見出し画像

「間質性肺炎」~難病になった喜劇作家の"再"入院日記2

某月某日

誕生日を迎えた。

人生の中でも稀にみる最低気分のアンハッピーバースデー。
だだっ広い個室でベッドから動けず一人、時間をつぶす。
自分の生きざまの裏返しだけど、誕生祝のメールをもらえるような友達はおらず。入院のことも家族以外誰にも知らせていないのでお見舞いもない。

誕生日プレゼントは医師から。骨密度の検査結果。
ステロイドを飲み続けている割には、骨はとても丈夫な状態だそう。健康体の同年齢の人と比べて90%くらいだって。おめでとう。

ということで、ステロイド量を増やして60ミリにすることに。……は?
暴れる免疫を抑えるためとは言え、これで完全に去年の入院中の量に戻った。40ミリが退院目安だった気がするから、また長引いたかもしれない。

♪ハッピーバースデー・トゥ・ユー

妻がサプライズで見舞いに来てくれた。
こっそり休みを取っていたらしい。
職場復帰してまもないのに……感謝しかない。
いまだ呼吸が苦しくて、弾んだ会話はできなかったけど、つかの間の30分、そばにいてくれるだけで癒された。心が、助かった。

1歳の息子との面会は、感染の問題があり禁じられている。
病院のロビーでばあばに抱っこされながら「パーパ」と言ってたと聞いて、目頭が熱くなった。
――入院のこと分かってるかな? 寂しがってない? 保育園頑張ってる? 

早く会いたいよ。
それを励みに頑張るよ。

目下、私の直面している問題。
皮膚筋炎の体の痛みとこの息苦しさ。
そう、間質性肺炎を合併してしまった。

間質性肺炎(かんしつせいはいえん)とは、肺の間質(肺の空気が入る部分である肺胞を除いた部分で、主に肺を支える役割を担っている)を中心に炎症を来す疾患の総称です。 特発性肺線維症(単に肺線維症ともいう)など多様な病型を含んでいますが、その多くは原因が不明であり、また治療も困難な疾患です。   (間質性肺炎|KOMPAS - Keio University HPより)

その進行の早さが結構大変――命にかかわってくる状態とのこと。
レントゲンを見ると、白い部分が日に日に広がってきている。
線維化して、酸素と二酸化炭素のガス交換がうまくできなくなっている。
それが咳を引き起こすし、呼吸自体を苦しくさせている。

自由に行動ができない。シャワーはもちろん浴びれない。少し歩くだけでめまいを起こす。今朝、トイレ内での酸欠は相当危なかった。看護師に現状を伝え、酸素吸入器を常時つけることに。一層動きずらくなる。

体力と同時に気力も奪われていく。
唯一、続けさせてもらっていた台本仕事にも身が入らない。
早めに言って断るべきだが、これがなくなると精神までダメになりそうで、どうしても失いたくない……。

ベッドの上で、柄にもなく神頼みをした。

どこまでなら許せるか。
命は残してもらうとして、どこまでならしょうがないと諦められるか。
思い通りいかないのが普通。
思い通りいかない日常を楽しむ。
思い通りいかないことを楽しむにはどうするか。

思考をずらす。ポジティブシンキング。

そう。こんな至れり尽くせりの執筆環境も普通ないぞ。
贅沢個室。朝昼晩とご飯が出て、まるでいつか夢見た売れっ子作家の缶詰じゃないか。創作にはうってつけ。ここで書いたホンが名作ドラマになるやも。日々の日記がエッセイ集の書籍になって。
なんだったら小説だって書き始めてみようか。ネタには困らないでしょ。

プラスにプラスに、笑顔に笑顔にと言い聞かせて。
でもなんだ。ずっと涙が止まらない。
いやいや咳が苦しいからだ。大丈夫。全然大丈夫。


----------------------------------



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?