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カイジ ファイナルゲーム(2020年/日本)感想 最後までキンキンに冷えてる、熱を帯びずに終わる映画。



久々にキレちまったよ。


でもゴールドジャンケンだけ後々考えたらちょっと好きかも。


〘カイジ ファイナルゲーム〙

カイジファイナルゲームポス

画像引用元:プライムビデオ https://www.amazon.co.jp


以下、一部にネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー

オリンピック後に不況で崩壊した日本をなんとかしたい富豪のおじいさんが、日本をダメにしている連中へ天誅したいと思いついて、カイジに助けを求めてギャンブルのような破滅ゲームのような何かをやってもらう。


■内容

実写版カイジ第3作。

『ファイナルゲーム』という名前からして、おそらく一応のカイジ実写版最終作なのではないかと思います。

今作では、カイジ自身の苦境を打破する為にギャンブルするわけでは無く、日本の将来を心配した富豪のおじいさんから依頼される形で帝愛や政治家達へ立ち向かうという構造になっています。

ヒロイン枠でパートナーとなる新キャラクターや他にも協力者が居るので、パッと見はチーム戦のようになっていました。


■感想(ネタバレあり)

僕はこれまでのカイジは、繰り広げられる心理戦とかギャンブルの内容とかゲーム性とかに注目して楽しんでいたので、その辺りが死んでいる今作は全く肌に合いませんでした。


背景設定として、オリンピック後の不況で日本全体が貧困化し、格差が異常に拡大した結果、下々の人間は皆限界の生活をしている、というものがあります。

これ自体は僕は凄く良いと思っていて、それまでのカイジは自分の蒔いた種で勝手に破滅しかけて、起死回生のギャンブルに挑むって形だったのが、今作では言わば一族総カイジ化したような状況で、日本全体のピンチを救うためにカイジが動く、という構図になっているように思います。

スケールは無駄に大きくなったところですが、その状況設定自体は中々面白いと思います。



ただ、その上でやっぱり個人的には全くハマる部分が無かったので以下かなり荒れ気味な感想になります。ごめんなさい。





冒頭で繰り広げられるバベルの塔は、ランダムに配置された塔の頂上に大金か秘匿された情報のどちらかを選択できるカードが設置されているので、それを取り合ってくださいというもので、カイジは事前に塔の出現場所をゲスト出演したハンチョウから教えてもらったので、鉄骨を近場から設置してカードを獲得しようとする、という戦略で挑みます。


後に登場する富豪おじいさん東郷が弱者救済と自らの真の目的の為に開催していた物であるという点を踏まえてもあまりにも場当たり的なゲーム性で、オープニングゲームとして一切の盛り上がりが無いです。別に死のリスクも負債のリスクも無い、とったもん勝ちなだけのゲームなんですもの。というかカイジに鉄骨渡らせたかっただけだろこれ。


途中、価値観遅れの中年が想像するような、ステレオタイプ全開な、2020年の映画とは思えないような、典型的でいかにもな見た目のメカ好き少年がドローンでカードを獲得しようとするものの、それを塔の下でごちゃついてた他の参加者が投擲で阻止するシーンがありました。それならいっそカードを、カードを狙って落としなさい……。

更に、カイジが獲り損ねたカードを拾った若者が狂喜乱舞するも、最初に触れたものにしかカードのロックは解除できない超技術が内蔵されていて結局カイジが勝利するという謎茶番のオマケつき。スムーズに話進めるの苦手か?


もうちょっとこの冒頭の時点で相当匂い立ってると思います。過去作のキャラ出したり過去のゲームのオマージュをやらせたり、ねっとりしたファンサービスが空回りしているように感じました。

あと"バベルの塔"要素はどこじゃい。まさか塔にまつわるゲームだからってだけでなんかそれっぽい雰囲気が出そうだから、その名を……!?



バベルの塔を主催していた富豪東郷とカイジ、そして別のゲームで勝利し大金では無く情報を選択した謎の女が顔合わせし、沈みゆく日本を救いたいという東郷の思いに感銘を受けたカイジと謎ガールは、東郷に協力する事に。

今回カイジが挑むのは日本の派遣王とか呼ばれてるおじさんでカイジをいじめていたおじさんでもあり、もちろん帝愛とも繋がりのある人間なのでカイジが敵対する理由付けはしっかりしてはいるものの、いかんせんカイジ自身がリスクを追っていない点と、その派遣王と東郷のいがみ合いがそこそこ前にしゃしゃり出てきて、キャラクターの相関性が物語の盛り上げに上手く絡んでこない印象でした。



そんで派遣王のおじさんこと黒崎とカイジたちが対決するゲームが帝愛ランドなる地獄に設置された"最後の審判-人間秤-"という、これまた何故か聖書推しなネーミング。

ルールはお互いの資産を全て純金に変え、ついでに家族から知人から巻き込みに巻き込んで観客にも投げ銭してもらう形で資産を提供してもらい制限時間終了時に最終的な総資産額が多かった方が勝ち!負けた側は全ての財産を失う!といった、豪快なバカゲーの様相で、ちょっとはしゃぎすぎた人望ゲームといった所感。


これ面白いか?面白くなるのか??とルール説明フェイズの時点で相当不安になるこのゲームですが、そこはやはりプロの作る映画ですからなんとかしようと試行錯誤した痕跡が随所に見られます!面白くは無かったです。

自分達の全ての財産を賭けてデュエルするという緊迫感がまるで感じられない上、肝心の主人公カイジがこのメインゲームに関しては殆どノーリスクのにぎやかし参加状態なので、とにかく終始ヒリつかないんですよねこれ。

そういやこの最後の審判中に、東郷の秘書3年やってた若造が実は東郷の愛人の息子で東郷を裏切って~みたいなコントも挟まれてましたが、ただのピンチ盤面作り出し要員にしか見えませんでした。


予想通り中盤戦までカイジ側が圧されてピンチになり、カイジは待ってましたと言わんばかりに作戦始動、ギャンブルに勝つためにギャンブルをするという、ちょっとそれらしさを見せつける展開に。


そんで挑むのが"ドリームジャンプ"という、10本の内1本だけ切れないロープになっているバンジーを飛んで生き残ってくださいと言う運否天賦。

帝愛ランド側が実はボタン操作で八百長可能でしたが、ゲスト出演の遠藤のヒントによりなんとかカイジは死を免れ、無事に金を増やして会場に戻ります。

ドリームジャンプはミニゲーム感が拭えないようなタイミングと扱いなんですが、そんなミニゲーム枠が今作のデスゲーム枠なのも中々こう、制作の混乱が垣間見えますよね。



で、ドリームジャンプの後はなんかもう、時計の針をずらして終了時刻を誤魔化していただの、ドローンを使って金塊を秤に乗せるだの、色々やって黒崎を打ち負かすんですが、正直いうと最後の審判の後半クライマックスが一番つまらなく感じます。

カイジが全て計画通りかのように次々と仕掛けていた計画の種明かしするんですが、全然ピンときませんしスマートさがまるでありません。ドローンがアホみたいにわらわら出てきたところとか、ホントもう、勘弁してほしかった。


そもそも中盤から資産差で負ける事を読んでいたカイジが、ギャンブルで勝って資産を増やす事を前提としていた計画だったと思いますが、序盤で東郷の友人や弟が裏切ったり大したもの持ってこなかったりしたせいでピンチに陥ってるわけですよね、カイジもそれに憤慨してましたよね?計画性があるんだか無いんだか分からないよカイジ君……!


観客も観客で、まるでご都合主義そのもので物語の流れに合わせてどちらかの味方についているとしか思えない挙動をしてますし、最終的に数枚のコインが秤を動かすという一見アツそうなトドメのシーンも、カイジたちのあらゆる戦略の末の出来事では無く、ラッキーなイベントでしか無くて、気持ちが全く乗れないままこのゲーム終わってしまいました。



その後に真のクライマックスとして、預金封鎖を強行しようとする政府サイドの人間との最終ゲームがありました。

ジャンケン型のゲームで、3回に1回は金のチョコボールみたいな金塊を握ってグーを出さなければならないというもの。ちなみにそれで勝つと相手のチョコボールをゲットできるオマケが付きます。関係なさ過ぎて笑っちまったこれ。


勝負は3回、変則ルールであいこでも相手の勝ち、ただし1回でもカイジが勝ったら預金封鎖を解除しろという形式でスタート。

1回2回とカイジは無事に負け越し、その間に必須の金ボール握りも消化、その間に相手が自分の手の内を微細な挙動から読んでいる事を突き止め、最後に挙動を誤魔化し金塊を握らずグーを出して逆転勝利。

このゴールドジャンケンは、視聴中は中々萎えた気持ちで眺めてましたが、時間を置いてよくよく考えてみたら、それなりに心理描写とかも組み込んで上手く描いていたと思います。ただ、視聴中はもう疲労感があってあんまり真面目に観ていませんでした。



そんで預金封鎖を解除してハッピーエンド化と思いきや、ここまで見事にオマケでしか無かったヒロインっぽい謎ガールが遠藤の指示でカイジの報酬取り分を無くす形で、結局また一文無しだよぉエンド。

いやそこはちょっと逆に好きな部分でもあるんですけど、とにかく終盤はもう消化試合感が出ちゃっていて早く終わってほしかったです。


■〆

個人評価:★☆☆☆☆

これならいっそトネガワにもう一度焼き土下座させるくらいのバカやってくれた方が嬉しかった。

ではまた。

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