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知は力なり4:内田樹「サル化する世界」

今朝、東洋経済に掲載された内田樹氏のインタビュー記事「「サル化する日本人」が見抜けない危機の本質」を読んで、面白かったので、さっそく買って読み始めた。「まえがき」からして面白い。


ところで、私は、今回のCOVID-19の件をはじめ、これまで起こってきたこと、これから起こること、世界の諸国と日本での対策や起こっている現象の違いなど、いろいろ読み解くうえで「自粛」というのが、何かとキーワードになるのではないかと勝手に思っているのだけれど、考えがうまくまとまらないでいる。

きっと、誰か、頭の良い人が「自粛の構造」という本をいま書いているのではないだろうか。そして近々出版されたりするかもしれない。

自粛という言葉・概念は日本語独特のものではないかと、私は思う。欧米を始めとする諸外国ではなかなか理解されない言葉だろう。翻訳ができない。特に欧米では「自粛」という概念そのものがないのではないかと思う。・・いや、私が思い込んでいるだけなのかもしれないし、まったく見当はずれかもしれない。

ただ、この私たちが生きる社会を鋭く分析した本書は今まさに読んでみるべき本ではないか、と思い手にとった次第である。「自粛」のヒントになるのではないかと思う。まだ読み始めたばかりなので、感想は、また次回にでも投稿しよう。

さて、以降は、COVID-19の3月29日 21:00 (日本時間) でのスナップショットと若干の私の見立て、である。素人の見立てなのであまりアテにはしないでほしいが、どこか参考になるところもあるだろう。免責はしとく。

※毎回のように、最後のほうに「重要」として、WHO, 厚生労働省、関連サイトを貼ってあるので、むしろ、そちらのほうが重要かもしれないので、そちらをチェックすることをお勧めする。

先週の投稿で、私は最後にこう書いた。

人間の行動様式とウイルスの感染効率が密接に関わる。一人一人の行動次第で、このまま抑え込むことができるか、それとも、ヨーロッパのような状況になるかが変わる。とにかく、慌てず騒がず、かといって軽視せずに諦めずに一人一人が行動することが大事だと痛切に感じているところである。

他の関連過去記事:
知は力なり:武村政春「生物はウイルスが進化させた」
知は力なり2:山内一也「ウイルスの意味論」

facebook には書いていたのだが、実は、なんだか全体的に緊張ムードが緩んでいてひょっとしたらその後の1週間後か2週間後に大きな波が来るかも、と思っていた(*1)。 そうしたら、なんと、花見に人が集まりK-1も強硬実施、しかも6500人も集まったというではないか。苦境はわからないでもないけれども。しかも休校要請で休みになった子を連れてスペインに観光に行ってきた家族がいて、成田空港での待機要請も断って国内線で家に帰ったら、その子供が感染していたとか。

一件一件のことがらでとやかく言うつもりはないが、

「このくらい大丈夫に決まってるやん、政治家や専門家はちょっとビビりすぎなんちゃう、自粛自粛ってうるせーよ、商売で困っている人も多いのん誰も責任とらんって、ひどい話や、それで下向いて生きて、楽しみもなければ免疫力も落ちてそのほうがまずいんちゃうのん、要は気持ちよ、気持ち」

という雰囲気になっていた、その象徴的な出来事だと思った。

その後の先週 3/22 からの1週間の動きは慌ただしかった。K-1ショックからスタートして、小池都知事の東京のロックダウンの示唆と週末の外出の自粛要請・隣接4県の東京との行き来の自粛、そして、東京を中心とした日本の感染者数が大きく拡大という局面の週末を迎えた。火曜日から金曜日まで天気すばらしく良く、この週末は東京の桜も満開を迎え、土曜日は曇ってはいたが、日中は晴れ間ものぞき、暖かい一日だった。そして今日、日曜日に首都圏に雪である。

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さて、COVID-19 の現状を、ざっと概観してみよう。

日本と韓国の感染拡大の状況はこんな感じだ。(*2)

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※グラフは一日の感染者数。WHOのデータとKCDC、日本の厚生労働省のデータを使っている。作図は私(以下同様)。グラフを見やすくするためにY軸を左右に振っているので注意。

残念ながら、予想されたこととはいえ、日本は感染拡大中だ。これまでいくつかの波が押しては引き押しては引きしているように見えて、それぞれの波が高くなってきているようにも見える。今後の波は相当に大きそうだ。

韓国も韓国CDCのサイトによれば、外国からの流入の影響が大きく、1日100人程度が続き、なかなか振り切れない。チャートの右のほうにどれだけ尾を引くかは、ピーク後の対応や、周囲(外国)の情勢によって変わる。二つ目の山が出来てくる可能性もあり、中国は今それを恐れている。

中国、新型コロナへの警戒維持呼び掛け 気の緩みを懸念 (2020年3月28日ロイター)

日本は、広く報道されているとおり東京の感染数の増加が大きい。また、感染経路のたどれない感染者も多くなってきたということである。感染源の特定や追跡はクラスターの早期発見早期対策という戦略の根幹と考えられるので、かなり問題である。

また、今、見ているのは1-2週間前の状況であることに注意する必要がある。K-1や花見その他の影響が出るとするとこれからかもしれない。これから迎えるだろう大きな波のピークがどこまで高くなるのか、固唾をのんで見守ることになる。上のグラフからなんとなく見えるだろう。・・・実際には波が来ないことを祈る。

諸外国に比べて圧倒的に低いレベルだとはいえ、医療の体制が追い付かなくなると、今はまだ少ない死亡者数が、急激に増えることとなる。厚生労働省のサイトを見ていると、「入院治療を要する者」と、そのうちの「人工呼吸器又は集中治療室に入院している者」が、一日いちにち、少しづつ増えているのがまずい。経過が気になる人は、厚生労働省のサイトをチェックするといい。

3月3日に「入院治療を要する者」が198人、そのうち「人工呼吸器又は集中治療室に入院している者」が24人だったのが、3月28日には「入院治療を要する者」が1217人、そのうち「人工呼吸器又は集中治療室に入院している者」が59人までに増えている。

少し前の記事だが、医療の現場の様子はこういう感じらしい。

改めて言うまでもないが、医療体制の破綻というのが最も避けなければならない事態である。次のサイトは実態の可視化という点で非常にすばらしいと思う。

病床数という点でみたときに、東京、愛知、大阪がすでにキャパオーバーになっているのがわかる。

気になるのは有名人やプロスポーツ選手に感染者が出たこと、医療施設での集団感染、そして感染経路を特定できない感染ケースの増加だ(*5)。

外国を見渡してみても、感染が大きく広がっている地域の要人やタレントが罹患したニュースが絶えないが、一般人よりも格段に注意が行き届き周囲も注意をする、そして資金を持ち医療リソースとのアクセスもよい、そういう人々に感染が及ぶ、ということは、その社会での感染拡大の象徴だと受け取ってよいだろう(*5)。

また、院内感染は医療の限界の兆候とも受け取ることができるし、福祉施設への感染といういうことになると集団感染が発生しうるし、そのうえ、福祉施設が責任持てないと判断しサービスを停止する、などということになると大きな社会問題になる。

さて諸外国の状況を概観してみよう。

ヨーロッパは悲惨な状況が続いているが、なんとなくピークを迎えたようにも見える。イタリアとスペインの日ごとの感染者数増加のグラフは次のようなものだ。

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ことさら封鎖・ロックダウンとの関連をつける意図はないが、思い切った対策を打ってから効果がでるまでに2週間程度かかると想定できるがそれが表れているとは思う。なお、対策は一つではないので、何がどれだけ効いたのかは後日、専門家の手によって明らかになると思う。たぶん、封鎖・ロックダウンというのは対策の本腰を入れた象徴として、ターニングポイントとしてよい指標なのかもしれないと思った次第だ。

ただし、この峠は、中国や韓国みたいに鋭いものにはならず、ゆるやかになるものと考えている。それは、対策がどれだけ規律正しく実行されるかということにかかっているからだ。緩ければ緩いピークになるはずだ。

この点は日本も同じであることを認識する必要がある。何かが一歩間違えるとこうなるのだ。そして、今、増加傾向にあるとはいえ、なんとか、ここまで抑え込めてきたのは、一人一人の行動によるのだという自覚は必要だと感じる。

またイタリアもスペインも、死亡者数は感染者数の後を 1 - 2 週間を追うと考えられるので、まだまだ増加傾向はゆるやかにはなるだろうが続くだろう。・・・そうならないことを祈る。

フランスとドイツがスペインと同じか、さらに1週間遅れくらいの傾向だろうか(*3)。


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※グラフは左がドイツ、右がフランス、中国とスペインと比較している。

アメリカはこれからだ。規模が違う。これは大変なことになってきた。これからの1週間が恐ろしい。


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※一枚目のチャートは、1日あたりの感染者数。WHOの数字を使用し、29日の米国データは米国のCDCの US 28日にレポートの数字。急激に増えているのは検査をどんどん「他のどの国もやれていない大規模で(*4)」実施しているから。とはいえ、すごい数である。上のヨーロッパ諸国のチャートと比べやすいように中国とイタリアと比較している。
※二枚目のチャートは1日あたりの死亡者数。数字は一枚目と同様。単純に致死率を計算すると1.3%なので、検査のカバレッジが他の国にようやく追いついた感じではあるが、死亡者数は感染者数の 1-2 週間ほど後を追いかけるので、空恐ろしいチャートである。これからの1週間で大変なことになるだろう。・・・そうならないことを祈る。

ちょっと前までは、中国が収まって、韓国も収束、日本がなんとか頑張り切れば抑え込み成功で収束という雰囲気だったが、まさか、ヨーロッパでここまで広がり、予想していたとはいえ、アメリカでこれほどまで広がると、先は長そうだ。実際、入国者の影響で韓国も中国もなかなか新規感染者数が減らず、振り切れない。日本もようやく入国者の検疫と管理を強化したようだが、ちょっと遅きに逸したのと、少々甘かったのではないかと個人的には感じている(エビデンスはない)。

そして、暖かくなれば感染効率は減り収束方向だろうと考えていたが、U.S.A.の動向を固唾をのんで見守っているところだ。U.S.A.の状況はヨーロッパどころでないように見える。また、以前にも書いたが南半球が危ないし、資本力も社会基盤も脆弱な発展途上国に広がってきている。こちらがU.S.A.の後に大問題になってくるだろう。私は、6月には収束できるだろうといまだに楽観的に思っているが、それも、行政機関の正しい判断と迅速な施策、そして何よりも一人一人の行動にかかわっている。

最後に国連事務総長の 3月19日のメッセージをリンクしておこう。


■重要
W.H.O.
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019

厚生労働省のページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)(2020/3/26)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(3月19日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000610566.pdf

考え方(これを意識することは、すごく大事だと思います。)
https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000603002.pdf

COVID-19 新型コロナウイルス対策ダッシュボード
https://www.stopcovid19.jp/

日本ウイルス学会:新型コロナウイルス感染症について
http://jsv.umin.jp/news/news200210.html

米国CDC
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/index.html

韓国CDC
https://www.cdc.go.kr/board.es?mid=a30402000000&bid=0030

中国CDC
http://2019ncov.chinacdc.cn/2019-nCoV/

■まとめ記事
ロイター
〔情報BOX〕新型コロナウイルスを巡る海外の状況(29日現在)
https://jp.reuters.com/article/%E3%80%94%E6%83%85%E5%A0%B1%EF%BC%A2%EF%BC%AF%EF%BC%B8%E3%80%95%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%92%E5%B7%A1%E3%82%8B%E6%B5%B7%E5%A4%96%E3%81%AE%E7%8A%B6%E6%B3%8129%E6%97%A5%E7%8F%BE%E5%9C%A8-idJPL3N2AS5JY

AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3269154

■注記

(*1) note にはそこまでは書けなかった。書きっぱなし感のある facebook と、 note との差である。不吉な予想はあまり書きたくない。あたったってちっとも面白くないし、悪い方の予想を出す人は他にたくさんいるからだ。

(*2) 検査の数について

日本と、韓国では封じ込める方法がまったく異なるので、検査の範囲が異なるので絶対値は比較しがたい。中国のデータから、致死率は 1.2%程度だという報告があり、韓国の数字 (1.3%) から、だいたい正しいと思ってよいと思う。とすると、日本は報告された3倍程度の感染者が実際にはいると考えてよい。それでも諸外国と比較して十分に少ない数字だが。。

これらのチャートは一日の増分を見ているので、変化を観察している。綺麗にうまく抑え込めて他に要因がなければ中国や韓国のように釣り鐘型になる。

右のほうにどれだけ尾を引くかは、本文に書いたとおり、ピークを抑えた事後や、周囲(外国)の情勢によって変わる。二つ目の山が出来てくる可能性もあり、中国は今それを恐れている。

中国、新型コロナへの警戒維持呼び掛け 気の緩みを懸念 (2020年3月28日ロイター)

(*3)ドイツについて

ドイツは死亡者数が、他ヨーロッパ諸国と比較して極めて少ないことに注意されたい。感染者数は、検査のポリシーや対策の戦術によって検査の範囲が変わるし、そもそも数が多く検査が追い付かない、などによって絶対数は、国ごとに0.5倍~3倍程度の比率で異なる。が、1日の感染者数増を見ることで傾向を見ることはできると考えている。

(*4)トランプ大統領がプレス会見で言っていた言葉

「かつてない規模」「他のどの国もやれていない規模」ということだった。「検査の実施数において、韓国は素晴らしい仕事をしたが、米国はそれ以上の規模になる」とか、記者の質問に答えて「3億数千万人のアメリカ全国民に対して実施するつもりはない、それは非現実的だ」ともコメントしていた。(何日の会見だったか忘れてしまった。)

(*5)本当は情報のソースを明らかにしておかないといけないが、キリがないので、いちいちリンクは貼らない。みなさんニュースやワイドショーでたくさん触れているのではないかと思し、うっとうしいだろうと思う。とはいえ、少しだけあげておくとするならば、
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