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モンスター社員を育てたのは誰?

*感情の起伏が激しく、周囲に大きな影響を及ぼす「境界性パーソナリティ障害」について理解して下さい。

 A氏、35歳男性、独身。有名国立大学工学系大学院卒業。製品開発技術者、係長。2年前より現在の仕事をしている。同僚が顧客からのストレスによるうつ病休職後に異動。その後、人員補充のないまま現在に至る。
 1年前から会議中に気に入らない話題になるとテーブルを叩き、会議室から退席し、顧客からの電話を叩きつけるように切り、「そんなこと出来るわけないじゃないか!馬鹿か!」と怒鳴ることが何度もあった。
 仕事は大変よく出来て、アメリカのメーカーと直接電話で技術的な打ち合わせが出来、商品知識は大変抱負で提案能力、解決能力は非常に高い。しかし、後輩や同僚はA氏といっしょに仕事をすることを拒んでおり、うつ病休職後に異動となった人員補給は出来ない状況であった。

*すぐに感情的になり、周囲に迷惑をかける行為を繰り返す「境界性パーソナリティ障害」というパーソナリティがあります。その背景には、「困難な仕事をさせられている」、「有能なので他の人で代替えが不可能」という事情があります。本件でも、困難な顧客、同僚がうつ病休職後に補充が出来ない等の困難な状況があります。

 上司B部長は、3年前からこの部署にいたが、A氏に注意が出来ないでいた。しかし、日々エスカレートするA氏の感情的な行動を問題視し、産業医に相談した。産業医がA氏とB部長について関係者と面接し調査したところ、A氏の問題行動は最初は舌打ちをしたり、ペンで机をトントンと叩いたりという程度の些細なものであったが、段々エスカレートしていった。一方で、B部長はそれについて注意をせずに放置していた。困難な顧客を任せて十分なサポートが出来ていないことがA氏の怒りの原因であることは理解できていたが、具体的な解決策が決められなかった。

*ただし、A氏もいきなり問題行動を起こしたわけではありません。小さな問題行動を起こしているときに上司が適切に指導をしていれば、このような状態にならない可能性がありましたが、一方でB部長のように言うべき時に言うべきことが言えない「回避性パーソナリティの傾向」のある上司の場合、モンスター社員を育ててしまうことがあります。

 A氏は時々、遅刻することがあるがB部長も注意する事はなかった。後で分かったことであるが、この頃、不眠で悩んでおり、怒りの感情が強くなり眠れないことがあった。

*勤怠に問題があることを上司が指導しないことは問題です。

 産業医がA氏とB部長と3人で面接した。
 このままA氏の行為がエスカレートすると器物破損等の事件に発展しかねない。また、社会人としてあるべき態度ではないので、問題行動をやめるように注意し、境界性パーソナリティ障害について説明した。怒りを持ちやすい性格の人は世の中にある確率でいるが、それが顕著になった場合には社会に受け入れられなくなってくる。A氏がその態度をとり続けると、会社で居場所がなくなってくる可能性が高いし、現に、同僚や部下がいっしょに仕事をしたがらないのは事実である。怒りがこみ上げてくるのは感情だから止めようがないかもしれないが、会社で感情をあらわにすることは我慢するように伝えた。また、B部長についても、A氏の問題行動をエスカレートさせた責任はある旨を説明した。

*A氏をモンスター社員に育てたのはB部長であるという認識を両者が持つことが問題解決の第一歩。

 その後、A氏の問題行動はなくなった。問題行為がなくなれば、そもそも仕事が出来る人なのでいっしょに仕事をしたいと希望する後輩も出てきて、業務は正常化した。

*境界性パーソナリティの傾向のある上司と回避性パーソナリティの傾向のある部下が一緒にいると部下にストレスがかかりうつ病などの気分障害となる傾向があり、反対の場合には部下がモンスター社員となりやすい傾向があるようです。

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