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サマラ・ジョイ Samara Joy "Sweet Pumpkin"

今年のグラミー賞では、ビヨンセが4つの賞を受賞し、累計受賞数32で歴代の新記録となり、BTSが受賞を逃す、内田光子が受賞を逃す、宅見将典の "Sakura" がグローバル音楽アルバム賞を受賞などいろいろ話題になっていた(*1)。

その中で、これまで何度か紹介してきたサマラ・ジョイが Best New Artist と Best Jazz Vocal Album の2つの賞を受賞して嬉しい限りだ。

ジェラルド・クレイトンのピアノとのデュオの "Sweet Pumpkin"がつい先週にシングルリリースされていた。こちらも素晴らしいボーカルを堪能できる。


しかし、若いうちからこんなに大成してしまっていいのだろうか。

サマラ・ジョイを初めて聴いたのは、パスクァーレ・グラッソの2021年のアルバム "Pasquale Plays Duke" の中の一曲 "Solitude" だった。

パスクァーレ・グラッソの超絶ギターも素晴らしいが、表情があって明るく力ある声にむしろ驚かされた。こんな人がいるのか、と。本人の名前を冠した2021年のデビューアルバムはパスクァーレ・グラッソがバックを務めている。

どの曲も素晴らしいと思う。ふくよかな低音からファルセットの高音になめらかに伸びていく明るい声を堪能でき、絶妙なビブラートに心を揺さぶられる。

去年の11月23日にアップした 雑記帳・34 でもちょっと触れていた。それをちょっとここに再掲しておこう。

YouTube で、彼女のライブをいろいろ聴くことができるが、どれも力がありエモーショナルだが、過剰な湿っぽさをいっさい感じさせない。
次の動画はストリートでのライブだろうか。思い思いに楽しむオーディエンスも楽しく、飛び込んで一緒に踊りたくなる。

火曜日しばらく雑記帳・34:新しい知識の獲得とボジョレ・ヌーボー

エメット・コーエンのトリオをバックに歌い上げる Round Midnight も素晴らしい。

そして、2022年にリリースされたアルバムが "Linger Awhile" 

"Someone to Watch Over Me", "Misty", 'Round Midnight" などスタンダードを堂々とした歌いっぷりだ。
"Guess Who I Saw Today"、歌詞がはっきりと聞き取れ冒頭から展開が読めるその歌を、いかにも思わせぶりに表情たっぷりに歌い上げる。

今の世代にふさわしく、SNSでも人気、TikTokでも支持されているということだ。パスクァーレ・グラッソといい、このサマラ・ジョイといい、クラシカルなスタンダードをフォーマットを逸脱することなくストレートに表現しながら、現代的な超絶技巧もさらりと披露し、しかも肩に力がはいった感がまったくない。

このようにして流行を超えて伝統が形作られていくのだろう、と思わせるすばらしいミュージシャンだと思う。


これから化けるであろう。楽しみだ。


■注記

(*1)たとえばロイターの記事

グラミー賞の候補者と受賞者の全リスト (www.grammy.com)
2023 GRAMMY Nominations: See The Complete Winners & Nominees List

オジーオズボーンが Best Rock Album (ロックアルバム賞)と Best Metal Performance (メタル演奏賞) を受賞していたり、

テリ・リン・キャリントンが、"New Standards Vol. 2" で Best Jazz Instrumental Album (ジャズ・楽器アルバム賞)

ライ・クーダーとタジ・マハールが Best Traditional Blues Album


他に、ロバート・グラスパーの "Black Radio 3" が Best R&B Album、ボニー・レイットの "Just Like That" が Song Of The Year などが、私の目をひいた。

ロバート・グラスパーも好きで前からよく聴いている。


そういえば、サマラ・ジョイが受賞した新人賞では、何かと話題のマネスキンも候補にあがっていた。

ついこの間アルバムがリリースされていて、最近、聴くことが多い。



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