機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(2021年/日本) 感想 そりゃヒットするわ。
逆シャアのカツ枠の子だなんてもう言えないねぇ。
〘機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〙
画像引用元:『閃光のハサウェイ 公式サイト』http://gundam-hathaway.net/
以下、一部にネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
ブライト・ノアの息子ハサウェイがテロ組織マフティという裏の顔を用いて地球連邦政府にちょっかいをかける。
■内容
富野由悠季監督の執筆した同名タイトルの原作小説を映像化した、宇宙世紀ガンダムシリーズの正統続編となる新作映画です。映画版は三部作となる予定らしく、その第一作目となります。
原作小説はCCA(逆襲のシャア)の小説バージョンとなる『ベルトーチカチルドレン』の続編であり、このベルチルの内容が映画版とは異なる展開が多く、これが『閃光のハサウェイ』の映像化は難しいと言われる一因でした。後はシンプルに映像化を嫌ったって話もあります。とにかく映像化されたこと自体がわりと凄い事って話。
今回映像化された『閃光のハサウェイ』は、アニメ映画版のCCAと繋がるように上手く改変されている一方、原作に対するリスペクトを込め狂っての映像化を目指したような内容です。
手の込んだ戦闘シーンや細かい描写の数々、あと個人的には非常に心惹かれた点なんですが個性的なサウンドエフェクトの数々が魅力で、一方で人間ドラマの見せ方、心理描写から各キャラクターの相関の分かりやすさなど、従来のガンダムシリーズに比べてもかなり高いレベルで描かれている映画です。
■感想(ネタバレあり)
海外映画(主にハリウッドムービーだと思います)の作風や構成を参考にして、そこに小説版のエッセンスを落とし込んで制作された、という話があるんですが、直に受ける印象は正にその通りでした。
面白いのが、それはビートシートメソッド的な脚本上での踏襲では無く、ドラマとアクションとビジュアル、3つの描き方のバランスに感じる事が出来て、端的に言えば洒落てんすよ、やたらとしゃれてんのよ。
そんでハサウェイもなんか、もうCCAから12年も経ってるから当然いい大人なわけですけど、それにしても大人び過ぎたような雰囲気が漂い放題で、今作ヒロイン枠のギギちゃんの生着替えにエンカウントしようが旅客機内で偽物テロリストと遭遇しようが動じないし、めっちゃ冷静に場や人を分析できるようになっちゃってるわけですよ。錯乱してチェーン殺したあのハサウェイだぜ!?
『ジョン・ウィック』のジョン・ウィックとか、『イコライザー』のロバート・マッコールとか、『トランスポーター』のフランク・マーティンとか、そっち系の主人公っぽい雰囲気で、原作小説とかGジェネとかで個人的に抱いていたこの時期のハサウェイの印象よりもよっぽどアダルトな感じがします。
そんで一応ライバル枠になるケネス大佐なんですけど、彼は、その、イメージ通りすぎて安心感あります。
必死に上っ面で覆い隠しているような、偽物の余裕みたいな、結局のところ大人でリーダーでナイスガイな自分を演じているような胡散臭さがケネスからは終始漂っています。
一方で指揮官としての能力は本物で、劇中でもダバオ市街戦などの戦闘でその指揮能力を存分に発揮しておられて、良いキャラだなって思います。
ギギは過去最高にギギって感じでした。なんだあの、ギギ感。
キャラクターの描き方が本当に綿密で、ハサウェイ、ケネス、ギギの三者にドラマを絞って描いている事もあり、ストーリーの進行と彼らの関係性の変化変遷がめちゃめちゃ分かりやすかったです。
そんな彼らを取り巻く物語は、地球連邦政府と、それに対し攻撃を繰り返すテロ組織マフティナビーユエリンという対立の中にあります。
原作読んだのだいぶ昔なんで原作でもそうだったのかもう定かじゃないんですが、今回の第一作目ではあくまでハサウェイ=マフティの視点と主張をベースとしたマフティの活動理由や背景、葛藤等が描かれます。
タクシーの運転手に絵空事みたいな理想でテロすんなって論破されてグヌヌってなったりすることもあるハサウェイ。
そして市街戦の街への被害を重点的に描いた戦闘シーンが、マフティが俗に言う"正義の反政府組織"では無い事も印象付けます。
戦闘シーン、特にダバオ市街戦なんかは地球連邦軍お得意の民間被害拡大を気にも留めない系の戦線の拡げ方、荒らし方を見せつけてくれるのでここはどっちも悪者感凄いんですが、やっぱり主役サイドがあくまでテロリストであるという事をしっかり描いたシーンが多いのは印象的でした。
ドンパチやってるモビルスーツの足元で逃げ回る人々を中心に描いているのも特徴的で、どちらかというとモビルスーツ戦そのものでは無く、それが齎す被害にフォーカスして戦闘シーンを作っていたのが面白いです。
バトルでは無く破壊や災害が中心の、パニック映画的な演出というか。
もっと言えばペーネロペーの描写なんかも含めて怪獣映画的な見せ方でもあると思います。
それこそ特に平成ガメラ三部作以来こぞって使われるようになった、人の視点から暴れ回るデカブツのヤバさを強調するように見せるアングルが大々的に採用されているように感じます。
ガンダムシリーズの映像作品内で言えばそういう化け物を描くようなアングルは『重力戦線』とかでは既に多用されてましたし、民間への被害という部分でも『F91』や『NT』のコロニー戦とかでも描写は存在します。なんならファーストの時点でそういう要素はあるんですが、『閃光のハサウェイ』においてはそれを更に一歩進めたようなリアリティがあって魅力的でした。
極端な話、外連味あるバトルシーンの応酬でプラモを買わせようとしていないというか、あくまでも被害や恐怖を描く為の一環としての戦闘シーンに徹底していたようなイメージです。
ほぼ完全に怪獣扱いで描写されていたペーネロペーが、それなりに不気味な新型ガンダムとしてしっかり暴れた後に、主人公ハサウェイの搭乗するクスィーガンダムの前に殆ど手も足も出ず撃墜されます。
その噛ませっぷりに加えてパイロットであるレーン君の「奴も墜ちたはずだ!」的な必死さが合わさって、不気味な化け物MSから最高の愛されキャラに変貌していくの、この映画の一番の見所と言ってもいいです。
■〆
個人評価:★★★★☆
レーン君の活躍は次回にお預けだ!
ちなみに僕は公開三週目とかでようやく観れたので、貰ったフィルムはUCのノーマルスーツ着たミネバ様でした。絶妙!
ではまた。
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