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冒険は続く。続ける。

  気づいたら、もうすっかり中年になってしまった。
 最近は、ゲームにもいまいち夢中になれない。大好きなRPGでさえ、一時間もやると疲れてしまう。昔は八時間くらいぶっ通しでやっても平気だったのに。
 もうあの頃のように、冒険に心躍らせることはできないのだろうか。
 私の心は、いったいどこまで色褪せてしまったのだろう。
 
 二十七年ぶりに『グランディア』をプレイした。発売当時、セガサターンで夢中になってプレイした王道冒険RPGである。ダウンロード版でHDリマスターが発売されているのを知って、懐かしくて購入してしまった。
 この作品は、私にとってまさに思い出の作品である。当時はとにかく毎日ワクワクしながらプレイした。全身全霊で、主人公たちと一緒に冒険した。
『テイルズオブファンタジア』オタクだった私は『サクラ大戦』のためにプレイステーションではなくセガサターンを購入したが、他にプレイした作品は正直に言うと少ない。記憶にあるのはこの『グランディア』と、タイトルは忘れたが「ポリゴンがカクカクしたRPG」、そして『サクラ大戦2』。それくらいで、ドラクエ、FF、テイルズが参入するプレイステーションにさっさと移行してしまった。そんなにわかサターンの状態で、この作品を選択した当時の私を私は褒めたい。褒めちぎりたい。
 そんな思い入れの強い作品なだけに、プレイするのは少し恐怖を伴った。これでダメなら、いよいよ私はもうダメかもしれない。あの頃のように、もうゲームを心から楽しむことはできないのだと、確認することになってしまうかもしれない。
 そんな想いを抱えながら、私はプレイした。
 結果的に、無事クリアすることができた。
 途中でだらけて、中断してしまうこともなかった。
 ということは、楽しめたと言えるのではないだろうか。
 もちろん、昔と同じようにはいかない。
 一度プレイ済ということもあるのだろうが、続きが気になって眠れないこともないし、戦闘が楽しすぎて無駄にレベルを上げすぎてしまうこともなかった。
 どちらかと言えば、王道ストーリー、しかも14、5歳少年少女の冒険はくすぐったいばかりだし、戦闘も単調で、雑魚戦好きな私でもちょっと面倒に感じるほど。シンボルエンカウントだから避ければ良いのだが、シンボルがいると逆につい殲滅したくなる性格なのだ。
 余談だが、旅の途中で出会う、主人公ジャスティンの師匠的な存在となるガドインというおっさんは、とても印象に残っていたので会うのを楽しみにしていたが、あんなにおっさんなのに私より年下だったことがわかりショックを受けた。
 それでも最後までやり抜けたということは、やはり良いゲームだったのだと再認識した。
 
 小学生の甥が来たので、これ見よがしにプレイした。
 どうだ、これが昔大ヒットした、伝説的王道冒険RPGだ! お前の年齢くらいなら、これを見て胸が躍るはずだ! さあ存分に見るがいい! という勢いで見せた。
 が、結果は予想の真逆だった。特に熱いものは込み上げてこなかったらしい。まあ、途中からで、しかも少しの時間見ただけでは無理というものか。
 だが、「龍神剣」くらいはカッコ良いと思ってくれるかと期待していたのだが、そちらも反応がなくてちょっと寂しかった。
 あまつさえジャスティンの幼馴染の女の子、スーの「応援『ガンバ!』」を使った時などは、
「なんでこんなダサい応援で回復すんの?」
 と散々な言われよう。
 確かに言われてみれば、回復するメカニズムはわからない。マスコットキャラであるプーイに何らかの力があるのかもしれないが、確かに応援されただけで傷が塞がるのは不可解だ。
 しかし、それは「そういうもの」なのである。RPGには、そんなものはいくらでも転がっている。
「そういうもん、なんだよ」
 と私は説明し、また同じ技で回復した。甥が「だっさ」と呟く。
 ダサいかどうかは、その人の感じ方によるだろう。確かにスタイリッシュではないし、8歳女児の応援で味方全員(スー自身も含む)が回復するのもどうかと思うが、それもまた「そういうもの」なのである。
 いや、もしかすると、甥にとってスーは同年代の女子。そのかわいい応援を「かわいい」と言うのは照れくさいのかもしれない。それでつい「ダサい」などと言ってしまった。うむ、可能性はある。
 確認しようもないし、例え確認しても照れて否定するだけだろう。まあ「そういうこと」にしておいてやろう。そのほうが甥もかわいく思える。
 
 結果的に『グランディア』は今の時代でも充分に楽しめることが分かった。そして、自分がまだ完全にダメになったわけではないことも確認することができた。
 願わくば、甥のような、今を生きる少年少女たちにもこの作品に触れて、かつて私が体験したような「わくわくする」冒険を感じて欲しいものだ。
 HDリマスターも素晴らしいとは思うが、このような名作こそ、リメイクされてしかるべきなのではないだろうか。
 今年は『ロマンシングサガ2』、そして『ドラゴンクエスト3』のリメイク版が発売される。原作を知っている我々にとっては戦々恐々とする部分もあるが、現代の若者にも優れた作品が届きやすいという側面を考えれば、必要な変化なのだろうと思うし、我々もそれを楽しめるように、自分をアップデートしていければ良いのだろう。

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