ハムストリングス損傷につい考える。
今回、ハムストリングス損傷についてまとめてみました。
去年の秋ごろに自身がハムストリングス 損傷を患い、アスレティックトレーナー的には絶好のチャンス!だと思い経過を観察し始めました。
リコンディショニングが功を奏し、再受傷をする事なくアスレティックトレーナーとして業務に就く事ができています。
肉離れ=圧迫さえしておけばなんとかなる。
→なんとかなるかもだけど・・・・。
痛みがなくなれば復帰
→できるかもしれないけれど・・・・。
痛みが出る前にコントロールできるので復帰します。
→と言いますがね・・・。
スポーツ現場で聞こえてきそうなフレーズがこんなところでしょうか。
実際、再受傷と復帰は紙一重なところにあると実感しています。
これは、自身の経験と、普段の選手対応で感じている部分です。
選手の大丈夫(主観的情報)も大事だけれど・・・・。
それだけで『GO』させる事が正解なのだろうか。
そんなことを常々考えます。
そこで、重要になって行くるのが他者の評価(客観的情報)になると考えます。
実際のところどうなの?
といった部分をクリアにする。
この部分を主観的情報に付加し評価(スクリーニング)する事で症状の全体像が見えてくると思います。
では。
何をどう評価していくのか。
今回はその部分を記事にしました。
ハムストリングスについて
ハムストリングス を構成する筋について
ハムストリングス は大腿後面に位置する筋肉で、多関節筋の大腿二頭筋長頭・半腱様筋・半膜様筋と単関節筋の大腿二頭筋短頭から構成されている。
大腿二頭筋長頭 BF long
起始:坐骨結節・仙結節靭帯(半腱様筋の起始と合体)
停止:腓骨頭
神経支配:腓骨神経L5-S2
大腿二頭筋短頭 BF short
起始:大腿骨粗線:粗線中央1/3の外側唇
停止:腓骨頭
神経支配:総腓骨神経L5-S2
半腱様筋 SM
起始:坐骨結節・仙結節靭帯(大腿二頭筋長頭の起始と合体)
停止:脛骨粗面内側に鵞足となり付着(薄筋・縫工筋と合体し鵞足部を形成)
神経支配:総腓骨神経L5-S2
半膜様筋 ST
起始:坐骨結節
停止:脛骨内側顆・斜膝窩靭帯・膝窩筋(筋膜)
神経支配:脛骨神経L5-S2
解剖学的特徴について
①半腱様筋と大腿二頭筋長頭は坐骨結節部で合体し一つの塊となり付着する。
また、両筋は大腿後面の近位1/3付近より共同腱を形成する。
②ハムストリングスを構成する筋のうち、大腿二頭筋長頭と半膜様筋が半羽状筋の構造を持ち、大腿二頭筋短頭と半腱様筋が紡錘状筋の構造を持つ。
③半膜様筋は、坐骨結節付着のすぐ手前で、ねじれ構図を無し、坐骨へ付着している。(このねじれが、伸張ストレスに対しトラブルを起こしやすいとされている。)
運動学的特徴について
①共同腱を形成ているBF longとSTについて、BF Longは大腿に対する下腿の外旋作用を。STについては、大腿に対する下腿の内旋作用を持つ。
このことから、回旋ストレスが両者間でトラブルを惹起しやすい。
②STやSMは膝関節屈曲60度より90度付近で最も筋力発揮をするのに対して、BF longは膝関節60度付近で最も筋力発揮を起こすとされている。*1
③「②」に加え、膝の屈曲角度が増すにつれて、ST>SMと筋力発揮の程度に変化が怒るという報告もある。*2
④BF longは二関節筋で、股関節・膝関節に作用するが、特定の関節を機能的に動かすという機能的役割はないとしている。とって、一つの運動の中でBF long全体が均一に活動していると考えられる。*3
*1 Onishi H, Yagi R, Oyama M, Akasaka K, Ihashi K, Handa Y:EMG angle relationship of the hamstring muscles during maximum knee flexion:J electrimyogr Kinesiol12:399-406.2002
*2 Makihara y,Nishono A, Fukubayashi T, Kanamori A:Derease of knrr flexion torque in patients with ACL reconstruction:combined abnalysis of the architecture and function of the knee flexor muscles.knee sure sports Traumatol arthrosc12:310-317.2006
*3 Kohei Watanabe:走運動時におけるハムストリングスの活動特性の部位差〜肉離れ発症メカニズム解明へのあたらなアプローチ〜.デサントスポーツ科学:vol.36. p142-143
発生の疫学
肉離れの受傷機転として①走動作中に発生するもの②ストレッチ中に発生するものに区分される。
また、両者のパターンの発生頻度として、High speed typeの発生が圧倒的に高いと言われている。また、この損傷のパターンは重症化しないものの再発しやすいという特徴を持っている。
*損傷部位についてはBF longのトラブルが多いとされている。*1
*その割合は、BF Longで全体の85%~94%と記載があったり*1、
BF lonG/ST/SMで69%/18%/13%と報告している文献がある。*2
ハムストリングス損傷を考えた時、膝関節と股関節の両関節に作用することから、股関節の動作に共同で働く大殿筋の作用を評価しておくことが重要である。*3
また、既往歴のある選手は、膝窩角が既往のない選手に比べ高いことが報告されている。*3
この結果より、外傷発生の因果関係は断定されていないが、既往歴のある選手ほど、評価の中で膝窩角の左右差が残存していないかを評価て掴んでおく必要性があると言える。
*1 Askling CM,et at all:Br Sports Med,48(7):532-9,2014
*2 Woodley S:Hamstrings strains:Where do they occur?:NZ journal of physiotherapy:32.22-28.2004
*3 徳武 岳ら:High speed running typeのハムストリングス 肉離れの既往歴と股関節周囲筋群の機能および形態の関連:日本臨床スポーツ医学会誌:Vol.25 No.3.2017.408-9
損傷程度の把握とタイプ分け
タイプ(重症度)分けについて
MRIを用いたタイプ分け(奥脇分類)が良く使用される。その他にPSLRを用いた分類(日本整形外科学会)の分類がある。
スポーツ現場で用いる評価方法とその
スポーツ現場での対応として、主に①圧痛(痛み)②柔軟性③筋力発揮の状態を確認することで、おおよその状況を把握していきます。
圧痛
Finger SignとPalm Signで状況を把握していきます。
Finger Sign(指で症状を自覚している部分を指させる:示せる)がある場合、
そのエリアに何かしらのトラブルがある可能性が高い。
Palm Sign(症状を自覚しているエリアを示せる)がある場合、そのエリアに何かしらのトラブルがある可能性が高いとされている。*
スポーツ現場にて、Finger Signが出た場合、あまり軽視できないことが圧痛の確認一つで把握できることとなる。
柔軟性
股関節の屈曲角度、PSLR,AKE,MFAKEなどを用いて可動域(柔軟性)を把握していきます。
いずれの伸張方法も、ハムストリングスを伸張することに変わりはないですが、伸張の開始肢位により、若干の違いがあることに留意をします。
股関節屈曲
開始肢位が膝屈曲位であるため、動作の中で伸張されるエリアは股関節側に集中しやすい。
PSLR
開始肢位が膝伸展位であるため、動作の中で伸張されるエリアは股関節側に集中しやすい。(開始位の段階ですでに膝付近のハムストリングスは伸張されているため。)
AKE Active Knee Extension
開始肢位が股関節屈曲位であるため、動作の中で伸張されるエリアは膝関節側に集中しやすい。
MHFAKE Maximus Hip Flex Active Knee extension
開始肢位がAKEよりも股関節屈曲位であるため、動作の中で伸張されるエリアは一層膝関節側に集中しやすい特徴がある。
可動域(柔軟性)で重要なことは、圧痛の位置を把握し、そのエリアの柔軟性がどうかを把握することである。
よって、ハムストリングス全体の可動性(柔軟性)を把握した後、エリアごと(股関節又は膝関節エリア)の把握を合わせて実施することが望ましい。
復帰までの期間(予後)について
損傷型(MRI撮影による分類)からみた復帰時期において以下の記載がある。
また、損傷度からみた復帰時期については、以下のような記載がある。
上記の点から、「痛くないから大丈夫」と言った、主観的情報のみでの判断は、非常にリスクが高いことが想像される。
ここからは、文献やテキストに記載のなる内容と、実施に自身が負傷し行った際に感じたギャップについて合わせて記載していきます。
結合組織の修復のイメージ
軟部結合組織の修復には、①炎症②繊維形成③瘢痕成熟という3つの基本的な段階がある。
この3段階は、連続的に相互に働くことを理解しておく。
①炎症結合組織修復の第一段階である炎症とは、スポーツでよく起こる骨格筋系の損傷などを含む刺激に対する血管が分布している組織の正常な反応である。
”急性炎症反応”は通常、3〜4日間続くとされている。その兆候や症状が徐々に治まるに従って、炎症は約2週間の亜急性期に入る。
→症状や兆候が解除されない場合は、局部的な炎症反応が広範囲、あるいは全身性になることがある。
→損傷した組織に、炎症症状が残存・再発性の微細損傷・組織内に存在する異物による持続的刺激などがある場合、”慢性的炎症”へと移行する。
急性の炎症は、怪我に対して病原性物質や異物を局部にとどめ破壊するための初期反応である。
→急性の炎症は正常な反応で、結合組織の修復に必要不可欠な要素である。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?