ありがとうの言葉|掌編小説(#シロクマ文芸部)
「ありがとう分が不足しています」
スマホの画面にでかでかと表示されたメッセージをタップする。
「あなたが最後に『ありがとう』と言ったのは4日前です」
――いやいやそんなわけ……あるか。
最近、仕事が忙しくてイライラして余裕がなくて、ありがとうの言葉の存在すら忘れていた。言ってないし、もちろん言われてもいない。「すみません」なら100万回くらい言ったかな。
ありがとうって、意外と使い方が難しい。
「お弁当、温めますか?」
「え? ああ……」
別にどうでも