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【前編】性の問題を"自分ごと化"して考えてみよう― 『どんな性のあり方でも暮らしやすい社会のための作戦会議』

学校総選挙が1月19日に開催した「どんな性のあり方でも暮らしやすい社会のための作戦会議」。ゲストに一般社団法人fair代表理事・松岡宗嗣さんをお迎えして、学校総選挙が行ったアンケートの結果を踏まえ、約50名のメンバーと共に話し合いました。

【前編】では、アンケート回答の結果について、松岡さんにコメントをいただきました。


ゲスト:松岡宗嗣さんご紹介

吉田(学校総選挙) 今日のゲストは、一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんです。松岡さん、よろしくお願いします。

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松岡宗嗣(まつおか そうし)/一般社団法人fair 代表理事
1994年愛知県名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。政策や法制度を中心とした性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人fair代表理事。ゲイであることをオープンにしながら、HuffPostや現代ビジネス、Yahoo!ニュース、文春オンライン等で多様なジェンダー・セクシュアリティに関する記事を執筆。教育機関や企業、自治体等での研修・講演実績多数。

松岡 よろしくお願いします。私自身も性的マイノリティの当事者の一人で、「ゲイ」に該当します。今20代後半なので皆さんとも近い年齢かなと思います。普段はYahoo!ニュースや現代ビジネス、ハフポストなどのメディアで性的マイノリティに関する記事を書いたり、SNSで多様なジェンダーやセクシュアリティに関して情報を発信したりしています。今日はよろしくお願いいたします。


1.LGBTQにまつわる調査結果と松岡さんの見解

吉田 まずは学校総選挙が事前に行った調査結果についてお話いただきたいと思います。
1つ目の回答結果はこちら。

◆普段、LGBTQの人が周囲にいる前提で発言・行動していますか?

イベント投影用グラフ1

吉田 普段から、「LGBTQ当事者が周囲にいるかもしれない」という前提で発言・行動しているという人は8%という結果でした。一方で、「周囲に当事者がいたら発言に気を付けるけど、いない場合は特に気にしていない」という声も寄せられています。
この結果について、松岡さんはどう思われますか?

松岡 他の調査でも同じような結果が出ていて、例えば厚生労働省が委託実施した調査では、世の中に性的マイノリティの人がいるということは知っているのですが、自分の職場にいると思うかと聞くと、7割ほどの人が「いないと思う」「わからない」と回答しているんです。

実際、性的マイノリティの人の中で、職場で誰か一人にでも自分が性的マイノリティであることをカミングアウトしている人の割合は2割に満たないんです。誰しも隣にいるかもしれないのですが、見えていないんですよね。なので、この結果にはあまり驚きませんでした。

性の多様性についてポジティブに捉えているよ、という人はぜひ可視化していって欲しいなと思っているので、今日はその方法について、行動することの大切さについてお話できればと思っています。

◆個人でできる発言・行動をしたいと思いますか?

イベント投影用グラフ2

吉田 続いて、「LGBTQ当事者が暮らしやすい社会に向けて、個人でできる発言や行動をしたいと思いますか?」という質問では、56%の方が、「そう思う」と答えていました。
一方で、「当事者の方を支援する“アライ(=ALLY)”の活動に参加したことはありますか?」の問いでは、「参加したことがある」が5%にとどまりました。
このギャップについて、松岡さんはどう思われますか?

松岡 これについても類似する調査と同じ傾向が出ていて、基本的に差別や偏見が良くないよね、ということはほとんどの方が思っているのですが、具体的に自分に何ができるか、というところは身近に当事者の人がいないとなかなか想像がつかないことも多いと思います。ステップは小さいものから大きいものまでいろいろあるので、そこは「知る」ことが行動に繋がるのではないかと思っています。

ただ、こうした性的マイノリティに関する差別や偏見をなくすために行動していきたいと思ってくださることはとても嬉しいのですが、一つ気をつけて欲しいなと思うのは、“可哀想な人たちを助けてあげなきゃ”という気持ちで動いてしまうことは、むしろ自分自身の中にある差別意識に気づいていないため、反発を招くということもあります。マイノリティを弱い立場に追いやってしまっているのは「誰」の責任なのか。「男らしさ」とか「女らしさ」とか、世の中にある「普通」や「当たり前」とされることって、マイノリティだけが困るわけではなく、多数派の方も困ることはありますよね。だからこの性の問題は自分も当事者なのだという意識で参加してもらえると行動の仕方も変わってくるのかなと思います。

今日は、『自分ごと化』というのもキーワードの一つにしておいてください。


2.参加者から松岡宗嗣さんへ質問(1)

吉田 それでは、ここからは松岡さんに、今日参加いただいている皆さんからの質問にお答えいただきたいと思います。


Q.LGBTQの方が生きやすくなるために、周囲は何に気を付ければいい?

古本屋の古書さん LGBTQの話を聞くのってネットばかりが多いような気がしていて。それって実生活ではまだLGBTQの方が生きにくいということなのかなと思うところがあります。ただ、もし自分が友だちにカミングアウトをされたとして、それを受け入れられるのかな、というところもまだわからずにいます。どういうところに気をつけていけば、LGBTQの方が社会や学校のクラスで生きやすいようになるのか教えていただきたいです。

松岡 10代の性的マイノリティのうち、約半数が学校の中でいじめ被害を受けた経験があるという調査もあります。「変だ」とか「気持ち悪い」と言われて学校や会社で生きづらい思いをしている現実を知ることが大事だと思います。ただ、一方でカミングアウトを受けた側が『自分は受け入れられるのかな』といった不安の声も少なくなくて、その背景には、わざわざ相手を傷つけたいという人はいないと思うのですが、うまく答えられるかな、対応できるかなと不安に思っているのかなと思うんです。

その時には、相手を「LGBTQの人」のように漠然と捉えるのではなく、あくまで友だちとして、一人の個人としてコミュニケーションを取るならどうすればいいだろうと考えてもらえたらいいのかなと思います。一方で、その時に、性的マイノリティ特有の困りごとがあるかもしれない、ということを頭の片隅に置いて欲しいなと思います。

最初カミングアウトを受けた時にドキッとしたりびっくりしたりする感情は、しょうがないことだと思います。その後にその人のセクシュアリティを否定したり、「気持ち悪い」とか「普通じゃないよ」と言ってしまうことは問題のある発言になりますが、心の中で驚くことをとがめる必要はないと思います。その自分の感情も全部抱きとめて、どうすればその人ともっと良い付き合い方ができるかなと一対一のコミュニケーションを考えていってもらえたら嬉しいです。


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Q. LGBTQ当事者ではない人がイベントなどに参加することをどう思っているの?

あゆさん LGBTQの当事者ではない人が、こういったイベントや話し合いに参加したり、何か声を上げたりすることに対して、当事者の方はどう感じているのかが気になります。教えてください。

松岡 まず大前提として、性的マイノリティの当事者ではないけれどもサポートをする、一緒に声を上げるというアライの行動は、すごく大事なことだと思います。マイノリティだけが声を上げてもなかなか社会は変わっていかないですから。ただ、「LGBTQ」とひと言で言っても、考え方は人によってさまざまで、例えば、職場で誰にもカミングアウトはしていないけど”うまく”生きのびてきたといった人で、突然LGBTQに光を当てられることに対して「やめて欲しい」と思う人もいるかもしれません。

性的マイノリティの中でも一枚岩ではないのだ、ということをまず知っておいて欲しいなと思います。その上で、目的がどこにあるかを考えることが大事だと思うので、性的マイノリティの人が生きやすくなる社会ってどういう社会かと言うと、どんな性のあり方の人でも、平等に扱われて、いじめられたりせず安全に生きることができて、自分らしく振る舞える社会にするにはどういう制度や教育が必要なのだろう、周りがどういう意識だったらいいんだろう、と目的を持って行動してくれる人が増えていくと嬉しいなと思っています。


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いかがでしたか? 記事の後編では、どんな性のあり方でも暮らしやすい社会に向けた具体的なアクションについて、参加メンバー全員で行った作戦会議の様子をお届けします。