股関節前面の症状について考える。
この記事は、股関節前面の症状(訴え)に対する捉え方と、その評価方法について記載しています。
股関節前面の症状のと捉え方
股関節前面の症状について、明らかな器質的疾患や障害からのものとそうでない
ものがある。
鼠径部周囲にかかるストレスについて
鼠径部にかかる負担を考えた際に、①体幹〜下肢の可動性の低下 ②安定性の低下 ③協調性の低下*2が股関節周囲にかかる負担を増大させる可能性がある。
①体幹〜下肢の可動性低下について
特に股関節の可動域を評価する時、背臥位や四つ這姿勢で体幹と下肢の連動性を
評価していく。
②安定性の低下について
評価方法は多岐に渡るが、a.前額面 b.矢状面 c.水平面での評価を入れることが望ましいと考えられる。
③協調性の低下について
安定性の評価と似ているが、「動作を複合的に実施させる」ことで、動きの中での協調性が図れているかを評価する。
イメージは、「何かをしながら、他の動きを同時に行う」という感じである。
また、別の見方として、体の分節(パーツ)ごとに課題を設定し課題が実施できているかを評価するという捉え方もできる。
体幹を固定で、四肢の自由な動作形成
こんなイメージである。
*2 Spotsmedicine No157,17-18(2014)
股関節前面に症状を出す誘因について
股関節前面の症状を訴える場合、以下の誘因が考えられる。*3
症状の捉え方のポイントとして、これら誘因の関連性について評価で整理をしていくことが重要だと言える。
*3 二瓶 伊浩,仁賀 定雄:Groin pain に対する pelvic mobility テストの臨床的有用性,日本アスレティックトレーニング学会誌 第 7 巻 第 2 号,220(2022)
①股関節の可動性
股関節は3方向への運動軸を持った関節であり、それぞれの方向に対して
参考可動域が保たれているか評価する。
(のちに紹介する「④」股関節外旋筋のタイトネスにも通ずる)
個人的な見解であるが、股関節屈筋群の過剰な緊張があることで、股関節の屈曲
動作における、腸骨の後傾運動が形成されにくくなる可能性があると考えている。
また、股関節伸筋群や外旋筋群に過緊張があると、Oblique TranslateMechanismが働き、股関節前面の症状を誘発するのではないかと考えている。
②仙腸関節の可動性
仙腸関節のおいて、腸骨に対して仙骨が前傾する動きをニューテーションと呼び、腸骨に対して仙骨が後傾する動きをカウンターニューテーションと呼んでいる。
③ハムストリングスのタイトネス
ハムストリングスを構成する大腿二頭筋は近位で、仙結節靭帯付近に付着することから、間接的または直接的に緊張状態の影響を受けるとされている。*4
よって、ハムストリングス(特に大腿二頭筋)に過緊張が生じている場合、少なからず、仙結節靭帯の緊張に影響を与えると考えられる。
さらに、仙結節靭帯の一部は、長後仙腸靭帯と連結していることから、仙骨の
カウンターニューテーションを制限する可能性がある。
*4 Daian Lee:骨盤帯 臨床の専門的技能とリサーチの統合 原著4版,MDP,19-22(2013)
④股関節外旋筋のタイトネス
股関節外旋筋に過度な緊張がある場合、前述したOblique Translation Mechanismが生じたり、腸骨後傾動作における動作不良を引き起こす可能性がある。
これは、腸骨の水平面での動き(インフレアとアウトフレア)に起因している。
本来、骨盤後傾の際、腸骨は後傾とインフレアを同時に引き起こすとされている。
仮に、外旋筋に過度な緊張がある場合は、腸骨のアウトフレアが強調される為
結果として骨盤後傾の制限因子となる可能性がある。
⑤コアマッスルの機能
コアマッスルのインナーマッスルとアウターマッスルの協調性に不全があると
骨盤後傾動きに支障をきたす可能性がある。
▷インナーマッスルの機能不全がアウターマッスルの過緊張を引き起こし結果として骨盤前傾位保持となる可能性がある。
評価手順とその順序
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