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OSIRIS/オシリス(2016年/オーストラリア) ネタバレあり感想 100分弱の内容を更に7分割してしまった狂気のSF。


※2020/7/17に『趣味と向き合う日々』に投稿した感想の再掲修正版です。


肉厚ステーキ注文したら薄切りのハム7枚重ねたやつが出てきた感じ。

でも味は美味かった、そんな映画。

 

『OSIRIS/オシリス』

(SCIENCE FICTION VOLUME ONE:The Osiris Child)

オシリス映画

 以下、ネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー


植民惑星で軍事利用目的で密かに開発していた生物兵器が暴走、惑星を管理するリネックス司令官は内密に原子炉をメルトダウンさせて全てを終わらせる事を決意。

これを知った主人公ケインは軍を離れ、首都にいる娘の救出に向かう。

 

 

■感想


ドラマシリーズの総集編映画を観ているような気分になりました。

そこが一番勿体無く感じる部分でしたが、その他の部分はかなり出来の良い力の入ったSF映画だと思います。

翼と胴体が独立して可動する戦闘機の設定とそれを活かしたドッグファイトシーンの目新しさ、異形の怪物ラグドのオールドファッション感全開の動きや造形のギャップが、どこかスターウォーズ新三部作的な、新旧SF要素が混在した面白さみたいなものを醸し出しているように思います。

更に空中に浮かぶ司令船フローティアや、砂漠地帯、崩壊した首都などのロケーション的な面白さも詰め込まれている印象です。

 

そして前述の戦闘機もそうですが、メカニカルな造形物にかなりの拘りを感じます。

刑務所の守衛たちの纏う防具が完全に剣道のそれで、素材を未知の金属に置き換えたようなシンプルなアレンジで押さえているところも逆にそれっぽさを感じて好きです。

 

ハイテクノロジーなメカが多数登場する一方で、砂漠地帯のバーや主人公達が出会う二人組の乗る大型バスなど、旧世界要素が混在している点も、少し昔のSFっぽい雰囲気を感じます。

バーのシーンとか服装から雰囲気までマッドマックス2すぎてリスペクトを感じました。それともオーストラリア映画でのローグの描き方はこうするべきみたいな暗黙の了解があるのでしょうか。



ストーリーそのものについてですが、主人公のケインが娘を救うために首都を目指す、というとてもシンプルな内容です。

 その過程で脱獄囚ながら看護師と身分を騙るサイや、バーで狂乱していたビルとジプ兄妹と出会い、共に首都を目指すという冒険活劇っぽい素養が垣間見れます。

ただそれを7分割して描いてしまった事で、各キャラクターへの思い入れや時系列的な盛り上がりにストップがかかるような感じを物凄く受けてしまいました。

各章ごとに違うロケーション、違う時系列の物語が展開され、第4章辺りでようやくリアルタイムの時系列に接続されていくような感じです。

サイの過去エピソードは2章分も用意されているし、冒頭で登場した悪の司令官ぽかったリネックスさんは黒幕なのに最初の章以降終盤まで顔を一切出しません。しかも顔を出しても原子炉のメルトダウンを神妙な面持ちで見届けるだけという、便宜上の悪役に終始しているような状態。

そして第6章に関しては一瞬で終わります。本当に一瞬でした。分割した意味。

時系列的に一番過去の話になるのですが、それは地球でサイが本当に看護師をやっていたという事と、彼が不幸な事故で家族を亡くした事が明かされるエピソードとなっています。

面白いっちゃ面白いんですが、やっぱり話の作り方が映画よりドラマシリーズに近い気がします。



ケインは皆の協力もあり無事に娘のインディを首都で救出するものの、ビルはラグドと戦闘していた兵士の放ったロケット弾の爆風に巻き込まれ死亡、その後軍シェルターに向かいシェルターを目前にしたところで戦闘機からの攻撃を受け、ケインとジプも死亡、生き残ったサイはインディを連れなんとかシェルターまで到着するもラグドの攻撃を受け瀕死という、まさかの全滅ルートには流石に驚きました。

あと4分程度で原子炉のメルトダウンで惑星全体がヤバいというギリギリの状況下で、軍用シェルターの警備に最後まで必死に邁進する戦闘機パイロットが凄いですよね、命の懸け方がね。

実際ケインも「4分切ったら流石に撤退するだろうし、それでも残ってたらメルトダウンは起こらないって事だ」みたいな感じで鋭く予想を立てていました。

そして戦闘機は戻ってきてしまうという大誤算で主要キャラがほぼ全滅するという大惨事に。どの世界でも軍人は大変ね。



最終章では、ラグドの攻撃を受けた人間もラグド化するというゾンビ映画的エッセンス全開な設定によりラグド化したサイと、すっかり荒んだ表情に様変わりしてしまったインディが一年後にやってきた善良な救出チーム?を襲撃し、その内の一人を脅して宇宙船に乗り込みフローティアを目指すという結末。

いやインディちゃん心壊れすぎじゃない……?

たしかに元人間とは言え化け物のラグドと一年も一緒に過ごしてたら気が狂っても仕方ないかもしれないとは思いますが、それにしても人としての情けや優しさが消滅しきっていて引きました。

 

ケインは軍の仕事で中々家族との時間を作れず、その事を後悔しているといういかにもな設定の男でした。

そして娘であるインディはそんな父が救出に来た際に、父の懺悔を受けてそれを許すという、家族の絆パワーが高まるハートフルな展開を見せてくれました。

なのにその後ケインは死んでしまい、残った顔見知りも化け物になってしまい、シェルター暮らしを一年間したインディ。

そういう状況を考えたらたしかに、あれくらいダークに歪んだ人間性になっても仕方ないのかも。



原題を見るに、シリーズとして続いていく予定なんでしょうか。

というかむしろこの原題すらドラマシリーズっぽさを醸し出していて、もういっそドラマシリーズで再スタートしてほしいまであります。


■〆


個人評価:★★★☆☆

ドラマシリーズで観てみたかった内容の映画でした。

ただそうなると本作で見せつけた凄まじい映像クオリティが発揮できなくなるのかもしれませんが。

 

ストーリーがチャプター毎にブツ切りされ、時系列が前後しつつ主要キャラの視点も都度変わり、しかも100分程度の映画を7分割した結果チャプター毎に割かれた時間は当然短くなってしまい、それが本当に惜しい感じに物語の本来の面白さへ繋がらなくなっている印象です。

ただ一方SF映画らしい映像面でのクオリティはしっかり確保され、メカニカルな造形物からロケーションから設定まで、遠い未来の宇宙開拓時代の物語という実感と面白さが楽しめる素晴らしい作りになっていたと思います。

ではまた。



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