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デザート・ストーム(1995年/アメリカ) 感想 リメイク元と殆ど同じ内容だけど映像表現の進化が楽しい映画。


1943年制作の映画『サハラ戦車隊/Sahara』のリメイク版です。


〘デザート・ストーム/新・サハラ戦車隊〙

(SAHARA)

デザートストームポス

画像引用元:プライムビデオ https://www.amazon.co.jp


以下、一部にネタバレを含む感想記事です。



■ストーリー

砂漠でのドイツ軍の攻撃から生き残った第五戦車部隊のM3中戦車"ルルベル"、これに乗り込む3名の乗組員たちは、西北東への退路を断たれ最も過酷な南へ向かう。

そこで出会ったイギリス軍救護隊や、イタリア兵捕虜を連行するスーダン軍の男、そして迎撃したドイツ戦闘機パイロットなどを連れ、水を確保する為に井戸を目指す。


■内容


リメイク元は1943年というバリバリの第二次世界大戦期に制作された映画であり、かつ米軍が結構しっかり協力して撮影された映画でありながら、意外にもプロパガンダ臭が比較的控えめな、映画らしい映画として作られていました。

その為95年制作のリメイク版である本作は、リメイク元のキャラクターや物語展開などをほぼ踏襲する形を無理なく採る事が出来ていて、且つアクション映画の黄金期を経た事で戦闘シーンの迫力は更に増し、テレビ映画(今でいう配信サービスのオリジナル作品とかの源流みたいなものです)という枠組みでありながら安っぽさを感じないバトルアクションが楽しめます。


ドイツ軍の包囲から逃れるために南へ向かうM3中戦車が、同盟軍や敵の捕虜などを抱え込みながら水を求めて井戸を探すプロットと、同じく水を求めてさまようドイツ軍との戦闘という2つの要素、舞台設定とシチュエーションを綺麗に物語に落とし込んだ好例と言って良いくらい自然に馴染んでいます。

また、原作の空気感も踏襲したことで、例えば1963年の『大脱走』や1970年の『戦略大作戦』のように、戦時下という状況設定を駆使しながら作風としてはそこまでシリアスに寄せず劇展開を重視した方向性で纏めているタイプの映画で、非常に見やすいです。


■感想(ネタバレあり)


ドイツの包囲網から撤退する為に砂漠地帯のみが広がる南方へ向かい、そこで様々な人達と出会いながら水を探し求めM3中戦車で砂漠を旅する内容で、前半はサバイバル要素、後半では同じように水を求めてやってきたドイツ軍との煽り合いと戦闘を中心にした要素がそれぞれ主体となる映画です。


3名の搭乗員から同盟軍や捕虜やらを連れて行った結果12名の大所帯となり水が完全に枯渇、水の確保の為に100キロ以上の行軍を敢行する事になります。

水を求めて砂漠を彷徨うサバイバル展開もそれだけで結構面白いんですが、中盤以降、ドイツ軍500人の大隊が同じく水を求めて近づいて来てからの展開も中々ユーモアに溢れたシーンが多くて好きです。

戦車隊が確保した井戸からも水が出なくなってしまうのですが、それをドイツ軍が知らない事を逆手にとって枯れた井戸を交渉の材料にしたり、喉カラッカラのドイツ偵察兵の目の前で水を無駄使いしているように見せかけて煽ってみたり、やり口がアメリカ的で笑えます。


結局ドイツ軍は攻勢に出て、戦車隊は捕虜を抜いた9名で防衛戦を始める事になってしまうのですが、彼らがお互いに枯れた井戸の奪い合いを行うという状況のシュールさがなんとも虚しいです。

一応ガン軍曹達の思惑としては、ここでドイツ軍を足止めする事で後方エル・アラメインに控える米本隊の再編成の時間稼ぎをしようとしていた訳ですが、殆ど遠回りな自殺に等しい作戦であり、この後の絶望的な展開を予感させます。

史実で実際に42年のエル・アラメインの戦いは連合軍の歴史的大逆転勝利となりました。史実と密接に出来事を繋げつつも、あくまで物語としての面白さを残していて上手いと思います。


リメイク元の展開ではフレンチ―の交渉シーン後、背中を撃たれ彼は死んでしまうのですが、リメイク版では敵将の心臓をナイフで突き刺すという大戦果を挙げていたりします。リメイク版のフレンチ―好き。

一度目の戦闘では死傷者1名のみで乗り切るという『フューリー』顔負けなアメリカ伝統の無双を披露して見せるも、二度目の戦闘で殆どの仲間が死んでしまうというのは中々ショックな展開です。リメイク元でも同様の展開なんですが、90年代のリメイクでもこれを踏襲するのは結構意外でした。


タンブールが脱走しようとしたドイツ軍パイロットの捕虜を顔を砂面に押し付け窒息死させる超衝撃的なシーンも見事にリメイクされていました。リメイク版では、その後ドイツ兵に撃たれ死にそうなタンブールというところまでは同様ですが、彼が片手にドイツ勲章を握りしめながら謎ポーズを決める謎テイストに変更されていたのはちょっと謎ですがそれはそれで印象的。

あとリメイク版だとウェイコが死んでしまうんですよね、ここはちょっと意外でした。



最終的にガン軍曹とベイツのみが生き残り、そこへドイツ軍が三度現れるも、指揮官を失った彼らは武器を投げ捨て井戸水に一直線、更に枯れたはずの井戸からは砲撃の衝撃で水があふれ出るという嘘が誠になってしまうオチ、シンプルに好き。


M3中戦車の名前ルルベルが、ガン軍曹の騎兵隊時代の愛馬の名前であるというエピソードが省略されていたり、それぞれの故郷の話で盛り上がるシーンのタイミングが違ったりなど、本当に細かい変更点はそれなりにあるんですが、基本的にはリメイク元の『サハラ戦車隊』と同一のストーリー進行で描かれていました。

そうなってくると『サハラ戦車隊』を観た事のある人は既視感まみれで退屈しそうに思えるんですが、43年の元映画と95年リメイクである本作の最大の差異は、その間52年分蓄積・進化した映像表現と技術レベルの向上にあります。

カメラ割りやアングル変更、音響とアクションの強化など、映像表現の進化を体感する事が出来ます。これが本当に面白いポイントで、基本構成がリメイク元とほぼ変わらない映画だからこそ楽しめる点だと思うんですよね。視覚や音響以外の要素の殆どが完成していたリメイク元の映画の凄さも再確認できて面白いです。

今リメイクを観た後に元バージョンを観てみてもいいですし逆に制作順に観ても楽しそう、幸い両作品ともアマゾンプライムビデオで配信されてますし。


■〆

個人評価:★★★★☆

リメイク元となったサハラ戦車隊と大枠は変わらず、しかしアクションシーンなどは強化され、かなり面白い戦争映画としてリメイクに成功していると思います。元の映画の出来が良かった点を踏まえても、リメイク版ではリメイク版の見所がありますし、個人的にはかなり楽しめました。

ではまた。

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