撃たれたい私
所用を終え妻に連絡を取る。
四歳息子は噴水広場で水遊びをしているという。
30分に一度水が噴き出す子供たちの人気スポット。
羨ましい。
童心に帰って私も飛び込んでいきたい衝動に駆られる。
「これ買ってきたよ」
手土産の大型水鉄砲を渡す。
噴水が止まっている間、子供たちは水鉄砲で遊ぶのだけれど、息子はずっと100均の拳銃タイプを使っていた。
タンクのついたこのマシンガンタイプは、飛び出る水の勢い・太さが違う。
「人に向けちゃ絶対だめよ」
ママの言いつけにうなづく息子。
周囲を見渡し、人がいないのを確認し、さらに天に向けて水を放つ律義さ。
私は一筋の飛行機雲を見て「ほら、ブルーインパルスだ」と嘯き、息子を振り向かせた。不意のもらい飛沫を期待したけれど、忠実なる息子の銃口はちゃんと下を向いている。
再びの噴水に飛び込んでいく息子を見ながら、私は拳銃に残った水をピュッと自分の膝小僧にかけた。
水鉄砲ひこうき雲の弧を描く
(みずでっぽうひこうきぐものこをえがく)
【季語(夏): 水鉄砲】
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