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カルガ キゾンバ フェスティバス【インストラクター争奪戦編】

※1「カルガキゾンバフェスティバル」は、スペイン・バルセロナ近郊で行われる、国際的なキゾンバフェスティバル。キゾンバとはアンゴラ発祥のペアダンスで、ヨーロッパを中心に様々な世代に人気を博している。これは、完全な趣味でこのダンスを細々と楽しんでいる、フォロワー女性視点で書かれている。

※2 リーダー=踊りをリードする人。主に男性が多い。
※3 フォロワー=リーダーの踊りについて行く(フォローする)人。主に女性が多い。

さあ、体温が一気に2度位上がりそうな、パーティーでのインストラクター争奪戦についても、熱気を甦らせながら振り返って行きたい。

行列なき争奪戦

「申し訳ないなぁ」
と思いながらも、チャンスがあれば私も挑戦したいと思った、パーティー時のインストラクターとのダンス。

日本では、いつの間にか行列ができて、平等に順番が来たら踊る、という暗黙のルール?!があるが、ここスペインのカルガフェスティバルでは、なんと順番はなく、インスラクターが相手の人と踊り終わりハグをしたら、自分からそのインスタクターの前に飛び出して行く……!!

「なんという、肉食女子達……!!」
私ははじめ恐れおののいてしまったが、恐がってばかりでは、どのインストラクターとも踊れず帰国することになる。

「わざわざスペインまで来たんだよ?一日位、争奪戦にも参加しちゃえっ!」
家族のように仲良くなったフランス人の仲間達に、インストラクターと踊れる秘訣を聞いた。

インストラクターと踊れる秘訣

「とにかく、真ん中にいるんだ。端の方だと、終わった後駆け寄る女性達よりも先に声はかけられないよ!」

「後、時間は2時〜4時辺りが吉だよ。4時を過ぎたら、だんだんインストラクターもどこかに消える場合もあるから」

「OK!今夜の序盤は、まずインストラクターやタクシーダンサーと、真ん中で踊り明かすよ!」

「やるね、君!ファイト!!」

ラッキーがいきなり……

その宣言通り、3時頃にDJブースの前でビートに合わせて踊り回っていたら、ちょうどスーパーインストラクター・Guiuが、間近で女性との踊りを終えたのだ。私は最大限の勇気を出し、話しかけてみた。

「こんばんは、Guiu!! 踊って頂けるでしょうか…?!!!」
「Hi〜!もちろん、踊ろう!ただNelsonと約束してたから、その後でいいかな」

既にGuiuと踊る約束をしていたのは、なんとNelson(こちらもスーパーインストラクター)だったようだ!

「ごめんなさい、もちろんです!というかNelson先生、とっても素敵なファッションですね!」
「ありがとう……あなた、優しいね!」

いつも優しさと穏やかさを同居させているようなNelsonには、とても癒される。
コンペティション・アーバン部門の挑発的な雰囲気とは、まるで別人だ。

「そんなまさか、Nelson先生に対抗なんて、出来る訳ないし……。この2人のダンスに見惚れながら、じんわりと次を待つことにしよう……」

気合いを入れ直していると、なんと私が立っていた隣、つまりDJブースの左側すぐに秘密の水置き場があったようで、これまたスーパインストラクターのフレッドが踊り終わり、汗を拭き水を飲みに来たのだ。
私の隣の場所に、たまたま水を飲みに……。

「死角に踊ってほしいと懇願する私がいて、本当にごめんなさい……」
水を飲み終えた所を確認して、申し訳ないと思いながらも、本能的に声をかけてしまった。
「Hello!If you would be ok after your rest,could we dance…?(こんばんは!もし休憩の後宜しければ、踊ってもらえるでしょうか)?」
「Hi! Ok^^(やあ!いいよ)」
フレッドは笑顔で、もう一度水を飲み出した。

「これは、どこかでは踊って頂けるということ?
お愛想でオッケーとは言ってくれたけれど、結局は無理ってこと?」

その水を飲んだ後、フレッドは私の腕を取って、フロアに向けてゆったりと歩き出した。
「きゃ〜〜〜〜、粋な計らい、ジェントル〜〜〜!!!」
心の中では絶叫しながら、私は落ち着いた振りをしてしっとり歩みを合わせてみた。

夢のようなダンスの数々

ダンスはしっとりとした、タンゴも彷彿とさせるものだ。
短い曲が2、3曲終わったらありがとう、と終わられるのが、日本のキゾンバフェスで有名インストラクターと踊ってもらった時の現実だが、プールパーティーのGuiuも違ったように、このフレッドも違う。

飾り足でタンゴも出来ることをアピールしたことが、良かったんだろうか。
フレッドはタンゴでも使われるステップをはじめ、なかなか高度な技をかけてくれ、しかも4曲位も踊ってくれた。
たまたま短調が続いたということもあって、フレッドはどちらかというと水や静寂を感じさせるしっとりとしたリードで、私を感動させてくれた。
そしてThank you~!!と深く温かく、私を抱きしめてくれた。
最後のハグまで癒されるもので、忘れられない思い出になった。

私とのダンスが終わると、他の女性が待ってましたかとばかりにフレッドに飛びついて行く。
確かに順番は待たなくていいが、これは積極的でない人には反対に、酷じゃないか。
アグレッシブタイプの人は、こちらの方が順番を待たなくていいから向いているかもしれないけれど。

さて、定位置に戻るとGuiuはネルソンと踊り終わり、別の女性と踊っていた。
「Guiuがネルソンと踊り終わる頃までフレッドと踊っていられたなんて……」
と私は感動が倍増した。
今Guiuと踊っている女性は、舞い上がっているのか、なかなかGuiuのリードについて行けていないようだった。
「そうら、舞い上がっちゃうよなぁ。着いて行けるようにしたいな……」
私はそう思いGuiu達をよく見て、ステップの予習をしておいた。

Guiuはその女性に優しくハグをして、フィニッシュした。
「忙しいだろうし、いつ終わるか分からないから、一瞬一瞬を感じ切りたい……!」
他の女性が例のごとくGuiuに飛び込んで行ったが、なんというジェントル。
私のことを見て
「彼女が先だから」
というような仕草を入れ、約束通り私の所に来てくれた。

テンションは、もちろん激上がりである。
そしてGuiu、プールパーティーの時よりも本格的に、5曲位、つまり30分近くも踊ってくれたのだ。
しかも楽な技ばかりではなく、フレッドのような足運びの技だったり、スライドやリフトまで入れてくれ……。
「天国?このカルガフェスって……?」
と思った。

国で判断することはもちろん出来ない。
その時の曲の種類によって、ダンサーは踊り方を変えるのだから。
ただ、Guiuは水を感じたフレッドに対して、火をたくさん感じさせてくれた。
6曲目に入ろうという所で、こちらもフレッドに負けじととても強く温かいハグで「Thank you~^^」と抱きしめてくれた。

「もはやこれは、夢?天国?」
と思った。

別日には主催者かつスーパーインストラクターのNunoにもとても優しいリードで魂が温まるようなキゾンバを結構長い時間踊ってもらえ、スペインに行った距離分以上の喜びを、私は体得しているように感じた。

タクシーダンサーや参加者と踊るタイミングも、見逃さないで

スーパーインストラクター達を囲む、真ん中のタクシーダンサー達がこれまたキレキレで、そのリード、アドリブ、驚きの静止やテンポチェンジなど、そこは異常な熱気で満ちていた。

こうして私はインストラクターやタクシーダンサーや豪華な参加者達と、目標通り真ん中で踊り明かせ、満足しきった。
「カルガに来て良かった……目標達成!」
なんだろう、この達成感と満足感は……。

その後、スーパーインストラクターDarioとまで踊れるチャンスが、かなりの確率で巡って来そうだった。

ただそれは、忘れられないダンスを経験させてくれた一人のリーダーの誘いによって、消えることになった。

タイミングもまた、その時々のドラマになり残るのだと思う。
そこに後悔は全くないし、また機会があるといいなと願うのみだ。

日々良い行いをしようと心がけていたことが、今回の飛び込まなくとも踊れるラッキーに繋がったのだろうか。
これからもたくさんのラッキーに見舞われるために、日々良い行いを心がけたいと思う。

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