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【時事】日銀、金利抑え込みへ資金供給拡大 綱渡りの異次元緩和

■参考記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB184P70Y3A110C2000000/

■サマリー
・日銀は17~18日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の継続を決めた。
・長期金利の上限を0.5%とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)など政策の大枠は維持しつつ、
 投機筋の「空売り」に対抗するために金融機関に国債の購入を促す異例の資金供給に乗り出す。
・国債市場の機能低下など副作用が残るなか、10年に及ぶ異次元緩和は綱渡りが続く。
・「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、22年度の物価見通しを昨年10月公表時点の2.9%から3.0%に引き上げた。これは政府・日銀が目標として掲げる2%を上回る。
・ただ23年度は1.6%に据え置き「(2%目標を)安定的に達成できる状況になっていない」として緩和縮小を見送った。
・人為的に長期金利を抑えてきたため、金利のカーブで10年債の利回りだけ不自然に低くなる「ゆがみ」が生じ、企業の社債発行などに悪影響が出る懸念が高まっていた。
※ゆがみは投機筋にとって格好の標的になっている。
・日銀は今回新たな対抗手段として金融機関に資金を貸し、国債買い入れを促す「共通担保資金供給オペ」の拡充を打ち出した。
・具体的には市場取引が多い5年債などを銀行に購入してもらうように促し、ゆがみが大きい10年債のゾーンに直接働きかけるのではなく、金利カーブの手前から全体的に金利を押し下げ、徐々にゆがみを解消させる狙い。
・ただし今回の措置で、金融機関が日銀の思惑通りに国債の買い入れを増やすかは不透明。

■深堀&思考
▼なぜ金融緩和が必要か?
・デフレ対策のため。(デフレとはインフレとは反対にモノやサービスの値段が継続的に下がることで、相対的にお金の価値が上がる。)
・デフレが続くと、個人は「もっと値段が下がってから購入しよう」と消費を先送りにする心理が働くため、モノが売れなくなり、長期的に経済状態の悪化を招く恐れがある。(個人の消費が停滞すると、企業の生産活動も停滞してしまう悪循環(デフレスパイラル)に陥る)
・現在も需要とそれにともなって上がるべき商品やサービス等の値段が期待する水準になっていないため、日本はマイナス金利をはじめとした金融緩和でデフレ脱却を目指す。
▼日本の金融緩和の歴史は?
・日本は、1990年代のバブル崩壊以降、1999年にゼロ金利政策による金融緩和を開始し、以降景気状況に応じてゼロ金利の解除と復活を繰り返してきた。
・再度ゼロ金利政策に舵を取ったのは2008年12月であり、リーマン・ショックに連鎖して顕在化した、世界金融危機による景気低迷の打開が目的だった。
・さらに、2%の物価安定目標を実現するために、2013年4月から長期国債やリスク性資産の買い入れを拡大する「量的・質的金融緩和」を導入し、緩和策を強化。
・さらに、2016年1月にはマイナス金利を、同年9月には長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)も加える異次元緩和を導入。
・以降も金融緩和を継続し、コロナ禍の2020年3月以降は「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」を追加実施。
▼アメリカ等先進国の動きは?
・アメリカでも、リーマン・ショック以降利下げと量的緩和を実施され、2008年12月からはアメリカ史上初のゼロ金利政策が取られていた。
・しかし、景気回復の兆しが見えるようになり、2014年10月で量的緩和を終了、2015年12月にはゼロ金利を解除し利上げに踏み切っている。
・コロナ禍の2020年3月からは、再びゼロ金利政策と量的緩和を実施したが、2021年11月の会合で資産購入縮小(テーパリング)を決定し、2022年3月に資産購入を終了、利上げに転向。
※利上げに踏み切る海外との金利差で円安が進んでいるが、日銀は緩和の縮小には慎重な姿勢。
▼なぜ日銀は緩和の縮小に慎重なのか?
・貸出金利が低下すれば、企業や個人がお金を借りやすくなる。
・企業は事業投資を積極的に進められるようになり、業績向上や株価上昇が期待できる。
・個人の賃金も上昇するので消費が拡大し、経済が活発になる効果も期待できる。また、ローン金利が下がることで、住宅や車等を買いやすくなる点もメリット。
・しかし、現状では生産コストの上昇により企業業績や賃金は上がっておらず、理論どおりに進んでいない。
(そのため、国民の生活は苦しい状況が続いているのが実態。)
・日銀が円安進行にも関わらず緩和継続の姿勢を見せているのも、この実態を加味しているためとされている。
▼政府・日銀が考える景気回復のシナリオとは?
①出回るお金が増える
→②円安
→③企業の輸出・設備投資増加
→④賃上げ・安定雇用
→⑤個人の消費拡大・企業業績向上
→⑥景気回復・物価上昇
→①出回るお金が増える→・・・
参考:https://www.bk.mufg.jp/column/keizai/b0041.html


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