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アレルギー体質の改善

数年前まで京都嵐山の桜に惹かれてよく行っていました。
この季節は爽やかな風の中、この国が一番華やぐ時ですが、同時に花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患のある方にはとても辛い季節です。
そのような方の一助にでもなればと思い、この原稿を投稿しました。
皆さんに読んでもらえたら幸いです。


1  アレルギー(炎症)体質を改善するための概論

(1) 目的
今や国民病ともいえる花粉症やアトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患は、清潔すぎる生活習慣や食生活の現代化による「寄生虫感染の減少」や「腸内細菌叢の乱れ」が原因であるとする説が根強く残っています。
しかし、これらのアレルギー疾患は食品として日常的に摂取されている「リノール酸(ω-6系脂肪酸)」の過剰摂取により起きていると考えるのが新しい理論であり、この考え方に基づいた新しい食事指導が喫緊の課題となっています。

(2) 方法
アレルギー疾患の起因物質である炎症性メディエーターとして、ヒスタミン・ロイコトリエン・プロスタグランディン・トロンボキサン等が知られていますが、ヒスタミン以外のものはアラキドン酸カスケードにより体内のマストセル、白血球等でリノール酸から大量に生成されています。
従って、体内の脂肪細胞中のリノール酸含量を減らすこと(他のω-3系脂肪酸・オレイン酸・飽和脂肪酸等に置き換えること)により、炎症性メディエーター(炎症を起こす物質)の生成が減少してアレルギー(炎症)性疾患が起こりにくくなると考えられます。
そこで、リノール酸の摂取量を減らす方法はないかとあらゆる食品を調べてみたところ、一部の例外を除いて、リノール酸の含量が多いのは「植物の種子から製造される食用油」に限られており、その油類を多く使用している食品もはっきりと判別することが可能でした。
このことから、「使用されている食用油に注意して、食品を選別して摂取することによりアレルギー体質は改善できる。」と考えて、アレルギー体質の方への食事指導を10年以上実施してきました。

(3) 結果
食用油に対する新しい知識を持ち、リノール酸の少ない油を調理に使い、外食する際や惣菜を購入する際には揚げものの少ないものを選び、魚介類や牧草で飼育された牛肉やマトンなどの摂取を増やし、マーガリンやショートニングを多量に使用している洋菓子類をなるべく摂らないようにします。
この食生活を実行することにより、首周りや手足に出ていたアトピー性皮膚炎の症状がなくなる、また、花粉症の薬が必要でなくなる等の目に見えた効果がありました。

(4) 考察
現在、アレルギー体質を改善する治療法として様々な種類の抗原を用いた舌下免疫療法が行われていますが、この食事療法の方が安全かつ簡便であり、また、全ての抗原に対して適用できるため、アレルギー体質を改善する効果も高いと考えられます。
昭和50年頃から、食品衛生を司る行政サイドから飲食店や惣菜類製造・販売業者等に対して、細菌性食中毒を防止するために煮沸よりは高温処理のできる「植物油で揚げた天ぷらや惣菜」などを推奨する指導が行われてきています。
その頃から急激に植物油の摂取量が増加し、それに比例してアレルギー疾患が増加してきています。
現在の食生活は、「リノール酸の摂取量を減らす社会的システム」をいかにして構築するかという課題に直面していると考えられます。

(5) 今後の展望:低リノール酸食の勧め
現在、「アラキドン酸カスケード」から生成される炎症性メディエーターに関していろいろな研究成果や治療効果が発表されていますが、それらを詳細に分析してみると、「アラキドン酸カスケード」により生成される炎症性メディエーターに着目した「アレルギー(炎症)体質の改善」の方法論は、全ての炎症性疾患の予防や治療へ応用できる可能性を秘めていると考えられます。
現在までの研究により、生体内において炎症を起こしているのは主として好酸球であり、その好酸球はマストセルなどが引き起こした炎症部位に集まってきて浸潤し、その好酸球の細胞膜を形成しているリン脂質のリノール酸から生成されるロイコトリエン等が炎症を促進させ、かつ、持続させていると考えられます。
従って、リノール酸の摂取量を減らすことにより、「アラキドン酸カスケード」から生成される炎症性メディエーターが減少して、生体内での炎症は起こりにくくなります。
また、一時的に炎症が起こったにせよ、その炎症を促進させて持続させることはできなくなると考えることができます。

このことにより、「アレルギー(炎症)体質の改善」の方法論は、難治性の炎症性疾患である喘息・好酸球性食道炎・潰瘍性大腸炎・クローン病・アテローム性動脈硬化・リウマチ・糖尿病等の予防や治療にも応用できる可能性があると考えらます。
このことは、近い将来において若い研究者に頑張ってもらい、是非とも解明して欲しいと思います。

現在のアレルギー(炎症)性疾患を減らすためには、どうしても、昭和30~40年代のような「低リノール酸食」の食生活に戻ることが肝要であると考えられます。
そして、そのような食生活を実際にすることは可能であると考えています。

(6) リノール酸(ω-6系脂肪酸)とα-リノレン酸(ω-3系脂肪酸)の代謝
ロイコトリエン(LT)、プロスタグランディン(PG)、トロンボキサン(TXA)などの炎症を起こす物質は、人の体の中でリノール酸(ω-6系脂肪酸)からアラキドン酸(AA:arachidonic acid)を経由して生成されます。
また、α-リノレン酸(ω-3系脂肪酸)はリノール酸と競合的な拮抗作用(リノール酸からの炎症を起こす物質の生成を抑制すること、並びにリノール酸の炎症が起こらないようにすること)により、アレルギー(炎症)体質の
改善に役立ちます。
 [Essential fatty acid production and metabolism to form eicosanoids]

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出典:Wikipedia ( Created David R. Throop , Vectorized by Fvasconcellos )

2 アレルギー体質を改善するための食用油の知識

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1 サラダオイルや天ぷら油などの食用油脂に含まれるリノール酸(ω-6系脂肪酸)の過剰摂取を止める必要があります。
そのためには、リノール酸の少ないオリーブ油・キャノーラ油・バター・ラードの使用がお勧めです。
2 魚介類の油には、リノール酸の働きを抑制するα-リノレン酸・EPA・DHA(ω-3系脂肪酸)が多く含まれるので、魚介類を食べるのはお勧めです。
3 肉については、穀物飼料で肥育された鶏肉・豚肉・国産和牛よりも、牧草などで飼育された輸入牛肉・マトンの方が肉の脂肪に含まれるリノール酸が少ないので、アレルギー体質の方には良いと考えられます。
特に、脂肪の少ない赤身の部分がお勧めです。
4 マーガリンやショートニングにはリノール酸が多いので、これらを使用している菓子パン・ケーキ・クッキーなどの洋菓子類の食べ過ぎにも注意が必要です。


3 アレルギー体質を改善するために必要な食生活


人は自分の体内において、リノール酸からアレルギーを起こす物質(ロイコトリエン、プロスタグランディン、トロンボキサンなど)を作ってしまいます。
従って、このようなリノール酸の多い食品をなるべく摂らないようにすることで体内に蓄えられている脂肪中のリノール酸の割合が少なくなります。
そうすることでアレルギーを起こす物質が体内で過量に生成されなくなり、体内でのアレルギー(炎症)反応が起きにくくなります。
また、アレルギー(炎症)反応が起こったにせよ、そのアレルギー(炎症)が持続するようなことはありません。

(1) アレルギー疾患を持つ人の好きな「リノール酸が多く含まれる食品」:日常的によく食べるものを次に示します。
このような食品にはリノール酸が多く含まれているので、努めて食べないようにするのが良いと考えられます。
 ①サラダオイル、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング
 ②食用油脂で揚げたり、炒めたりしたもの(鶏のから揚げ・豚カツ・コロッケ・フライドチキン・フライドポテト・天ぷらなどの惣菜類)
 ③鶏肉、霜降りの国産牛肉、豚肉の三枚肉など
 ④ドーナツ・ポテトチップス・花林糖などの揚げ菓子類、マーガリンやショートニングを使用している菓子パン・ケーキ・クッキーなどの洋菓子類

(2) アレルギー疾患を持つ人の好みではない「リノール酸が少ないか、α-リノレン酸やEPA・DHA が多く含まれる食品」:日頃からあまり食べていないものを次に示します。
このような食品には、リノール酸が少ないか、リノール酸から炎症を起こす物質が生成されるのを防いだりするω-3系の油(α-リノレン酸やEPA・DHA)が多く含まれているのでお勧めです。
 ①オリーブ油、キャノーラ油、バター、ラード、エゴマ油、亜麻仁油
 ②食用油で揚げたり、炒めたりしていないもの(煮たり、焼いたりした惣菜類)
 ③魚介類(鯵・鯖・鰯・鯛・蛸・烏賊・アサリなど)、魚の缶詰
 ④外国産牛肉やマトンなどの牧草で育てた、霜降りではない赤身の肉
 ⑤あんパン・団子・羊カン・饅頭・カステラなどの和菓子類

(3) アレルギー体質にならないためには、日頃の食生活において、リノール酸の少ない食品を選んで摂取する食生活習慣を作り上げる必要があります。
そして、次のようなことに注意して、日頃から食べるものを選択する必要があります。
 ①食用油に対する正しい知識を持ち、リノール酸の少ない食用油を調理に使い、外食する際や惣菜を購入する際には、油で揚げたりした食品をなるべく避けて選び、マーガリンやショートニングを使用している洋菓子類をなるべく摂らないようにする。
 ②スーパーなどの食料品店で販売されている食品には、リノール酸の多い植物油、マーガリンやマヨネーズが多量に使用されているので、なるべくリノール酸の少ないものを選ぶようにする。

(4) アレルギー体質を改善させるには、このような食生活を持続していくことが大事です。
これを持続することで、体内に蓄えられている脂肪中のリノール酸の割合が少なくなっていき、アレルギーを起こす物質(ロイコトリエン、プロスタグランディン、トロンボキサンなど)の生成が減少していきます。
そのことにより、アレルギー(炎症)体質は次第に改善されていきますが、改善されるまでにはそれなりの期間が必要です。
 ①アトピー性皮膚炎:0.5年~1年
 ②花粉症:体幹の痒み(0.5年~1年)・目の痒み(1~2年)・鼻の症状(2~3年)

(5) 現在、アレルギー体質を改善する治療法として様々な種類の抗原を用いた舌下免疫療法が行われていますが、この食事療法の方が安全かつ簡便であり、また、花粉だけではなくてハウスダストなどの全ての抗原に対して適用できますので、アレルギー(炎症)体質を改善する効果も高いと考えられます。
これが、アレルギー(炎症)性疾患について、私なりの方法論で20年以上研究してきて得られた結論です。

4 アレルギー体質を改善した事例

(1) 医薬情報担当者 男性 58歳
アレルギー歴:花粉症 20年
食事指導前の症状
 ①花粉症 服用薬:アレジオン錠、アレロック錠
 ②目の痒み 点眼薬:インタール点眼液
現在の症状
 ①服用薬及び点眼薬:共に必要でなくなった。
 ②最も悩まされていた鼻のクシャミがめっきり減った。

(2) 薬剤師 女性 61歳
アレルギー歴:花粉症 20年
食事指導前の症状
 ①花粉症 服用薬:タリオンOD錠 点鼻薬:ナゾネックス点鼻液
 ②目の痒み 点眼薬:パタノール点眼液
 ③薬を服用・使用中でも花粉症の症状が発現していた。
現在の症状
 ①服用薬及び点鼻薬:共に必要でなくなった。
 ②症状を感じることはほとんどなくなった。

(3) 看護師 女性 40歳
アレルギー歴:アトピー性皮膚炎 30年 体幹や手足の掻痒感 5~6年
食事指導前の症状
 ①アトピー性皮膚炎 服用薬:なし
           塗布薬:市販薬(非ステロイド抗炎症クリーム)
 ②手や指がひび割れて、肘の内側などは赤く皮膚炎を起こしていた。
 ③体幹や手足の痒みが強かった。
現在の症状
 ①体幹や腕のアトピー性皮膚炎が消失し、塗布薬は必要でなくなった。
 ②症状のひどかった手・指の湿疹が収まり水仕事が楽になり、体幹の痒みも収まってきた。


5 アレルギー(炎症)体質の改善の説明

それでは最初に、花粉症などのアレルギー症状がどの様にして起こるのか、その機序を説明して、次にこのようなアレルギー疾患を発症させない方法を説明していきます。

(1) アレルギーの起こるメカニズムの説明

まず、花粉症でアレルギーの起こるメカニズムを説明します。
「アレルギー性鼻炎のメカニズム」は非常に複雑ですが、最初に起こる「即時相反応」とそれよりも時間をおいて起こる「遅発相反応」という二つの種類があります。

人の身体全体にマストセルという細胞があり、鼻の粘膜や目の結膜にもこの細胞がたくさん存在しています。
この細胞の中にはアレルギーを引き起こす物質:炎症性メディエーター(ヒスタミン・ロイコトリエン・ブロスタグランディン・トロンボキサン・血小板活性化因子など)が入っており、このマストセルについている抗体に花粉の成分である抗原がくっつくと、それを契機にアレルギーを引き起こす炎症性メディエーターがマストセルから放出されます。
そして、この炎症性メディエーターが鼻腔粘膜などに作用してアレルギー性の炎症を引き起こし、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が出てしまいます。これが花粉症発症のメカニズムで「即時相反応」と呼ばれるものです。

その後、マストセルやリンパ球などから放出された炎症性メディエーターやインターロイキンなどのサイトカインの働きにより、白血球(好酸球・好中球・好塩基球・リンパ球など)が炎症を起こしている部位に集まってきます。
そして、集まってきた白血球からも同じようにこの炎症性メディエーターやサイトカインが放出されます。
このことが繰り返して続くことにより、アレルギー性鼻炎の症状が次第にひどくなっていきます。これが「遅発相反応」と呼ばれるものです。

花粉症で目が痒いのは、目の結膜でも同じようなメカニズムでアレルギー性の炎症反応が起きているためです。
この持続していく「遅発相反応」が起きないようにすることがアレルギー性炎症の治療には重要であり、そのためには、マストセルや白血球などから放出される炎症性メディエーターやサイトカインの量をなるべく少なくする必要があります。

(2) 炎症性メディエーターの生成

次に、炎症性メディエーターの生成について説明します。
アレルギーを引き起こす炎症性メディエーターとして、皆さんよくご存じのヒスタミンがあります。このヒスタミンは体に必要なアミノ酸であるヒスチジンから自分の体内で作られますが、鼻腔粘膜や目の結膜でのその量はそれ程多くはありません。

また、ヒスタミン以外の炎症性メディエーターとして「ロイコトリエン、プロスタグランディンやトロンボキサンなど」があります。
これらの炎症性メディエーターは体内脂肪に蓄えられているリノール酸(ω-6系脂肪酸)から作られるため、ヒスタミンに比較してその量は膨大なものであり、アレルギー性炎症に大きく関わっています。
これらの中でもロイコトリエンはヒスタミンとは比較できないほど強力(ヒスタミンと比較して約1500倍程強力)に、血管の透過性亢進や血管拡張による鼻汁分泌の促進、鼻づまり、目や鼻の掻痒感などのアレルギー性炎症を起こしてしまいます。

[Essential fatty acid production and metabolism to form eicosanoids]

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 出典:Wikipedia ( Created David R. Throop , Vectorized by Fvasconcellos )

※炎症性メディエーターとして代表的なもの
 ①ロイコトリエン(LTA4・LTB4・LTC4・LTD4・LTE4)
 ②プロスタグランディン(PGD2・PGE2・PGF2α)
 ③トロンボキサン(TXA2)

アレルギー体質の人の体内脂肪にはリノール酸が多量に蓄えられているため、これらの炎症性メディエーターは炎症を起こしている部位で途切れなく生成されていき、アレルギー性炎症も同じように途切れなく続いていきます。
これと反対に、α-リノレン酸(ω-3系の脂肪酸:魚油で有名なEPA・DHAも同じくω-3系の脂肪酸)からも同じように、種類の違うロイコトリエン、プロスタグランディン、トロンボキサンなどが作られますが、これらのメディエーターにはリノール酸のアレルギー性炎症を打ち消す作用があります。

人は、リノール酸を食物から食用油として体内に摂り入れ、自分の脂肪細胞の中に蓄えていきます。
そして、マストセルや白血球(好酸球、好中球・好塩基球・リンパ球)などは、このリノール酸からヒスタミン以外の炎症性メディエーターを生成していきます。
人の脂肪細胞に蓄えられるリノール酸の量が、他の油(α-リノレン酸・オレイン酸・飽和脂肪酸など)と比較して増加すればするほど、マストセルや白血球などで生成される炎症性メディエーターの量は増加します。

昨年まで花粉症ではなかったのに、今年突然、花粉症になってしまったという方が少なからずいらっしゃいます。
今までは説明できない現象でしたが、リノール酸の過剰摂取に伴う炎症性メディエーターの過剰生成が、花粉症を引き起こす閾値:限界を超えてしまったためであると考えることができます。

従って、「アレルギー体質を形作るリノール酸の摂取量を減らすことにより、アレルギー体質を改善できるのではないか。」と考えて辿り着いたのが、次のような食事療法でした。
その方法とは、体内の脂肪細胞に貯め込むリノール酸の量を少なくして、他の油(α-リノレン酸・オレイン酸・飽和脂肪酸など)に置き換えることにより、炎症性メディエーターの生成を少なくして、アレルギー性の炎症反応が起こりにくくするというやり方です。

(3) リノール酸の過剰摂取をなくす具体的な食事療法

それでは、リノール酸の過剰摂取をなくす具体的な食事療法を説明します。

1 サラダオイルや天ぷら油などの食用油に含まれるリノール酸(ω-6系脂肪酸)の過剰摂取を止める必要があります。
それには、リノール酸の少ないオリーブ油・キャノーラ油・バター・ラードの使用がお勧めです。
2 魚介類の油には、リノール酸の働きを抑制するα-リノレン酸、EPAやDHA(ω-3系脂肪酸)が多く含まれるので、魚介類を食べるのはお勧めです。
3 肉については、穀物飼料で肥育された鶏肉、豚肉や国産和牛よりも、牧草などで飼育された輸入牛肉やマトンの方が肉の脂肪に含まれるリノール酸の量が少ないので、アレルギー体質の方には良いと考えられます。
特に、脂肪の少ない赤身の部分がお勧めです。
4 マーガリンやショートニングにはリノール酸が多く含まれるので、それらを使用している菓子パン、ケーキやクッキーなどの洋菓子類の食べ過ぎにも注意が必要です。

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(4) リノール酸使用の現状及び結論

現在では、遺伝子組み換えによる「オレイン酸リッチなヒマワリ油」や、リノール酸リッチで断トツに先頭を走っていた紅花油も「オレイン酸リッチなベニバナ油」と衣替えをして店頭に並んでいます。
十数年前までは、サラダオイル、天ぷら油、ヒマワリ油やベニバナ油などが、誇らしげにリノール酸含有量の多さを容器ラベルに表示して販売されていました。
それがある時から突然、スーパー等の食品売り場に並ぶ植物油の容器ラベルからリノール酸の含有量が消えました。
その頃から、油脂製造・販売メーカーもリノール酸の過剰摂取は人体に良くないと理解し始めたのだと思います。

しかし、高リノール酸の植物油は今でも店頭に並んでいますし、高リノール酸の植物油を使用した惣菜類が日本国中で販売され、飲食店でもたくさん使用されています。
日本だけではなく、米国を初め世界中でリノール酸の多い植物油が大量に製造・販売され、世界中の人々が多量のリノール酸を毎日摂取しています。
日本や世界中で販売されているスイーツ:洋菓子類にはマーガリンとショートニングが使用されており、ここからも同じように、多量のリノール酸を摂取しています。

数年前になりますが、7月下旬から2週間程、初めてロンドンに旅しました。
英国ではバターとオリーブ油主体の食生活だろうからアレルギー疾患は少ないのではないかと思っていたのですが、ウィンチェスターに在住している姪から聞いた話では、全く違う状況でした。

英国でもバターは高価なためマーガリンを良く使用し、しかも英国人はたっぷりとマーガリンを使うそうです。
また、マーガリンやショートニングを使用したクッキーやケーキなどの甘いお菓子も大好きな国民ですので、アレルギー体質の方は多いとのことでした。
英国内でも、杉花粉とは違いますが、花粉症の方が結構いらっしゃるとのことです。
どうも、世界中至る所で、ω-6系脂肪酸であるリノール酸の過剰摂取が今でも続いており、そのことが原因となりアレルギー(炎症)性疾患は世界中に広まっているようです。

私の若い頃の苦い記憶として、思い出すことがあります。
40年前になりますが、保健所で食品衛生監視員をしていた頃のことです。
その当時、細菌性食中毒を防止するために、飲食店や惣菜類製造・販売業者等の食品に携わる人達に対して、「植物油で揚げた天ぷらや惣菜」などを推奨し始めた時があります。
植物油で揚げることにより食品中の温度が150℃前後の高温になるため、100℃の煮沸では死滅しない芽胞性の腐敗菌・食中毒原因菌にも有効であるからという、国からの指導であったかと思います。
確かに、揚げたものは腐敗しにくく長持ちしますが、どうも、その頃から急激にアレルギー疾患に悩まされ・苦しまれる人が増えてきたように考えられます。

アレルギー疾患を標榜している診療所や病院のドクターを筆頭に、延いては、この国の厚生労働省及び都道府県等の指導的な立場の方々に、このリノール酸の過剰摂取が原因であるアレルギー疾患の増加に注目して頂きたいと思います。
そして、アレルギー疾患を持つ人に対する食事指導(栄養指導)に真剣に取り組んでもらいたいと考えています。

「リノール酸の過剰摂取に伴う体内での炎症性メディエーターの生成過多、このメカニズムこそがアレルギー(炎症)体質を形作っている。」

このことが、私が薬剤師として過去20年間、アレルギー(炎症)性疾患で辛い思いをしている方々と接してきて、辿り着いた、アレルギー(炎症)に対する結論であります。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございます。
アレルギー(炎症)性疾患で苦しんでいる人は、この日本国だけではなくて全世界に夥しい数の患者さんがいます。
そのような方々の症状が、少しでも緩解の方向に向かうことを祈っております。

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