見出し画像

政治は理想に近づくための手段! 車世栄さんに聞く、政治を楽しむためのはじめの一歩

若者と政治の距離を近づけるための団体「ivote」で活動する車世栄(くるま・せよん)さん。日常生活と地続きのフランクな”政治との接し方”とは? オススメのドラマから好きなパンケーキまで、政治を楽しむ入口についてお話を聞きました。


政治って意外と身近なんだな

──政治に関心を持たれたきっかけは何ですか?

中学、高校と進学するうちにいろんな人と出会うようになって、新しい出会いの度に少しずつ社会や政治に関心を持つようになりました。ある日、近所で議員の街頭演説などを聞いてたら「議員さんに会ってみたい」と思うようになって、地元の選挙事務所にノーアポで突撃したことがあります! それまで政治って、ニュースで見てたりするとすごく離れた存在に感じられたのですが、そのときに会った秘書の方は優しくて、「いつでも相談してね」みたいな感じでした。そういうことがあって、政治って意外と身近なんだな、と思うようになりました。

──そういう経験も踏まえて、いまの「ivote」での活動に至っているんですね。具体的にはどんなことをやられているんですか?

学校に行って主権者教育や政治のことを伝える授業をやったり、国会議員の方を呼んで若者と交流や意見交換の場をつくったり。あとは「ivote Media 」というウェブサイトで若者向けに政治の情報を発信しています。個人としては、2020年7月に行われた都知事選のときに、議員さんと一緒に政策を考えて候補者に意見をもらう、という取り組みを行い、実際に小池百合子さんと宇都宮健児さんにフィードバックをいただきました。つながりがつながりを生んで、活動を続けています。

社会のいろいろな課題や問題をどう解決していくかというと、やっぱり話し合うことが大事なんだと思います。学級会とかでも多数決で決めることもあるのですが、それだと上手くまとまらなかったり、最初のイメージで固まってしまうところがあります。何度も話し合ってお互いのことを知る、というのが必要です。


モヤッとした不安を政治家に言ってみよう

──世栄さんの活動に対して、同世代の人たちはどういう反応を示すのですか?

「(政治が)そんなラフだったんだ」ってよく言われます。「政治ってなんだろう」と聞かれたときに、家の決まりごとと同じだよ、とよく言っていて。お父さんとお母さんと自分とで、ゴミ捨てのルールを決めようってなったとき、そこで多数決を使うのもある意味政治だし、話し合って決めるのも政治。そういう小さなことが、区や県、国っていう単位で行われているのが政治で、そこまでハードルが高いものではない、というのを言っていますね。

──議題がたまたまちがうだけで、話し合って何かを決めるという本質は変わってない。

そうです。ニュースとかを見ていると、政治に関わると変なことをされるんじゃないか、という怖さを感じてしまいがちです。「政治に関わってるの? やばいね」みたいなことを言われたり。あとは興味を持っていても、「結局変わらないじゃん」っていう不信感もあると思います。そういう積み重ねで、参加しても意味ないよねって若者のあいだでなってしまう。「目の前のタピオカのほうが投票より大事でしょ」となってしまう。

たしかに投票をすれば一瞬で変わる、というものではありません。でも、投票以外の政治の参加方法もあるし、むしろ投票で終わっちゃうのも、それはそれで問題です。結果が出た後どうなっていくのか、というところも見なきゃいけない。

なんとなくモヤッとした不安や課題を感じてる人って多いと思うんですけど、なかなかそれが社会に伝わりづらく諦めちゃう。そこを一歩踏み出して、政治家に言ってみる。議員さんと話をしていて生活の不満を伝えると、「こういう制度があるよ」って教えてもらえることがあります。そうすることによって、徐々に政治に関われているんだという実感を持てるんじゃないかなと思っています。


オススメ! 政治が身近になるドラマや映画

──世栄さんはドラマやYouTubeもよくご覧になっているそうですが、政治を身近にするうえで、同世代の友だちにおすすめしたい作品を教えてください。


独裁政権の銀河帝国と、共和主義の自由惑星同盟の対比が面白いです。前者は、独裁だけど物事を早く進められるし、良い人間が独裁をしたら良い社会になるよね、という考え方もできます。一方で民主主義は良いと言われているけど、国民が政治に関心を持っていないと、どんどん堕ちていってしまう。そういう一面的でないところも深堀りしていくと、めちゃくちゃおもしろいです。


ブラックな問題がたくさん出てきますが、政治によってつくられた法律の抜け道を古美門研介が探って解決していくのが、面白いです。いまの日本の問題を法律の面から考えていくと、新しい見え方がするかもしれません。


たくさんの大臣や官僚が出てくるのですが、問題に対して決定が遅いのを、「民主主義だから仕方ない」と言ったのが印象的でした。普段は起こっている出来事や事件の課題にばかり目がいきがちですが、その背景にある疑問やつながりに気づくことのできた映画でした。教科書の中の言葉じゃなくなる、と思いました。


“マイ争点”を議員にリプしよう

──先ほど「議員に伝える」とおっしゃっていましたが、たくさんの議員さんがいらっしゃると思います。誰にどうやって伝えたらいいんですか?

やっぱり党がしっかりしているところは、メールを送るとちゃんと党内に上げてくれます。もちろん都議会と国会を分けて考えなければならないので、例えば公園に関する問題だったらどこが管理しているか確認をしてその団体に問合せるとか。もし分からなければ、「この相談ってどこにぶつけたらいいんですか」と議員さんに相談するのもいいと思います。他にも、政策提言をしている団体がテーマごとにいる場合が多いので、そういう団体に意見を伝えるのも有効です。

ウェブサイトの問合せフォームや、Twitterでリプを送るのもオススメです。「渋谷区のタバコの分煙問題が大変です」といったことをつぶやいたら、区議会議員さんが反応してくれたことがあります。Facebookで気になった人に「よかったら話せませんか?」と友達リクエストと一緒にメッセージを送って、返信がきたこともあります。コロナ禍になってからは、対面よりもzoomでのやりとりが増えましたが、連絡すると返事をもらえますよ。

リプだとなかなか見てもらえない人もいるので、使えるようであればDMでも。以前、国会議員の方が「手書きで実名の手紙が送られてきたら、見ますよ」と言っていました。いたずらだと思われないためにも、名前をしっかり書くのは大事だと思います。若い中高生だから会ってもらえる、というのもあると思うので、所属なども積極的に伝えています。

自分の興味に沿った「マイ争点」というのが誰にもあると思います。音楽だったら不正ダウンロードとか、漫画だったらブラック労働だとか。やっぱり議員さんも街の課題を探してくれているので、いろいろな不満や不安を自分の中で留めてしまわず、外に言っていく、伝えてみることが大事です。


議員さんの日常を知ると親近感が湧きます

──政治の課題や社会の問題は、普段どこから情報を得ていますか?

自分の場合はivoteに所属しているので、情報が入りやすく助かっています。あとは本アカウントと分けたほうが、趣味と混ざらないのでいいです。「いいね」をしたのが友人に見られて、「こんなこと思ってたの?」と言われることもあるので、「いいね」しづらい気持ちにならないためにも、アカウントは分けるのがいいです。YouTubeもオススメです。ひとつ興味を持つと、どんどんつながって他のが見つかってきます。例えば、性教育やジェンダーをラップなどで伝えていてとっつきやすい「シオリーヌ」さんはオススメです。

議員さん一人ひとりを見ていくと、彼らも面白い情報を発信しています。立憲民主党の尾辻かな子さんや自民党の稲田朋美さんは、同性婚に賛成したりジェンダーの問題に言及しています。大田区議員のVtuber・おぎの稔さんは個性的ですし、都議会議員のおじま紘平さんは日常を出してくれるのが好きです。Instagramだと衆議院議員の中曽根康隆さんは、すごくスタイルがいいし、いつもおいしそうなものを食べている笑 国民民主党の伊藤たかえさんは、ママの日常を出していて、子どもがすごくかわいいです。政治家の一般人らしい一面を知ると、親近感が湧いてくると思います。

最初に自分の関心がある問題を、例えば「政治 音楽」といった感じでGoogleで調べてみると、いくつか情報が出てくると思います。そういうところで議員さんの名前を見つけて、フォローしてみましょう。


政治は目的でなく、社会を変える手段!

──ずばり、若者が政治に関心を持たない根本の原因はなんでしょう。

「このままでいい」と感じている人は、問題発見ができてないんじゃないかと思います。とある高校では、都知事選の選挙権を持つ学生の投票率が90%だったそうです。その学校には留学生とかいろいろな人が集まっていて、課題というか、理想と現状のギャップがめちゃくちゃ見えている学校なんだと思いました。理想を低くしてしまったり、現状を把握できないことが原因で問題が立てられない、という問題がよくあります。いろいろな人のいる環境でいろいろなことを知るというのが、問題を認識するために重要なツールなのだと思います。

だからこそ、好きなことをいっぱいやると、どんな問題があるのか、自分のなかで考える習慣がつくのだと思います。

──「政治を好きになりなさい」と言うより、「好きなことを政治でどう解決するか」ということを、考えたほうがいいのかもしれませんね。

政治は目的なのではなく、手段。政治を使って、社会を変えるんです。ふとしたときに、社会問題の自分にとっての当事者性を見つけるんだと思います。そういうマイ争点をつくって、理想に近づけようと努力するのが政治なんだと思います。

いまジェンダーに関心があって、男子校だからかまわりも意識の高い人が多くて、右耳だけにピアスをしている知人もいます。自分が付けているネックレスも、お母さんからもらったレディースのものです。こういう身近なところから取り組んでいけたらいいなと思います。

他の例を挙げると、池袋にある梟書茶房という喫茶店のパンケーキに最近ハマっています。すごくおいしいんです! 一見政治とは関係なさそうなことだけど、そこから労働環境の課題やフェアトレードなど原材料に関する問題も見えてきます。そういうように、いろいろな問題に結びつけていって、このままでいいよって人もいるとは思うんですけど、それよりももっと良いところを目指すことも、重要なのではないでしょうか。


【世栄さんのオススメ政治プレイリスト】

政治が身近になる!? エンタメ作品
インタビューでは紹介しきれなかったオススメ作品を教えていただきました!

・『PSYCHO-PASS サイコパス
どんなシステムで政治を進めていくのか、ということを改めて考えさせられるアニメです!

・『機動戦士ガンダム THE ORIGINシリーズ
国家としての正義や個人としての正義など…一体何が正しいのか?を考えさせられます! また、民衆の政治へのかかわり方なども、ジオンの政治状況などからとても学びになります。

・『レッド・スパロー
スパイ映画。R15なので年齢的にまだという方も多いと思いますが・・・・・・。 国家の正義と個人の境遇など。果たして何を信じて生きていけばいいのか。日常からはかけ離れた映画ではありますが、政治や国へのかかわり方を考えさせられます。

わかりやすいYouTube ch
・『【性教育youtuber】シオリーヌ
・『選挙ドットコムチャンネル
・『Mielkaチャンネル

世栄さんが活動するivoteの発信する政治情報メディア
・『ivote Media』