4月に森に入るという挑戦
4月だから、新しいことに挑戦する。
そう決めた僕が思いつたことは、森に入ること。
はっ?
頭がお菓子と思われてもしょうがない。お菓子じゃない、おかしいだ。いや、お菓子かもしれない。僕の頭は、クッキーでできているのかもしれない。それとも、グミか。
お菓子でも、おかしいでもどちらでもいい。僕が決めたことだから。なんと言われようと、僕は森に入る。
森に入るのはいいのだが、肝心などこの森に入るのかを決めていない。そもそも、森ってなんだ。森に入ろうとしているのに、森を知らないのは笑えない。いや、むしろ笑えるか。よし、こういう時は辞書に頼ろう。
どうやら、森というのは樹木が生い茂っている場所らしい。それなら、ここら辺にいくらでもある。森ばかりだ。でも、せっかくだから、近くではない森に行こう。そうだ、どこか終点まで行って、その近くで森を探そう。
運が良く、下り電車の終点の近くには、森があるらしい。最寄りからだと電車と徒歩、合わせて3時間程だ。行くのは、明後日。明日は、色々と準備をしなければならない。森に行くのに何を準備するんだ、と思うかもしれないが、放っておいてくれ。
当日。
朝早くに家を出る。始発の乗ったのは、初めてかもしれない。昼間と比べると、目くそと鼻くそだ。それじゃ、同じじゃないか。それを言うなら、月とすっぽんだ。それも違う気がする。そもそも、比べるまでもない。
乗り換えがないので、ずっと座ったままだ。だから、たまに席を立って、伸びをする。普段こんなことをしていたら、ジロジロとみられるだろうが、今はガラガラだ。気にする人はいない。
B駅より先は来たことがない。未知の世界だ。と思っていたが、今までと変わらない。田んぼが広がってるだけだ。
似たような景色を見ながら、電車は終点に近づく。終点の二つ手前の駅から、田んぼが見えなくなる。その代わりに、樹木がよく目に入る。たしかに、森はありそうだ。
8時を少し過ぎた頃に、終点に着く。普通なら、通勤・通学ラッシュで駅には、人が溢れている時間帯だが、ここC駅は全く人がいない。上りのホームを見ても誰もいなし、この駅で降りたのも僕しかいないようだ。僕が乗ってきた電車もすぐに折り返して、行ってしまった。そして、ここは無人駅だ。
世界に僕しかいないようだ。なんて、小説の一節みたいなことを思う。とりあえず、改札を出る。改札を出たと同時に、目の前に森が広がる。
「おぉ、これが本当の森か。初めて見た。」
本当の森ってなんだ。
朝8時にもかかわらず、森の中はかなり暗い。樹木の数が今まで見た森とは全然違う。森度高い。森度ってなんだ。
あまりの暗さに、懐中電灯を点ける。これは昨日、近くのホームセンターで、1万円で買ったものだ。いわゆる、高級懐中電灯。1キロ先まで、照らしくれる。たぶん、ほとんどの人が要らないと思ったに違いない。
森に入って、30分くらい経った。森に入ることが目的だったので、それは達成した。でも、どこまで行けばいいのか、分からなくなってしまった。こういうときは、Siriにでも聞くか。
「どこまで行けばいい?」
って。
答えてくれるだろうか。
答えてくれなかったら、このまま森を進み続けることになる。
出口を見つけるまで、進み続けることになる。
ただ、時間はある。懐中電灯もある。
僕は中々いいもの持っているようだ。
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