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「学校総選挙オンライン投票」のススメ。「政党ってどうやって選ぶの?」高校生の不安・ギモンを一挙解決!

「選挙に興味はあるけど、何から学べばいいのかわからない」「候補者をどうやって選べばいいのかわからない」という高校生のために、ch FILESの高校生スタッフがNO YOUTH NO JAPANの代表、能條桃子さんにギモンをぶつけました! これを読んでみんなも「第1回学校総選挙」にぜひ参加して!

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能條桃子さん
慶應義塾大学経済学部4年生。U30世代に向けた政治・社会メディア「NO YOUTH NO JAPAN」の代表。

1.若者と政治について

…能條さんは、若者と政治についてどう考えておられますか?

能條 若い人は「政治に無関心」と言われますが、実際はそうではなくて、無関心に見えちゃうような環境にあるだけだと思うんです。学校で教えてくれないから、触れる機会がなかっただけだったり。政治に無関係な人って絶対にいないわけだから。
だけど社会に変化を起こしていくためには、関心があることを見せて声を上げていくことで、初めて若い人の意見が届く社会ができると思うから、自分たちから政治に近づいて、一人ひとりができることをしていくことが大切なんじゃないかなと思います。

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2.学校総選挙プロジェクトについて

…「学校総選挙プロジェクト」が立ち上がったことを、能條さんはどう感じておられますか?

能條 はじめにお話を聞いた時に、昨年留学していたデンマークのことを思い出しました。デンマークでは“school election”(学校選挙)という仕組みがあって、全国の中学2、3年生が2年に1度、その時の実際の政党に対して模擬投票して、中学生が今の政治をどう見ているかを統計し、新聞の一面にも載せる大きなイベントがあるんです。

すると、今の中学生にはこの政党が人気なんだとか大人に人気の政党がなぜ中学生には人気がないのかという議論が起こって、これからの世代を考えるために有権者にも影響を与え、中学生にとっても自分の投票に意味があるんだなと感じることができるんです。

学生はここで、どういう政党があるのかや、どう選んだらいいのかを学びます。私も中学高校大学と政治に興味はあったけど、自信を持って話せるわけではなかったので、日本でも「学校総選挙プロジェクト」が広まれば、もっと若い人たちが自信を持って政治のことを話したり投票に行くことができるようになるんじゃないかなと思いました。

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3.候補者(政党)はどうやって選べばいいの?

…まず、これは高校生みんなの疑問だと思うんですが、「どうやって人を選んだらいいのか」、選ぶ時の基準を教えていただきたいです。貼り出されたポスターを見ても、みんな同じように見えてしまいます(笑)

能條 投票には絶対的な正解があるわけではありません。正解を示すのが選挙なのではなく、みんなの意思を示すのが選挙。だから、自分の価値観に基づいて、「この人がいい」というのを選べばいいんです。正解を見つけようという思考ではなく、私は「推し」と言っているんですが、自分は「この人を推したい」という人を見つけると選挙って楽しくなるのかなと思います。

…「推し」、いいですね(笑)。推しを見つけるためにはどうしたらいいですか?

能條 たとえばニュースを見ていて、このトピックは気になるなというものってみんなそれぞれあると思うんです。
私の場合なら、ジェンダーの問題とか気候変動のニュース。気候変動で野菜が高くなってきているというニュースを見たら、それはどうにか早く対策してほしいと思うし、ジェンダーの問題であれば、なんでこんなに女性の議員が少ないんだろう? とか、就職活動するにあたって女性は子育てと両立することを求められるけど、同い年の男子の学生はそんなこと考えないんだろうなとか思うから、政党を見る時に、それらの問題に前向きに考えているところを選びます。

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…ちなみに能條さんの「推し」の政党はどこですか?

能條 正直言うと「ない」、というのが私の答えです。この政党だったら100%大丈夫、というのがないから、今この活動をしていると思うんです。だから今のベストを選んでる、という感じですね。
でも、これは日本の政党ではないんですが、「緑の党」(環境責任、個人の自由、多様性、男女同権、持続可能な開発や気候変動対策 に力を入れる政党)というのが世界各国にあって、ヨーロッパでは若い世代の中で人気になっています。また、緑の党ではないですが、デンマークでは21歳の大学生が国会議員になったり22歳の大学生がEU議会議員になっていたりするんです。彼女たちは完全に私の「推し」ですね。

…21歳ですか!? すごい、そんなことあるんですね!

能條 日本では25歳以上でないと立候補できないんですが、デンマークは被選挙権(立候補できる年齢)も18歳からなんです。気候変動や環境問題が盛り上がる中、若い子たちが自分たちの声を届けなきゃということで立候補している動きを見ていると、「同級生が国会議員になれるんだ!」ってすごく勇気づけられるし、その子たちのFacebookには、若い子たちがみんなで意見をまとめて国会で発表しました、とか出ていて、それがすごく楽しそうなんです。


4.実際に政党の選び方を教えてください!(具体的に)

学校総選挙のサイトにある「投票ガイド」には、10代〜20代が気になる12のトピックスを取り上げ、トピックごとに各政党がどういう姿勢を示しているかがまとめられています。
ここでは12の中から7つのトピックスについて能條さんに解説をいただきました。

■高等教育学費無償化

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能條 「高等教育」というのは、「高校」ではなく、大学や短大、専門学校高等専門学校のことで、 どうしてもお金がないという理由で進学ができないという人には学費を免除をしようなど 、免除の程度が各政党で違っています。 例えば、立憲民主党や国民民主党は、全国民に対して引き下げるべきという考えだし、自民党は所得の低い家庭に限る、という考え。どっちの言い分もわかるなぁという部分はあります。

■同性婚の法制化

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能條 これは結構わかりやすく、賛成か反対かに分かれます。反対の意見の中に は、同性カップルだと基本的に子供ができないから、結婚という形を取る必要はないという主張もあります。いまだにそういう考えがあるんだなと思いますよね(笑)。賛成の人たちは、結婚という選択肢が選べて家族として保障されるだけ、別にいいじゃん、という考え方。実際に2019年に台湾でもアジア初で認められていますしね。

■温室効果ガス削減目標

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能條 温室効果ガス削減は、気候変動を加速させるCO2などを減らそうという動きです。今、産業革命(※1)以降だいたい気温が1℃上がってきていると言われていて、2015年にパリ協定でこの上昇を1.5℃以内に抑えようという目標が決まりました。そのためには2030年までにCO2を45%減らさないといけないということで、日本は2013年の水準より26%下げることを目標に定めました。もちろんこれだけでも大変ですが、これに対してもっと下げる必要があるんじゃないかという意見もあり、意見が分かれているところです。日本のCO2排出量は世界の3%ほどを占めています。世界の順位で言うと5番目(※2)。これをどう捉えるかも人それぞれですよね。

※1 産業革命:18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業の変革および経済発展のこと。
※2 CO2排出量の世界ランキング:1位中国、2位アメリカ、3位インド、4位ロシア、5位日本(EDMC/エネルギー・経済統計要覧2020年版)

■原子力発電の再稼働

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能條 3.11で原子力の事故が起き、一旦原発の稼働をすべて止めたのが2011年。その後国内の54基のうち9基を再稼働させているのが現状(2020年8月時点)なのですが、この先どうしていくかで議論が分かれています。必要だから再稼働を進めるべきだという意見もあれば、今これで電気が回っているのだから、このまま減らすべきだという意見もあります。

■憲法9条改正論議

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能條 これもずっと議論されてきた難しい問題ですよね。自民党はホームページを見ればわかるように、憲法改正をトップに挙げています。今の憲法9条では「戦力の不保持」を掲げているので、それでは外から攻撃を受けた時に国民を守れないし、災害が起こると頑張ってくれている自衛隊が「違憲」となって認められないのはおかしいんじゃない? ということから自衛隊の存在をきちんと明記した方がいいという主張。一方で反対派にも様々な主張があるんですが、例えば 、現状でも制度や憲法は機能しているし、自衛隊の存在もこのままで「違憲」には当たらないのではないか、という考えです。

■ネットの誹謗中傷への規制

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能條 今回取り上げた12個のトピックスは、はじめの8つは国会でも議論になっているトピックなんですが、残りの4つはまだ全部の党のマニフェストに出ていない、これからの争点。いまSNSの誹謗中傷は大きな問題になってきていて、規制が必要なんじゃないかという意見が出る一方で、規制をすると例えば権力のある人が自分に都合の悪いことを言われた時にそれを消すことができてしまうことにも繋がるから、表現の自由に反するのではないかという意見もあって。まだそれほど議論にはなっていないけど、自民党だけ「取り組みを強化」という記載があったので取り上げました。

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いぶき(高3) 僕は「高等教育学費無償化」と「温室効果ガス削減目標」が特に気になります。

ゆうか(高3) 大学受験するのに公募推薦と一般受験を受ける場合、公募で受けて受かったら一旦入学金を払っておかないと合格が無効になるとか、無駄やなとか思ったりします。

能條 受験料も高くない?

いぶき 高いですよね。日本の受験料や授業料って世界的に見ても高いんですか?

能條 アメリカではもっと高いって聞くかな。でもデンマークだと授業料が無償な上に、大学生は毎月8万7000円ほど国からお小遣いがもらえるというシステムでした。国によって考え方もいろいろです。

ただ、政党を選ぶ話で言うと、どこの選挙区にもすべての政党が立候補しているとは限らないんです。例えば何度も当選していて人気もある有名候補がいつも出馬する選挙区では、その他の政党の候補はこの選挙区を避けて、他の選挙区から出るんです。そういう場合は、政党だけでは選べないので、「与党」(自民党と公明党)か「野党」(それ以外の政党)どちらにするか、という視点で考えるのもひとつですね。

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5.投票する/しない で何が変わるの?

政治家は投票してくれる人のために政治を動かすので、それではどうしても高齢者の声の方が大きくなってしまう。私たちはこれから結婚する世代だけど、すでに結婚している人たちにとっては、結婚する時の制度なんてどうでもいいと思うだろうし、世代によって社会から受け取りたいものは違うから、自分たち世代の声を上げるために、投票には行くべきだなと思います。

3年ほど前にインターンで選挙のお手伝いをしたことがあるんですが、候補者も周りの支援者も、選挙期間の2週間、めちゃくちゃ頑張っているんです。もちろん2週間の前からなんですけど。毎日20時間くらい、1票を取るために働いていて。仕事をやめて選挙に挑戦している人たちもたくさんいて、それほど自分が国会に行って社会を良くするためにやりたいことがあるんだという熱意を感じました。その時に、自分の1票は、きちんと入れにいった方がいいんだなぁと実感しました。

…能條さんは自分で立候補しようと思われたことはないんですか?

能條 日本では被選挙権が25歳からなので、まだ真剣に考えたことはないんですが、デンマークの友だちに「日本の政治のこういうところが嫌なんだよね」という話をしていたら、その友だちにも「じゃああなたが立候補すればいいじゃない」と言われました(笑)。今は考えてはいないですが、3年後はわからないですね。でも政治家の朝って早くて、5時起きとかなので、朝が苦手な私にできるかなっていう不安もあります(笑)

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6.留学先のデンマークで感じたことを教えてください

大学では、経済学部で社会の仕組みを学びました。「社会は誰が作っているんだろう?」とずっと自分の中でモヤモヤしていたことが一気に腑に落ちた感じで、そこから社会の変だと思うことを解決していきたいなと思うようになったんです。そこで大学3年生の最後に学校を休学して、デンマークに半年留学して、民主主義を勉強しました。デンマークの人に「社会は誰が作っていると思う?」と聞けば、「私たちじゃない?」って答えるだろうなと思うんです。それを感じた時に、だから私は日本の現状に違和感を覚えてきたんだな、というのがハッキリ見えて…。

日本でも一人ひとりが政治のことを知って話せるようになることが大事だなと思い、「NO YOUTH NO JAPAN」を始めました。まだデンマークに留学中の昨年(2019年)の7月です。やり始めたら、意外に同じ思いでいる同世代がいるんだなということがわかりました。インスタのアカウントのフォロワーが0人から2週間で万5000人くらいに一気に増えて…これは 賛同してくれた人たちがインスタでそれぞれシェアして広めてくれたおかげです。


7.政治を身近に感じるおすすめの本はありますか?

能條 原田マハさんの「総理の夫」(※3)は大好きです。日本で初めて女性の総理大臣が誕生し、女性総理の奮闘が旦那さん目線で書かれている小説なんですが、とても勇気づけられて、政治の世界は男の人が多いけど、いつか日本でもこういう光景が見られたらいいなという希望が見える本です。


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原田マハ/総理の夫(実業之日本社)
※3 田中圭さんと中谷美紀さんW主演で映画化も決定。2021年秋公開予定。

原田マハさんは、「本日は、お日柄もよく」という本も好きで、こちらは若い人たちが政治の世界に入っていくというお仕事系のお話なんですが、選挙演説のスピーチの裏側なども描かれていて、出てくる言葉が最高なんです。さっきも話したように、本当に熱い思いを持った候補者たちがいるんです! それがそのままこの本の中に出ています。

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原田マハ/本日は、お日柄もよく(徳間文庫)


8.能條さんが目指す社会へのアクションとは?

能條 私は“Make a difference.”という言葉が好きなんです。日本の政治を変えなきゃいけないと考えると、自分にはできないなと思ってしまうけど、小さな違いを作り続けていくことならできるなと思うから。これまで政治のことが勉強できるアカウントがないなと思ったから、「NO YOUTH NO JAPAN」を作ったし、国会議員と普通にインスタで話す機会があればいいのにと思ったから、11月から政治家とインスタライブをしながらその思いを紹介していくことにしました。私たちがやっていなければ誰もしていなかったようなことを1つずつ増やしていきたいなと思っています。あとは世間の常識などにとらわれず、自分の問題意識に真っ直ぐにアプローチできる人でありたいなと思います。

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「学校総選挙」の第1回投票のテーマはこちら。
みんなも「投票ガイド」を見ながら考えて投票してみよう!

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10/31(土)が投票最終日!
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