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『オリンピア』刊行

 長年の持ちこみ企画だった『オリンピア』(デニス・ボック)がついに新生出版社・北烏山編集室から刊行されました。
 どんな作品であるのか、訳者あとがきから少しだけ引用します。

 デニス・ボック『オリンピア』を日本のみなさんにようやくお届けすることができて、うれしく思う。二十世紀の終わりにカナダで出版されたこの作品が、四半世紀を経て翻訳刊行されるに至った事情は後述するとして、まずは内容の――
 と、客観的かつ冷静にはじめようと思ったのだが、やはり無理だ。一九九八年にこの作品を原書で読んだとき、なんと美しく、なんと豊かなイメージに満ちあふれ、なんと静かに力強く心を打つ文章かと思った。すっかり虜になった。いつの日か、これを日本語で紹介できたらどんなにうれしいかと思った。まだ文芸翻訳の仕事を本格的にはじめてはいなかったころのことだ。
【中略】
『オリンピア』は、一九三六年のベルリン・オリンピックを起点に、七二年のミュンヘン、七六年のモントリオール、そして九二年のバルセロナまでのオリンピックを背景として、三代にわたるアスリート一家の歴史を描いた物語である。そんなふうに書くと、トレーニングの苦労や激しい試合を通じての登場人物の成長を中心としたさわやかな物語、もしくは涙と感動の物語が頭に浮かびそうだが、この作品はそういうものとはまったく異なり、そもそもスポーツそのものの描写もオリンピック自体の描写もほとんどない。ひたすら描かれるのは、三代にわたってオリンピックに無名選手としてかかわったドイツ系カナダ人一家のひとりひとりが日常生活で体験した苦悩であり、挫折であり、悪夢であり、そして救済である。
【後略】

『オリンピア』「訳者あとがき」より

 訳者あとがきには、この作品の読みどころや魅力や、刊行に漕ぎ着けるまでのいきさつをかなりくわしく書きました(計10ページ)。地味ですが、忘れがたい充実の読書体験をもたらしてくれる作品です。ぜひご一読ください。

 この作品が出版社としての船出となる北烏山編集室の公式サイトもぜひご覧ください。また、ブログ「北烏山だより」には、出版社としてスタートを切るにあたって、そして『オリンピア』を刊行するにあたっての裏話が満載です。

『オリンピア』刊行を記念して、このあと、東京と京都でトークイベントがあります。東京では書評家の倉本さおりさん、京都では CAVA BOOKS の宮迫憲彦さんが聞き手となって、この作品の魅力や刊行までのいきさつをお話しすることになります(どちらも会場参加のみ、オンラインなし)。ぜひご参加ください。

◎12月17日(日)14:00~15:30 青山ブックセンター本店
 『オリンピア』(北烏山編集室) 刊行記念
 越前敏弥 × 倉本さおり × 樋口真理 トークイベント

◎1月26日(金)19:30~21:00 京都出町座(イベント主催 CAVA BOOKS)
 『オリンピア』(北烏山編集室)刊行記念イベント
 越前敏弥×樋口真理

『オリンピア』については、今月中にもう一度紹介記事を書きます。

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 朝日カルチャーセンターの1月期文芸翻訳講座、オフィス翻訳百景のオンライン文芸翻訳実践講座はどちらも引きつづき受付中です。詳細については、それぞれ以下の記事をご覧ください。


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