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メッシ・モドリッチ最後の競演~2022カタールW杯SF アルゼンチン3-0クロアチア

LM10の対決 pic. by Getty Images

アルゼンチンとクロアチアの準決勝は、予想外のワンサイドゲームとなった。

一方的な試合展開も僅かなほころびから

序盤の「入り」は、クロアチアも決して悪くなく、寧ろ、しぶとく勝ちあがってきたクロアチアが老獪に試合コントロールしているように見えた。
しかし、やはり120分+PKを連戦した疲れが残っていたと見るべきだろうか。些細なディフェンスのほころびが、ダムの決壊を招いてしまう。

前半32分。
クロアチアDFがオフサイドトラップをかけ損ない、アルゼンチンのFWアルバレスがハーフウェイラインから抜け出す。
クロアチアのGKリバコビッチが1対1をファールでしか止められず、そのプレーによって得たPKをメッシが確実に決め、1-0と先制した。
PK及び警告の判定は微妙だったが、オフサイドトラップをかけ損なった時点で失点は免れ得なかった感じだ。
それにしても、メッシのPKは鬼気迫るものがあった。
右上の天井に、ズドン。
どんなGKでも、先ず届かないキックだった。

その5分後。アルゼンチンがロングカウンターを発動。
DFが自陣ボックス付近でクロアチアのパスミスをかっさらった後、ボールは、メッシを経由し、アルバレスに渡る。
ハーフウェイライン付近からアルバレス独走。
クロアチアDFが2度カットするが、リフレクションを全て自分で回収し、最後はGKの鼻っ先でボレー。
アルゼンチンの若きホープが、クロアチアの戦意を根っ子からポキンと折る。

こうなると、流れはもう完全にアルゼンチン。
後半のクロアチアの積極的な選手交代も、奏功せず。

後半24分。
メッシの見事なアシストで、アルゼンチンがついに3点めを挙げて、試合を決める。
ハーフウェイラインの右サイドでドリブルを開始したメッシは、クロアチアの若きDFグヴァルディオルにピッタリ追走されるも、巧みな緩急でボックス内のポケットに侵入。どうぞ撃ってくださいという弩マイナスのラストパスを供給。
アルバレスが、自身の2点目を、難なく決めた。

メッシが1ゴール2アシスト。
メッシを慕う若きアルバレスが、2ゴール+PK奪取(実質1アシスト)。
アルゼンチンの攻撃は、とても好調に見える。

メッシがスーパー絶好調

今大会、メッシがどんどん好調になってきている。

もちろん、全盛期の凄さは流石にない。
ドリブルも、強引に仕掛けるというより、緩急で巧みに抜けていく感じ。
フィニッシャーとしても、切り込んで打つより、ボックスギリギリからDFの股を狙うシュートが目立つ。
しかしそんな中にも、針の穴を通すような絶妙なスルーパスや、3点目のような「完璧なお膳立て」で味方を活かすプレーが光る。
身体の衰えを、知恵というかサッカーIQというかでカバーしているトコロが、何とも素晴らしいではないか。

その充実ぶりは、数字にも表れている。

ワールドカップで、ゴールとアシストを4試合(2006年のセルビア戦、2022年のメキシコ戦、オランダ戦、クロアチア戦)で記録した初の選手、ということだ。

ワールドカップの総出場試合数は、クロアチア戦で25試合目。
これはローター・マテウスと並んで史上最多タイで、決勝に出場すれば抜くことになる。

W杯通算11ゴールは、アルゼンチンの選手として史上最多。
また、1大会で5ゴールを挙げた最初のアルゼンチン人選手。
今大会に限って言っても、5得点でムバッペと並び、得点王候補だ。

今大会での代表引退を表明している*ので、決勝戦で活躍するかどうかは少し疑問だが、あと1試合を楽しみに待ちたいと思う。

【補足】*「今回が最後」を公言する功罪
だいたい人間は、「今回が最後」とか「集大成」とか言っていると、目標達成できない脳みそになっているらしい。
だから、100m走の選手には、120m走るつもりで走り抜けろと指導するらしい。
どこかの国の例で言えば、「ベスト8が目標です」って言っていると、いつまでたってもベスト8に到達できない。ベスト8に到達するためには、優勝を目標にしないと難しい、というハナシだ。

明暗分かれたアルゼンチンとクロアチア

激戦グループFを無敗で勝ち抜け、決勝トーナメントの2戦をPKで勝ち上がってきたしたたかなクロアチアは、前回2018ロシア大会の準優勝国。
サウジアラビアに、初戦でまさかの敗北を喫したアルゼンチンは、前々回2014ブラジル大会の準優勝国。

両者の対戦は、まるで必然だったかのような因縁と言うか、ドラマを感じさせる。

個人で対比しても、その思いは一層強い。

クロアチアのモドリッチ、37歳。前回2018ロシア大会のMVP。
アルゼンチンのメッシ、35歳。前々回2014ブラジル大会のMVP。

両者は、ともに10番を背負うキャプテンで、今大会がおそらくラストW杯だと目されている。
長きにわたって、リーガ・エスパニョーラの宿敵チーム(レアル・マドリーとバルセロナ)の中心選手で、バロンドールを争った仲でもあった。
イニシャルだって、同じL.M.である。

先にファイナリストに名乗りを上げたアルゼンチンが優勝できないこともありうるが、この大会を我々は、LM10の2人が火花を散らした大会として記憶することだろう。

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