見出し画像

未来への一歩を踏み出すための許しのプロセス:Archbishop Desmond Tutu and Rev Mpho Tutu, "The Book of Forgiving"

なぜ、許すことが大事なのか。それは、相手のためではなく、自分のためなのである。アパルトヘイトの時代の南アフリカを生き、自身や周囲の人たちの想像を絶する苦しみの中で、戦い抜き制度を撤廃し、新しい国を築いたそんな人々の精神的な支柱となったツツ司教が説くからこそ、説得力がある。

つらい過去を忘れずに、相手を決して許さず、復讐心に燃え、目には目を歯には歯を、復讐は復讐の連鎖を生む。そのような生き方は、相手に、そして過去に、しばられたものとなる。そうではなく、つらい過去はつらい過去として受け止め、向き合ったうえで、相手を許し、過去と決別することで、新しい自分の人生を生きていくことができる。そのために必要なことは許しなのだ。

また、相手に憎しみを持って接して、たとえ復讐を遂げたとしても、相手との関係は変わらず、かえって悪くなる。相手を変える可能性があるのは許すことだけである。必ずしも相手が変わるとは限らない、それを期待してはいけない。しかし、許すことで相手との関係は変わり、相手もまた、自分自身のことを真に考え直すことができるようになる。

復讐をしようとしている限り、あなたは相手と同じであり、相手はそれによって変わることはない。

画像2

そして、許すためには4つのプロセスを踏むことが必要である、と説く。

1. ストーリーを語ること:自分の経験した、自分にとっての事実を繰り返し語ることで、気持ちを整理し落ち着かせることができる。より客観的な見方ができるようになる。
2. つらいことを特定し表明すること:自分のつらさを相手に伝える。相手に直接伝えるのがもっともよい方法だが、相手に伝えることが難しければ、信頼できる周囲の人や、匿名のサイトなどを利用することもできる。
3. 許すこと:許すというのは、一つの選択肢である。許すことで私達は成長し、過去の関係を断ち次のステップに行くことができる。単なる被害者ではなく、悲劇を乗り越えて新しい人生を切り開くヒーローになれるのである。許すことで、過去のストーリーは新なストーリーとなり、あなた自身が救われる。
4.相手との関係を解消するか、新たな関係を築くか:相手との関係を今後どのようにしていくかはあなたが選択することができる。

それぞれのステップでどれほどの時間がかかるか、どのようにして、次のステップに進めるか、それは、ケースバイケースであろう。

大事なことは、過去と向き合い、客観的にとらえ、相手も自分と同じ人間であることを認め、相手のことも自分のことも許して、前を向いて一歩を踏み出すことである。過去は過去でつらい事実は変わらない。しかし、そのうえで、未来をどう生きるかは選択できるのである。

許すのは相手のためではない。また、決してあった出来事をなかったかのように過ごすということでもない。過去と相手と自分自身に縛られた自分を解放し、新たな自分自身を築いていくために必要なプロセスなのである。

人間の眼は正面を向いて二つあり、後頭部にはついてない。


さて、私は仕事や生活するうえで、大変な目にあったり、ちょいと苦しくつらいことがあっても、こんなことくらいはツツ司教やネルソンマンデラに比べたら全然大したことない、と思うようにしている。

・・・当たり前である。

私なんか甘ちゃんだ。たまたま、偶然に、平和で経済的に恵まれた日本にそこそこの頭をもって生まれ、暖かい周囲の人たちにタイムリーに出会い、たいした努力もしていないくせに、運が良く世界的な大企業でいまだに働くことができている。なぜか、幸運なことに、そうして生きてこられた。だから周囲に感謝し、周囲にできるだけのことをしながら、前を向いて人生を駆け抜けようと思う。

画像1

私は過去を振り返らない。過去を懐かしんでいる暇などない。過去は私の中に生きているのだ。

※ 2018年7月に Facebook に投稿したものを加筆訂正のうえ採録しました。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?