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イノベーションとデザイン

前回のnote(持続的イノベーションと破壊的イノベーション)では、
「持続的イノベーション」による過度な付加価値変調の開発競争によって生活者はモノの価値を再考する様になり、その後ローエンド型や新市場形成型の破壊的イノベーションが起こった。という事について綴りましたが、今回のnoteでは、これらのイノベーションの背景には考え方の変革が必要とされていたと言う趣旨で綴ってみます。

そもそも、付加価値偏重型の開発競争の背景には、市場シェアの奪い合いが大きく関わっており、そもそも誰が買ってくれるのか? なぜ買ってくれるのか?というニーズを無視した企画開発が横行していたように記憶しています。

特にITバブル期の初期には、プリミティブな機能を提供する商品が生まれてはものすごい開発スピードで進化が進みました。
そのスピードに、市場分析がついて行けなかったのかもしれません。(としておきます。忖度表現です、汗...)

考え方の変革とフォーマット化

ともあれ、従来の商品企画の方法は改善を余儀なくされることになりました。この様な市場変化による改善が日本よりも早く進んだ(気がついたと表現した方が正しいかもしれません)アメリカでは、既にIDEOというプロダクトデザインファームがコンセプトメイクを手掛ける中で実戦投入してきたプロセスを元に、「デザイン思考」と呼ばれる考え方のフォーマット化が進みました。(米IDEO Tim Brown氏が広めたとされる)

この考え方は、一般的に「デザイナーが考えるような自由な発想方法でビジネスも柔軟に考えよう」と言われるものですが、より重要な点は課題を解決をすることと同じように課題そのものを見直すことが必要だと言うものです。

Tim氏は、実際に人に寄り添うフィールド調査を通して、当初 課題だと考えられていた事よりも本質的な課題を発見することがあると語っています。

これは、以前の企業の都合が優先された企画から「人に寄り添う」というヒューマンセンタードデザイン(人間中心設計)に切り替えるためのフォーマットであると言えます。

具体的には、以下のプロセスを繰り返すことで有益な製品やサービスを生み出すことが可能というものです。

1.観察、共感する:対象者を正しく知りインサイトを得る
2.問題を定義する:対象も気づいていない、解決すべき課題を特定する
3.アイディア創出:問題解決のためのアイディアを量産する
4.プロトタイピング:アイディアをカタチに置き換え新たな気付きを得る
5.検証:デザインが目的にかなっているか評価する

本質的には、人を見てインサイトを得ることとして旧来のマーケティングにおける活動と大きくは変わらないのですが、マーケティングはそもそも保有リソースを最大限に活用し市場で勝つためのもので、片やデザイン思考は、そもそも停滞化している市場の中でイノベーションを起こさんとしたものであるため、全く異なるアプローチであると言えます。

更に、マーケティングはビジネスの効率を重視し失敗を回避するという側面を持った取り組であることに対し、デザイン思考では効率よりもイノベーションを起こすことを優先するため、成功確率が低い活動と言えます。その為に旧来のマーケティング活動を行ってきた企画者や経営者にとってデザインシンキングの結果を実行に移すことは前例がないことを行うわけですからとても勇気を必要とする取り組みであると言えます。

Tim氏は経営者にとって今もっとも必要なことは「クリエイティブコンフィデンス(直訳:クリエイティブを信用しよう)」であるとしています。

イノベーションを起こさなければ、先がないという市場環境では、リスクに対する考え方を変えなければならないということでしょう。


サービスデザイン

ここで少しサービスデザインについても触れておきましょう。先のデザイン思考は、本質的な課題を発見しその解決策を見つける事でイノベーションを創出しようとする取り組みですが、やや「財(モノ)」よりであることに対しサービスデザインは、「財」と「サービス」の双方をビジネス視点で包括しようとするもので、そのサービスを提供する側のマネジメントにも着目しなければならないという点が「財」よりの人間中心設計と異なります。

もう少しざっくり言い換えると、クリエイティブ系のコンサルが進めるデザイン思考に対して、伝統的なコンサル会社がデザイン思考の拡張版としてクリエイティブな思考によって得られた解決策を基にロジカルな思考でビジネス全体を最適化しようとする取り組みと言えます。


サービスデザイン と サービスのデザインは違う?

サービスデザインという名前からよくサービスをデザインするんですか?という質問を受けることがあります。初めて聞いた方には、言葉遊びっぽい感じに聞こえるかもしれませんが、折角なので違いを説明してみましょう。


まずサービスをデザインするということは、

カスタマージャーニー(顧客の行動、思考、感情を左右するプロセス)を形成するタッチポイントを考えることであり、その対象は「ユーザーエクスペリエンス」にあります。

イメージとしては、コンサートでアーティストをどんな衣装で飾れば良いのか? とか、どんな曲で構成すれば良いのか? など直接生活者が触れるサービスについて顧客満足度を高める為に行う工夫だと思ってください。


反対にサービスデザイン

組織が目的を実行するための最適なフォーメーションやオペレーションを考えることでありその対象はサービスを提供する「従事者のエクスペリエンス」までおよびます。

コンサートで言うなら、アーティストのパフォーマンスが良くても、照明や、音声などバックヤードのスタッフが望ましい働きをしなければ、最終的に残念な結果に繋がる ということまでもを課題の範囲としていることがサービスをデザインするという事との大きな違いとなります。


変化する「デザインで解決すべき問題」

昔からデザインという活動は当事者が意識していたかどうかはさておき、人の営みにおける問題を発見し解決することだと言えます。
石器時代から?人は道具を必要としてきました。そしてその道具は人の手の延長として進化を繰り返した後、徐々に身体を拡張するまでに至りました。

そもそも機能的な問題に起因する不便さは、その解決策も明確にしやすく、その上、積み重ねによる更なる進化が期待できました。

道具の他、移動することや住まうこと等の多くはその機能的な問題を解決するためにデザインされてきましたが、その問題がほぼ解決されてしまった現在、次は感情にまつわる解決策を必要とする時代になっていると言えるでしょう。

以前のnote(言語化しづらい情緒的な表現)でも綴っていますが、人は他人と感情を共有するため体系的に言語化することに慣れていません。その為に人が抱く感情の周辺に存在する問題は因果関係が整理されていないことが常であるため、そもそもの知覚されている表層的な問題が本質的なのかどうかも定かではないわけです。

そのような理由から人をじっくりと観察し感情的な側面から課題そのものを見いだす必要が出てきたのだろうと考えられます。

もしあなたがデザイン思考やサービスデザインに参加する事になった時は、感情の周辺に存在する問題は因果関係が整理されていないということを意識しそこから課題そのものを見いだす取り組みをされるとイノベーションの入り口にたどり着けると思います。

最後まで読んで頂きありがとうございます。≦(._.)≧
引き続き商品企画のビギナーさん向けに綴ってゆきますので楽しみにして頂ければ幸いです。

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デザインプロデューサーをしています。 ブランディング・マーケティング・デザインをサポートする会社:株式会社アイディーネットの代表  www.idnet21.com
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