ジェラットの連続的意思決定のプロセスを転職エージェントの実務に落とし込んでみる

国家資格キャリアコンサルタントの勉強をしていたとき、「あれ、これって転職エージェントの実務に役立つな」と最初に感じたのはジェラット(Gelatt)の連続的意思決定のプロセスだった。
自分の復習も兼ねて、どんなふうに解釈し、実践したのかここに書き留めたい。

ジェラットの意思決定のプロセスは大きく3つに分かれていて、予測システム、評価システム、決定システムである。
JIL資料だと予期・価値・基準、『キャリアの心理学』(渡辺三枝子著)では予測・価値・基準であるが、個人的にはしっくりくるのは『キャリアカウンセリング』(宮城まり子著)の予測・評価・決定である。
もとの英語はForecasting, Evaluation, Criterionである。

和訳にばらつきがあるのはこれに限らず、キャリアコンサルティングの主要な理論において散見される。キャリアアンカーの8つの分類は和訳の地獄代表格であるがここでは触れない。

1.予測システム

転職エージェントの実務においては求職者が現在どんな選択肢を持っているか、である。
「いま転職活動はどんな感じですか?色んなところに直応募してます?それともエージェントと何社か会っている段階ですか?」
こんな質問で、求職者の予測システムに今どんな選択肢があるかを把握する。
ここでは選択肢の数、偏りやバイアスの有無を見る。明らかに少ないようなら「少ないように見えますが?」どう思っているか聞いてみる。
偏りがありそうなら「A社を受けているのならどうしてその競合とB社とC社は受けていないのですか」価値観を見にいく。
ジェラットの理論では、選択肢それぞれの実現可能性も予測システムに含まれる。
「業界一位の会社に直応募している、でも受からないと思う」とか、「似たようなサービスの会社に応募を検討している、可能性はまあまあ高いと思う」と、いった具合である。

2.評価システム

平たく言うと、その選択肢が実現したところのハッピー度、である。
先程の話であれば「業界一位の会社の直応募が、内定まで行ったらどのくらいハッピーか」とか、「似たようなサービスの会社に内定したらどのくらいハッピーか」である。
ここに、現職をそのまま続けるという選択肢をおいて比較しても良い。
a) 業界一位の会社、内定確率5%、ハッピー度100
b) 類似サービスの会社、内定確率50%、ハッピー度50
c) 現職にとどまる 実現可能性100%、ハッピー度20

3.決定システム

以上のような材料があるときに、どうしますか?
「ちょっとこれでは選択肢が足りない」ならば戻ってデータ収集、予測システムにある選択肢を充実させるという決定をする。
「これならbですねえ」ならば理由を聞いた上で、希望に沿った求人を提案する
どうしてその決定になるのか、必ず聞いておく。求職者の決定システムを知ることが肝要である。

そんなスラスラ答えられるものなのか?

転職活動をちょうど開始したところだと、「いやあまだ開始したばっかりで・・・」となってお互い良い時間にならないので、
過去の意思決定を例に上げる。なぜ現在の会社に入ったか、である。
そのときはどんな選択肢があって(予測システム)、どの選択肢がハッピーになれそうで(評価システム)、どう決定をしたのか(決定システム)。
「今回はどんな感じに転職活動を進めたいと思っていますか?」と聞くと、求職者の転職活動の軸がわかる。

現職及び前職でどのような意思決定が行われたかを振り返ると、この求人、企業が良さそうだなあという仮説を立てやすくなるのである。

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