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小説&ショートショート

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小説は主に短編です。フリー台本として、ご自由にお読みください。 (全部ではありませんが、「聴くっしょ!」にも投稿しています)
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2023年12月の記事一覧

イチョウの木|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 12月の頭に帰省しようと思ったのは、年末年始の民族大移動に巻き込まれるのが嫌だったから。…

トガシテツヤ
10か月前
59

ヤドカリ父さん|ショートショート

 缶ビールを2つベンチに置き、しばし海を眺める。僕と一緒にビールが飲みたいと言っていた父…

トガシテツヤ
9か月前
41

冬色のカーテン|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「冬色のカーテンです。大切にしてね」  そう書いたメモと一緒に、白のレースカーテンが送ら…

トガシテツヤ
10か月前
79

大晦日の無線機|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 最後の日、無線機から聞こえてきたのは……。 *** 「施錠よし。鍵の返却よし。消灯よし…

トガシテツヤ
9か月前
41

命の灯台|掌編小説

「よし。大丈夫そうだ」  じいちゃんは灯台を見上げながら、力強く頷いた。最近、じいちゃん…

トガシテツヤ
9か月前
41

おっさんノスタルジー|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 振り返るのは悪くない。  それがまぁ、たまになら。 「ガソリン1リットル168円って信じら…

トガシテツヤ
10か月前
49

ありがとうの言葉|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「ありがとう分が不足しています」  スマホの画面にでかでかと表示されたメッセージをタップする。 「あなたが最後に『ありがとう』と言ったのは4日前です」  ――いやいやそんなわけ……あるか。  最近、仕事が忙しくてイライラして余裕がなくて、ありがとうの言葉の存在すら忘れていた。言ってないし、もちろん言われてもいない。「すみません」なら100万回くらい言ったかな。  ありがとうって、意外と使い方が難しい。 「お弁当、温めますか?」 「え? ああ……」  別にどうでも