語が「空」と「君」が「お互いに溶け合う」に早変わり。セクシーすぎ。聞いてる私が溶けそう。というか、夜に駆けるってこんなに溶けそうが連発される曲だったんですね。

otherの「thサウンド」もアザーじゃなくてアダーと、英語らしさがしっかり出ています。ピアノのタータラタラタタッタもくぅ~ってなります。このピアノフレーズのヘビロテだけで一杯やれる。

そしてもうありえないのが韻。原曲は、語尾が全部「た」で終わっています。た×た×た×た。これも耳障りMAXだけれども、英訳も遜色なく超素敵。

「さよなら」だけだっ/
その一言で全てが分かっ/
日が沈み出した空と君の姿(すが)/
フェンス越しに重なってい/

I only needed a “good bye”/
with only seeing that I understood everything right/
the setting sun, the sky inhaling nightfall and you in side my eyes/
through the fence they would melt in each other/

バイ、ライ、アイ、でイ×イ×イ。おそらく、YOASOBIがた×た×た×たの4連コンボを決めてきたのでAnonymouz(アノニムーズ)もバイ、ライ、アイ、のイ×イ×イ3連コンボでお返ししてます。激しい芸術性の攻防。コンボの数だけ点数加算ってルールにすると、3-4でわずかにYOASOBIが一歩リードって感じでしょうか。こんな風に遊んだら怒られそうだけど。

00:38

初めて会った日から/
僕の心の全てを奪った/
どこか儚い空気を纏う君は/
寂しい目をしてたんだ/

on that day you came into my life/
you stole away everything, every piece out of my heart/
there’s something in the air around you fleeting
like you’re about to fade/
in your eyes I could feel all the sorrow/

ここで心を打たれたのは「どこか儚い空気を纏う君は」の英訳。there’s something in the air around you fleeting like you’re about to fade(直訳:アナタが消えてしまいそうなくらいアナタの周りの空気はどこか儚い)と訳されている。どんだけ儚いのって感じですね。というか、どこか儚いって日本語も美しいですねぇ。どこかってほんとに儚い感じが出てます。良い歌詞だ!

この節でもYOASOBIの芸術性が浮き彫りになりました。コンボは決めてないけど、YOASOBIに点数加算しよう。3-5。ここまで終わって3-5でYOASOBIの優勢。本当に怒られそうだけどこういう遊びをしながら勝手にグフフって笑ってます。ごめんなさい。


00:56

ここから度肝を抜かれてしまう。

いつだって/チックタックと
鳴る世界で/何度だってさ/
触れる心無い言葉うるさい声に
涙が零れそうでも/
ありきたりな喜び/
きっと二人なら見つけられる

all the time it’s
tick and tocking on
inside this world
we’re always in a loop
all of the cold hearted words
that I get and loud voices
(I) hear when (they) well up,
and I’m about to cry
I know if we can be together we’ll find
some happiness inside
an ordinary life

まず日本語歌詞「チックタックと」の語呂の良さ。思わず口ずさんでしまう。迷わずYOASOBIに点数加算だ! と思ったのもつかの間、でも、それ以上にAnonymouz(アノニムーズ)の英語歌詞が見事すぎて。YOASOBIの加算ゼロ。

「チック」に英語歌詞「tick and」が「ティッケン」でハマり、「タック」に「tocking」が「トッキン」でハマる。そして「と」に「on」がドンピシャでハマる。聞いていて超気持ちいい。ティッケトッケノン♪ 耳障りが良いのはやっぱり下の①②③が韻を踏んでいるからだと思います。

①tick and ②tocking ③on

①はDが欠落して最後がNで終わり、②もGが欠落して最後がNで終わる。③も最後がNなので、N×N×Nで韻を踏みまくりの3連コンボ。日本語の「チックタックっと」と跳ねるリズム感が遜色なく表現されている。たまらんばい。欠落三兄弟のTDGがここでまさかの無双。Anonymouz(アノニムーズ)に3点加算で6-5。一気に逆転。面白くなってきた。

いやしかし、ここの日本語歌詞はとても速いのによく英語歌詞で表現させたなと感嘆です。ただでさえ日本語は主語を省略できる言語なので語数が減りますが、英語は主語が必要な言語なので語数が増えます。そんなハンディを背負った中で英訳をしてこのメロディにはめ込む技術力。

現に、日本語と英語の主語(ここでは代名詞)の数を数えてみたら一目瞭然です。

いつだって/チックタックと
鳴る世界で/何度だってさ/
触れる心無い言葉うるさい声に
涙が零れそうでも/
ありきたりな喜び/
きっと二人なら見つけられる

この歌詞の中で主語は「二人」の1つだけ。対して英語は、

all the time it’s
tick and tocking on
inside this world
we’re always in a loop
all of the cold hearted words
that I get and loud voices
I hear when they well up,
and I’m about to cry
I know if we can be together we’ll find
some happiness inside
an ordinary life

it, we, I, I, they, I, I, we, weの9つですよ? かなり多い。それを原曲のメロディにスパーンとはめ込んじゃって。脱帽です。

しかしよくこんな英語をあのメロディに当てはめられるなぁ。でもよーく観察すると英語のある法則が発動しています。このおかげで、綺麗にはまってる。

まず、単語の最後にあるT,D, Gは欠落して発音しないっていうのもそうですが、Hが欠落するというもの。

例えば「cold hearted words」。カタカナ読みするとコールドハーテッドワーズ(冷たい心の言葉たち≒心無い言葉)。しかし、英語ではcold hearted wordsのD, Hが欠落するのでcolearte words≒コラテワーズとなり、英単語3つが一音にスッポリと収まります。

これは日常会話でも頻繁に出現。例えば①have him ②with us ③tell herは①haveim ②witus ③tellerとなり、それぞれ①ハヴィム②ウィザス③テラーと変化。知ってるとリスニング力も爆上げ。欠落三兄弟ならぬ、欠落四天王ですかね、言ってみれば。三兄弟から四天王へとパワーアップ!

あとは、英語は文法的に主語が必要だけど別になくても分かるよねってときは発音しないことも多々あって。気まぐれですね。ややこしい。絶対主語がいるだのいらんだの、ややこしい。

特に顕著なのが「that I get and loud voices (I) hear when (they) well up,」。ここの(I)と(they)は発音しなくてもOK。なのでTDの欠落も相まって、①thaIgenlouvoices ②hear ③whenellupとなり、カタカナ表記すると①ダライゲンラウヴォイシーズ、②ヒア、③ウェネラップとたった3語に収縮しているんですね。驚きです。

とまぁ、細かい規則がいろいろあって、ネイティブも歌を歌ってます。だからこういうことを知っておけばカラオケで歌ったり洋楽のリスニングに役立ったりします。もちろん日常会話も同じ法則に乗っかっているので、外国人との会話(特にネイティブとの会話)に効果絶大。

某スタサプの〇先生「聞こえないんじゃない、最初から言ってないんだ!!」


さぁ、いよいよサビ! 現在6-5でAnonymouz(アノニムーズ)の優勢。どうなるかワクワク。点数は完全に主観と独断。ぶっちゃけAnonymouz(アノニムーズ)をひいきしてます。ごめんなさい。

01:14

騒がしい日々に笑えない君に/
思い付く限り眩しい明日を/
明けない夜に落ちてゆく前に/
僕の手を掴んでほら/
忘れてしまいたくて閉じ込めた日々も/
抱きしめた温もりで溶かすから/
怖くないよいつか日が昇るまで/
二人でいよう

for all the days in chaos
for you so you would know how to smile/
I will take you to the brightest future I can imagine/
so before we fall into this dark night without a way out/
come and take my hand come on and hold it tight/
even the days you tried to erase locking them all away in your heart/
I will melt them all with warmth inside my arms, when I hold you/
so please don’t be afraid until the day we can see the sun/
oh let us stay together

このサビで心を惹かれたのは「僕の手を掴んでほら」の英語表現「come and take my hand come on and hold it tight」。勝手な想像ですが、日本語よりも長くなりがちな英語がここは珍しく短くなってしまって語数が足りなかったのではないかな、と思います。

①騒がしい日々に笑えない君に
②思い付く限り眩しい明日を
③明けない夜に落ちてゆく前に
④僕の手を掴んでほら

の4小節。それぞれひらがなにしたときの文字数を数えると①16 ②15 ③15 ④11 と④だけ少ない。しかも「僕の手を掴んで」を直訳すると「take my hand」。たった3語。「ほら」をどう訳すかは訳し手の感性によりますが、それにしたって1小節(4/4拍子×8つ分)を埋めるには物足りない。

そこでAnonymouz(アノニムーズ)は「come and take my hand come on and hold it tight」と訳しています。ここでの「come on」は「ほら」の意訳かもしれませんが、最初の「come」と最後の「hold it tight(固く握りしめて)」に心を惹かれました。良い歌詞で違和感もなく語数を整えて小節に綺麗に収めている。上手すぎる。1点加算。

そして、次の「even the days 」(原曲で言うと「忘れてしまいたくて」)に上手く繋がっている。にしても「even the days」のファルセット(裏声)部分、綺麗すぎやしませんか。

そしてお待ちかね欠落四天王T, H, D。例によって「warmth inside my arms,」がワーミンサイマイアームズへ変化。


現在7-5。Anonymouz(アノニムーズ)の優勢変わらず。本当に怒られそう。YOASOBIも大好きです笑


01:50

ピアノ間奏の素晴らしいことと言ったら。お洒落なJAZZ BARで流れていてもおかしくありません。ワイン片手にチーズをつまめますね。


02:07

あぁほらまたチックタックと/
鳴る世界で何度だってさ/
君の為に用意した言葉どれも届かない/
「終わりにしたい」だなんてさ/
釣られて言葉にした時/
君は初めて笑った/

oh and again
tick and tocking on/
inside this world we’re always in a loop/
and I would try and try over and over
but words I prepared for you don’t reach/
so then I said “I want to end it all”/
(I) knew (I) was just lured by all your words/
but then you had a smile on your face for the first time again

この英語Ver.では、2番のAメロ(君にしか見えない)~サビ前(本当は僕も言いたいんだ)は無く、お洒落なピアノ間奏の後に2番サビがやってきます。

言わずもがな「ほらまたチックタックと」の心地よさがここでもう一度味わえます。原曲ではikuraさんが「あぁほらまた……」とセクシーに繋いでいますが、Anonymouz(アノニムーズ)は「oh and again」でこれまたセクシーに歌っていますね。

しかも、①oh and again ②tick and ③tocking ④onと単語の終わりがIN×AN×IN×ONで耳障り良すぎますね。ここ。はい、Anonymouz(アノニムーズ)に4点追加。11-5。大差が付いてしまった。


この2番サビで注目した表現はこれ。「釣られて言葉にした時」の英訳「I knew I was just lured by all your words」。

直訳すると(私はあなたの言葉に誘惑されたと知っていた)。luredはlure(ルアー)の過去形で誘うとか誘惑するとか、釣りで使うルアー(疑似餌)も魚を誘惑するからルアー。

釣られて、をどう英訳するか非常に難しいところですが、Anonymouz(アノニムーズ)の英訳「lured by all your words」が完ぺきすぎて。

lure⇔ルアー(疑似餌)⇔魚釣り⇔「釣られて言葉にした時」という連想ゲームに息を飲みました。いやー、これ狙ってますよね、絶対。すごい!

そしてそこから最後のフレーズ「on your face for the firsttime」に繋がっていくわけですね。

最後の「for the firsttime」のところの歌唱力もすごすぎる。ちょっと単語が崩れている感じも堪らないのです。一瞬、歌詞に載っていない単語で歌ったのかなと思ったくらい崩れていました。ただ崩しただけなのか、本当に違う単語をアドリブで歌ったのか、いつかご本人に聞いてみたいです。

なんにせよ、遊び心があって楽しいな、と思いました。来世は歌が上手い人に生まれたい。


02:27

騒がしい日々に笑えなくなっていた/
僕の目に映る君は綺麗だ/
明けない夜に溢れた涙も/
君の笑顔に溶けていく/

from all the days in chaos
I had forgotten how I could laugh/
to my eyes you are so beautiful
oh you’re out of this world/
all the tears failing down on this
dark night with our a way out/
they are melting all away
into your smile/

この節で注目したのは「僕の目に映る君は綺麗だ」の英訳「to my eyes you are so beautiful oh you’re out of this world」。

「to my eyes you are so beautiful(直訳:僕の目に君はとても美しく見える)」だけでも十分なのですが、さらに「oh you’re out of this world(直訳:この世のものとは思えないくらいに)」で強調しています。1小節の中の8拍を「to my eyes you are so beautiful」で5拍、「oh you're」で1拍使っているのにも関わらず、最後の「out of this world」をピッタリ2拍に収めている。


そしていよいよ大サビ!

02:48

変わらない日々に泣いていた僕を/
君は優しく終わりへと誘う/
沈むように溶けてゆくように/
染み付いた霧が晴れる/

from all the days on repeat
I was crying alone in my heart/
but now softly you seduce me
to the end of all the dark/
as if thinking down
through the night
like we are melting in air/
all the fog ingrained in me
is clearing up/

大サビ前半も本当に素敵。ここで注目したのは「沈むように溶けてゆくように」の英語表現「as if thinking down through the night like we are melting in air」の中の"in air"。理由は、歌詞を味わっていくなかで感じた細かい違和感。

①「沈むように溶けてゆくように」の英訳「as if thinking down through the night like we are melting in air

②「どこか儚い空気を纏う君は」の英訳「there’s something in the air around you fleeting like you’re about to fade」

あれ、同じ歌の中なのにちょっと表現が違う……。in airとin the air。theの有り無しで何が変わるんだろう?

歌だけを聞いていたときは感じなかったけど、歌詞の微妙な違い。ただの文法の制約によるものなのか、Anonymouz(アノニムーズ)の意図なのかは分からないけどかなり気になる。


というわけでここからは本筋を外れてただのtheに相当な時間を費やす第二部。こんなの書く人も読む人も変態ですわ。それか、英語ギーク。とりあえず、ここまで読んでくださってありがとうございました。これにて第一部終了です。

第二部 in airとin the airの違いって?

Weblio英和辞典で調べてみた。

うーん、分からない。in the airは(空気中で)、(漂って)という意味がある。それは知識として知っているが、in airの意味や使い方が分からない。正確に言うと、in airとin the airの使い分けが分からない。どいうときにin airでどういうときがin the airなの? という疑問。on air(放送中)という単語やin-airという名詞も見つけたが、うーん、釈然としない。

そこで書籍で調べることにした。用意したのは3冊。atheの違いを理解すれば、おのずとin airin the airの違いも分かってくるのではないかと考え、その方向で攻めることにしました。

・『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』/向山淳子+貴彦著
・『aとtheの底力』/津守光太著
・『英単語イメージハンドブック』/大西泰斗+ポール・マクベイ著

書籍3冊

本当にこの3冊は良かった。英語に対しての知見がほんっとに深まりました。英語の歌詞について調べるつもりだったのに、いつの間にか読みふけってしまった。

さて、1冊ずつ紹介したいところですが……ぐっとこらえて。肝心のin airとin the airの使い分け。まずはtheを深く知るためにaとの違いから理解することにしました。

まずは『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』から。この本、かなり良かったです。英語初心者や、学習のやり直しをしたい人にピッタリですね。中級者や上級者が読んでも新しい発見があります。

ビッグ・ファット・キャット

『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』向山淳子+貴彦著

"atheの使い分けに関しては、実はそれだけで本が何冊も書けるほどややこしいものです。一般のアメリカ人でも、明確にその違いを説明できる人というのは、言語学をいくらか学んだ経験のある人ぐらいでしょう。<中略>atheはただの飾り言葉ではなく、役者の「特別な化粧品」であり、決して訳すことのできない不思議な英語独特の単語なのです。"

と前置きされたあと次のように続きます。

"aはぽつんとしたスポットライト。theは華やかなスポットライト。"

分かりやすい例文もありました。

"もし女性からYou're just a man. と言われれば、「あなたはなんでもない人です」という意味になりますが、You're just the man. と言われれば一転、「あなたしかいない」という意味に早変わりします。"

出典:『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』向山淳子+貴彦著

つまり、aはたくさんある/いるもののうちのひとつ、対してtheは、替えのきかない特定の何か、という解釈をすることができます。にしてもこんなに意味が変わるなんて。

大和撫子のみなさんが欧米人に英語で愛の告白をするときは、十分にお気をつけください。

theを使う代表的なものに太陽があります。中学校で、太陽はthe sunと習いましたが、プラズマを用いて太陽を創り出すことができればそのうちa sunになるかもしれませんね。

「We use a sun for 〇〇.」(太陽エネルギー使って○○するよ)みたいな感じで。「昔は太陽ってひとつだったらしいよ」「え~、それっていつの時代⁉」みたいな。

↓疑似太陽の研究↓ by筑波大学がんばれ

「地上に太陽を」をスローガンに掲げ、最先端のプラズマ物理研究とその応用、並びにそれらを通じた人材育成に取り組んでいます。
出典:筑波大学HPより

https://www.osi.tsukuba.ac.jp/sdgs/effort/s-16


お次は『aとtheの底力』。タイトルからして惹かれません?

底力ですって。本のタイトルをaとtheのたった2つの単語に割いてしまってる。しかも、底力ですって。つまり、一冊かけて解説してあるってことだよね。超読み応えありそう。

英単語イメージハンドブック

『aとtheの底力』/津守光太著

この本も最っ高でした。84ページから始まるPart2のタイトルなんて「アメリカ人は裸のbookの夢を見るか?」ですよ。面白くないわけがない。それで、津守さんによるとtheっていうのはとてつもない底力を持っているそうです。

川の名前にtheを付けることで、川は、山や畑とはっきり区別されるものとしてイメージされます。全体のカタチはあいまいで、見えない。けれども、確かにそこにある川という存在。それをtheがくっきりと浮かびあがらせるのですね。
出典:『aとtheの底力』/津守光太著

つまり、「どこか儚い空気を纏う君は」の英訳「there’s something in the air around you fleeting like you’re about to fade」のtheは、全体のカタチは見えない。けれども、確かにそこにある空気という存在。ってことですね。うーん、底力が感じられる。分かってきたぞ。

「as if thinking down through the night like we are melting in air」は、空気のカタチが見えない。ただの空気。大気。意識しない、見えない、感じない、空気。どこにでもあるそこらへんの空気。

ここで衝撃の気づき。もしかして、主語が無くても成立する日本語であえて”空気”とわざわざ言うということは英語に置き換えたときに"the"が出現するのかも……。奥が深すぎる……。


最後に大西泰斗先生の本で総仕上げ。ありました。早速。一撃。

theはモノに強烈な限定を与えます。
『英単語イメージハンドブック』/大西泰斗+ポール・マクベイ著

文脈や状況、常識や語句のつながりによってtheが指し示すものが変わるそうですが、「どこか儚い空気を纏う君は」の英訳「there’s something in the air around you fleeting like you’re about to fade」のtheはairに対して強烈な限定を与えるってことですね。

どういう限定かと言うと、周りの空気とは全く違う君の纏っている空気ということ。つまり、君はどこか儚いソノ(コノ)空気を纏っている。

「沈むように溶けてゆくように」の英訳「as if thinking down through the night like we are melting in air」は、

「私たちはどこのものとも分からない空気(大気)に沈むかのように、溶けてゆくかのように」ってことですね。

「君の纏っている空気」を周りの空気から「the」が切り離して限定した、ということ。

aとtheの底力

『英単語イメージハンドブック』/大西泰斗+ポール・マクベイ著

いや~そんな違いがあったなんて。なんかもう、君が纏う空気がハッキリ強烈に限定された底力を持っていて、もはや儚くもなんでもないですね。いや、儚さが強烈に限定されているから、より儚いのか。面白い!

君が纏う空気が完全に色をつけてきました。この歌を聴くたんびにいろんな儚さを想像してます。


03:06

さぁ、気を取り直して大サビ後半!

脱線しすぎて歌詞を紹介するのを忘れてました。

これでいよいよ最後です。

忘れてしまいたくて閉じ込めた日々に/
差し伸べてくれた君の手を取る/
涼しい風が空を泳ぐように今吹き抜けていく/
繋いだ手を離さないでよ/
二人今、夜に駆け出していく/

through all the days you tried to erase
locking them all away in your heart/
now I’ll take your gentle hand reaching
out just for me take me/
somewhere far from here like a cool wind
swimming straight through
the sky we’re blowing through
the time through the now/
so promise me
to never ever let go my hand/
you and I, the two of us we run out into the night/

感動するポイントはたくさんありますが、この節で好みなのは「so promise me(約束してよ)」です。発音がとっても好き。Pが破裂音なのでまず弾けて、次にRで巻き舌音が来る。そして最後にSがくる。この組み合わせが、得も言われぬねっとり感を演出するんですよね。

いやぁ、ほんっとエモ言われなさすぎてエモい。FROMも好きですけど、この終盤のPROMISEでやられました。ねっとり感

そもそもYOASOBIの原曲にはありませんが、語数を増やしてメロディに入れるためなのかtake meとpromise meで韻を踏むためなのか分かりませんが、なんにせよAnonymouz(アノニムーズ)ありがとうって感じです。耳が幸せすぎる。

途中、あらぬ方向に話が脱線してしまいましたが、結論はただひとつ。

【英語ver.】YOASOBI『夜に駆ける』by Anonymouz(アノニムーズ)の完成度が高すぎる!! 

久々に聞き惚れちゃいました。もちろん原曲が素晴らしいことはもちろん、Anonymouzの歌詞のセンス、歌唱力、曲のテイスト、動画のスタイル、どれをとっても芸術です。いやぁ、久々に興奮してしまった。ホント、早く生で聴きたい。5月のライブが楽しみです!!




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