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ダークトライアドとウェルビーイングとの関連性を探る

近年、心理学の分野では、性格特性とウェルビーイングの関係が注目されています。
そのなかでも、ナルシシズム、マキャヴェリズム、サイコパシーからなる「ダークトライアド」の特性は、興味深い研究対象です。
先行研究では、これらの特性とウェルビーイングとの間に関連性がある可能性が示唆されていますが、このトピックは比較的未解明なままです。
本稿では、ダークトライアドの特性と主観的・心理的ウェルビーイングとの具体的な関連性を調査した既存文献のメタ分析を紹介します。

方法

この調査をおこなうために、研究者はPsycINFO、PubMed、Web of Scienceの各データベースで徹底的な検索をおこないました。
その結果、ダークトライアドの特性とウェルビーイングの関係を調べた横断的な相関研究に焦点を当てました。
また、ダークトライアド特性の複雑な構造を考慮し、ディメンションとファセットレベルの両方でメタ分析をおこない、多次元的なアプローチを利用しました。

結果

慎重に分析した結果、合計26,252人の参加者を含む55の研究がメタ分析に含まれることになりました。
その結果、特定のダークトライアドの特性とウェルビーイングとの間に興味深い関連があることが明らかになりました。
誇大性ナルシシズムと大胆さ・優位性は、ウェルビーイングの高さと正の関連がありました。
逆に、脆弱性ナルシシズム、敵対性、脱抑制、マキャヴェリズムは、ウェルビーイングの低さと関連することが判明しました。
さらに、年齢と性別がこれらの関連性の一部を緩和する可能性があることが示されました。

意義と提言

このメタ分析の結果は、ダークトライアドの特性とウェルビーイングの間の微妙な関係に光を当てるものです。
その結果、誇大性ナルシシズムと大胆さ・優位性が高い人は、自己肯定感や自己主張が強いためか、ウェルビーイングが高いことが示唆されました。
一方、脆弱性ナルシシズム、敵対性、脱抑制、マキャヴェリズムは、ウェルビーイングに悪影響を及ぼすことが明らかになりました。

今後の研究では、ダークトライアドの特徴を多面的に測定することを推奨しています。
これらの特性の様々な側面を考慮することで、ウェルビーイングに対する影響をより包括的に理解することができます。
さらに、ダークトライアドの特性とウェルビーイングの関連において、年齢と性別の緩和効果を考慮することで、これらの関係に影響を与える新たな要因を明らかにすることができるかもしれません。

結論

このメタ分析は、ダークトライアドの特性とウェルビーイングとの関連について貴重な洞察を提供します。
既存の多くの研究を体系的に分析することで、本研究は、ダークトライアド内の特定の特性がもたらすさまざまな影響を浮き彫りにしています。
また、ナルシシズムの誇大な側面と脆弱な側面、マキャヴェリズムの多面的な性質を区別することの重要性が強調されています。

性格特性とウェルビーイングの関係を理解することは、心理学分野の研究者と実践者の双方にとって極めて重要です。
ダークトライアドの特性とウェルビーイングの間の複雑な相互作用を認識することにより、今後の研究は、これらの特性と個人および社会の幸福に対するその意味についての理解を深めることができます。

元論文

Blasco-Belled, A., Tejada-Gallardo, C., Alsinet, C., & Rogoza, R. (2023). The links of subjective and psychological well-being with the Dark Triad traits: A meta-analysis. Journal of Personality.


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