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会社でのアルコール依存症問題

 アルコール依存症って職場で論じられなければいけない問題?と思われる方も多いと思います。しかし、実はアルコール依存症の方の多くは、一度は定職に就いていた人か、その配偶者であるという事実を知れば、職場で取り扱うことの重要性をご理解いただけると思います。言い換えれば、他人の援助でアルコール依存症になるまでお酒が飲める環境にいることはかなり特殊な状況と言えます。職場でのアルコール摂取に関する教育は重要であると考えています。

 健康診断で肝機能の一種であるγ-GTPが高値の時に再検査を求めて、改善できない場合、ご本人と面接を行い飲酒が原因と思われたら禁酒を勧めます。それでも次年度改善できていない場合は再度禁酒を勧めてアルコール摂取をコントロール出来るようにアドバイスをします。

 多くの場合はお酒の量を減らして、再検査を受けてγ-GTPが改善していることが多いのですが、再検査で改善できない人は、やはりお酒の量のコントロールが出来ないようなので、禁酒をお勧めします。

 この時に、「自分のお酒の飲み方には問題がある」と認めた人はその後改善できる傾向が強いようです。産業医を長くやっていると、アルコールの問題で会社を辞めた人を何人か知っています。勤怠が悪くなり、会社での問題行動が多くなり、実際に周囲から「酒臭い」という苦情が出たこともあります。

 厚生労働省のホームページにアルコール依存症について詳しく記載してあるので一度は読んでいただきたいのですが、アルコール依存症を分かりやすく表現すると「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態」とされています。そして、アルコール摂取について初めに「飲む量のコントロールが出来ない状態」となり次に「飲む時間のコントロールが出来ない状態」など、いろんな形で現れて、次第に「連続飲酒」状態になるとされています。

 お酒を飲める人は、飲み過ぎると「二日酔い」という状態になり、翌日の朝苦しい思いをします。なので、飲む量を控えるのですが、アルコール依存症になる人はこの「二日酔い」の程度が軽いのです。γ-GTPが高くアルコール摂取量が多い人と面接していて、「二日酔いで苦しい思いしたこと多いですか?」と聞いて、「学生時代は多少ありましたが、最近はないですね」と答える人は要注意です。ですから、本人はアルコール摂取に問題があるとは思わず、自覚症状も無く、ただγ-GTPが高いだけで何故産業医が面接をしてくるのか疑問に思っているケースもあります。

 「久里浜式アルコール症スクリーニングテスト」というテストがあります。簡単な質問に答えてその「はい」の数によりアルコール依存症の疑いの有無を判定するのですが、その質問項目に
「酒を飲まないと寝付けないことが多い」
「二日酔いで仕事を休んだり、大切な約束を守らなかったりしたことが時々ある」
「酒をやめる必要性を感じたことがある」
「飲まないほうが良い人生を送れそうだと思う」
というものがあります。「若気の至りでやってしまった」の範囲を守れずに、社会人として守るべき限度を超えていることを自分で認めることが出来るか否かが治療のカギを握っているのかも知れません。

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