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松坂健さんのこと

 ミステリー研究家の松坂健さんが10月8日に逝去されました。
  https://www.hayakawa-online.co.jp/new/2021-10-08-193231.html
 多岐にわたるその業績のすばらしさは、わたしなどにとうてい語りつくせるはずもなく、いずれ適任のどなたかがくわしく語ってくださると思います。
  11月に書肆盛林堂から『二人がかりで死体をどうぞ-瀬戸川・松坂ミステリ時評集-』という書評集が出ることになっていて、わたしも刊行を楽しみにしていたところでした(サイトから予約できます)。
 一介の翻訳者にすぎないわたしにも、とても親切にしてくださいました。わたしの最初の訳書『惜別の賦』の新聞書評を書いてくださったのを機にご挨拶したのがきっかけで知り合い、その後、わたしのロマンポルノ愛を知るや、日活の元女優さんがママさんをつとめる銀座のバーに連れていってくださったのは、楽しい思い出のひとつです(「越前さんをどうしても連れていきたい場所があるんだけど、行き先は教えません。だまってついてきてください」というミステリアスな趣向が凝らされていて、ドアをあけてびっくり、でした)。
 また、全国のミステリーがらみのイベントなどに精力的に顔を出して、レポートを書きつづけた人であり、その様子は日本推理作家協会のサイトにある「松坂健のミステリアス・イベント体験記」などからよくわかります。10年ほど前から、わたしは全国の読書会をまわったり、各種イベントを主催したりしていますが、自分のなかでは、松坂さんに追いつくことはとうていできないものの、あの姿勢を見習いたい、ヒントにしたい、という気持ちがずっとありました。松坂さんが「エラリー・クイーン翻訳秘話」のトークに来てくださったときの様子はここに書かれています。
 ご専門のひとつが観光学やホテルマネジメントだったので、ホスピタリティに関するご著書もありましたが、何よりご本人が、いつでも、だれに対しても、最高のホスピタリティをもって接していらっしゃる人でした。
 謹んでお悔やみを申しあげます。 

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