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スイス・アーミー・マン(2016年/アメリカ) ネタバレあり感想 設定で遊びまくってるけど中身はとても良い話。

 ※19/11/17に【趣味と向き合う日々】に投稿した感想記事の加筆修正版です。


ダニエル・ラドクリフがこの映画で演じる事になる死体の話を初めて聞かされたとき、どんな気持ちになったのか気になる。


『スイス・アーミー・マン』

(Swiss Army Man)

スイスアーミーマン映画ポス

 

以下、ネタバレを含む感想記事です。

 

■ストーリー


無人島で自殺を図る男ハンクの前に万能死体メニーが流れ着き、ハンクは自殺をとり止めメニーを連れて人里を目指す。

 

 

■感想
 

便利機能を満載した謎の死体役にダニエル・ラドクリフを起用した事そのものが既に面白いこの映画、しかし出オチ映画という訳では無い点が個人的には意外でした。

 メニーの便利機能は、一部を除いてダイジェスト的に使用シーンが挿入されるような形式になっています。おもしろ設定で釣ってはいるものの、本当に観て欲しいのはそこじゃないと言わんばかり。

観始めて暫くは、メニーの正体が一体何なのか気になっていたのに、観終ってからはもうそんなものどうでもよくなってしまう不思議な映画。

 

屁を推進力に海を渡り、勃起した陰茎はコンパスとなり、吐き出される水は飲み水となるメニー。

圧倒的に下品なキャラクターっぽく思えるメニーですが、これらは単に下らなくて笑える要素というだけでは無さそうでした。

メニーはデリカシーが無い、というよりも素直なキャラクターです。

メニーの素直さは、社会生活の中で様々な物事に気を使って生きていたハンクにとっては羨ましく思えるものだったのかも。

ハンクとメニーの関係が面白さのキモって感じします。
ハンクは社会のしがらみに対する疲れの色を見せています。

だからなのか、ハンクは自分の理想する姿や生活をメニーに投影しているようなフシがあります。

 ハンクは旅の途中、様々なガラクタを駆使して街の情景を再現していました。 

メニーの記憶を呼び起こす為、と言ってはいましたが、それらはどう見てもハンクの記憶の情景の再現です。

 

たぶんメニーには、そもそも過去の記憶なんて無いんじゃないかと思うんですよね。

ハンクとメニーが熊に襲撃される後半の山場で、ハンクは「女の事は忘れろ、君には僕がいる」ってメニーに対して叫んでるんですけど、あの言葉は自分に向けた言葉な気がします。

このシーンでメニーは、自分の恋人だと思っていた女性が他人である事を知り、初めてネガティブな感情を味わい、失意の中でバッドトリップ的な哲学モードに突入していました。

自分の事をメニーに重ね合わせ理想の世界をそこに見ていたハンクだからこそ、メニーが現実に直面した時に、それを受け入れるような態度を取ったんだと思います。


サバイバルを通して、ハンクとメニーはお互いに自分というものを見つけて見直していく物語なのかなって思います。

そして最後は殻を破り自分自身をリリースするような、そんな終わり方をしていました。

メニーが屁を推進力に海へと向かっていくラストシーンは、役目を終えて帰るようにも、ハンクから独立して自分を見つけに行くようにも見えます。

 

 

いろんな解釈とか見方ができる映画だと思います。

下品な要素が満載の映画だったのに、観終った後に謎の清涼感に包まれました。 

 

■〆


個人評価:★★★☆☆


僕はハンクとメニーの二人がお互いの存在を通して自分自身を知って殻を破る映画だと思いました。

成長の物語というよりも、あるがままで生きる事の面白さみたいなものを描いているような気がします。

ではまた。


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