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イエスタデイ(2019年/イギリス・アメリカ) 感想 そういう妄想たしかに楽しいよね。


「ああこれが自分の功績だったら!」的な妄想を映画化したような設定だったけど思いの外楽しめるポイント多くて好き!

〘イエスタデイ〙(YESTERDAY)

イエスタデイポス

画像引用元:プライムビデオ https://www.amazon.co.jp/


以下、一部にネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー

世界中で12秒間の停電が起き、その間に事故に遭った売れないストリートミュージシャンの男が回復すると、世界からビートルズの存在と痕跡が消え去っていた。


■内容

世界中でビートルズを知っているのが自分だけだとしたら、という妄想を具現化して物語を作ってみたような映画。

ビートルズの楽曲が物語の重要な役割を担うため、作中では数々の名曲が主人公ジャック・マリク(ヒメーシュ・パテル)のカヴァーという形ですが披露されます。また、重要なキャラクターとしてエドシーラン役をエド・シーラン本人が演じる形で出演しており、彼の楽曲もちょっとだけ聴けます。


主に人間ドラマが描かれる映画で、コメディテイストですしバカバカしく思える設定ではあるんですが、バカ映画ではありません。ただところどころで挟まれる笑いどころは凄く面白いものが多くてそっち目線でも楽しめました。


■感想(ネタバレあり)

「自分だけがビートルズの曲を知っていたら」というシチュエーションを実際に物語として描いてみる、この一点に尽きる映画でした。


そんな世界観なので、主人公ジャックがビートルズの楽曲を自分のものとして再現しようとするんですが、コード進行はともかく歌詞が正確に思い出せず苦悩しまくってて笑いました。たしかに実際に自分がそういう状況に置かれたら歌詞でつまずきそうだなっていう謎のリアリティを醸し出してます。

また、細かいアレンジの面や60年代後半と現代のレコーディング環境、機材の違いなどの影響を地味にしっかり描いている点が個人的に結構見てて面白い点でした。ジャック自身はソロミュージシャンで弾き語りでやってる人なので当然バンド編成のビートルズとはそもそものテイストが違うので、そういった部分もカヴァーに組み込まれています。

例えば"Help!"は黎明期パンクみたいなカヴァーになってたり、"Hey Jude"のタイトルを今風にしたいと無理やり"Hey Dude"に変更させられたり、"ホワイトアルバム"が多様性警察に取り締まられたりと「60年代後半のスーパーバンドであるビートルズ」を誰も知らない要素がちょくちょく楽曲への影響として現れてたりするので結構面白いポイントが多かったです。ヘイデュードは笑う。

他にも最初の方の個人スタジオでのレコーディングで"I saw her standing there"がバンド編成で録られてるんですが、これが絶妙にビートルズを再現しようとして失敗した時の音っぽくなってたり、そういうところへの拘りが随所に散りばめられていて聴いてて楽しいです。


ビートルズの力を使って天才としてエド・シーランに見出されスターダムを駆けあがるジャックですが、その一方で10年以上の付き合いがあるエリーとどんどん距離が遠くなり、手遅れになってから自分の思いに気づいて心グチャグチャになる、という結構ガッツリ目な恋愛人間ドラマが展開されました。

最終的にはビートルズという存在が抹消されたバンドの楽曲を勝手に私物化していた事を大観衆の前で自白し、全ての楽曲をフリーダウンロード化した上で、エリーと逃避行を敢行、無事に結ばれるという形になるんですが、ジャック的には自分の中のモヤモヤを全て清算しきった上でハッピーエンドなんでしょうけど、エリーの、というかジャックと一旦終わった後にエリーと付き合い始めたギャビン青年が流石に不憫すぎますね。

ジャックがビートルズ補正で世に出るきっかけを作ってくれた個人スタジオ持ちのギャビン、エリーもジャックを諦めてギャビンと本当に幸せに新しい人生を歩もうとしていた矢先に、ジャックは大観衆の前でエリーに告白してギャビンからエリーを無理やり奪う訳ですよ。それ目の当たりにしてたギャビンの表情悲しすぎるよ。

そういう恋愛ドラマあるあるの勝ち負け描写が中々ねっとり目につきはしますが、基本的にはサクセスストーリーとして上手くまとまっていて楽しめました。

エド・シーランがガチの天才を目の当たりにして絶望するシーンとかもあったり、感覚的には異世界転生して無双しちゃう系の構造にちょっと似てるのかもしれません。


そういえば後半で、その世界では生きていて船乗りとして生涯を過ごしたジョン・レノンとジャックが会話するシーンがあるんですが、かなり個人的には良いシーンだと思うんですが一方でこの場面のメタ的ヒリヒリ感すごかったです。

絶対いるもんなジョン・レノンを冒涜してる!とか言いだす面倒くさいファン。そういうことじゃないんだけどな。


■〆

個人評価:★★★★☆

設定が設定なので出オチ的にビートルズのいない世界要素が消化された後は、それを食いつぶしながら主人公の葛藤と成功を描くだけの映画かと思いきや、いろんなところに見所があってかなり楽しめる映画でした。

ではまた。


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