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MLB Column 2007: 6. Rule 5 Draft

【こちらのコラムは筆者がMLB選手エージェント事務所にてインターンをしていた2007年当時のブログからの抜粋です。当時の記憶を保存することを目的としているため、修正なしで掲載しています。現在とは異なることもありますので予めご了承下さい。】

⚾︎▶︎▶︎ RULE 5 DRAFT ◀︎◀︎⚾︎

さて特に書くこともないので、「Rule 5 Draft」について。

18歳以下でドラフトにかかった選手の場合5年間、19歳以上でドラフトにかかった選手の場合4年間までは当該球団が確実に(トレードは別として)選手の所有権を保有します。しかしこの一定期間が過ぎた後、40-Men Rosterつまりメジャーのリザーブに入っていない選手を他チームが「ひとつ上のレベルでプレーさせる」ということを条件に獲得することが出来るんです。つまり3Aで行き詰っていた選手が、Rule 5 Draftによってメジャーデビュー出来る可能性があります。この取引が有名な「Winter Meeting」の最終日に、ドラフト形式で行われます。尚、「Rule 5 Draft」の名称はMLB規約の第5条に記載されていることに由来します。

しかしどのチームも他チームの選手を「横取り」出来るわけではありません。

1.選手を獲得できるチームは、40-Men Rosterに空席がなければならない。
2.獲得チームは選手の元所属チームに規定額を支払わなければならない。(MLB, 3A, 2Aとレベルによって異なる)
3.獲得チームは当該選手を1年間ひとつ上のレベルでプレーさせなければならない。
4.3を破った場合、獲得チームは速やかに元のチームに選手を戻さなければならない。

といった規則があります。

いずれにしても、こうしてマイナーに埋もれている選手がメジャーに上がれるチャンスを与えています。球団側もメジャーレベルでのトレードやFAに頼っていると、この制度によって生え抜きの才能ある選手を失う可能性があるわけです。したがって球団側は、どうしても手放したくない若手有望選手を40-Men Rosterに入れて他球団に奪われるリスクを避けるわけです。

こうしてMLBでは、選手の入れ替えが活発に行われます。まだ調べたことはありませんが、MLBのRoster平均年齢とNPB(日本プロ野球機構)1軍のRoster平均年齢なんか調べたら面白いかもしれませんね。平均だとそれほど違いがない気がしないでもないですが・・・。

しかしRule 5 Draftを受けたからといって、確実に上のレベルでの定着が保障されているわけではありません。やはりそれ相応の実力が必要です。

うちのクライアントのひとりが、昨年末のRule 5 Draftにかかって、獲得チームのメジャーキャンプに招待されたそうです。しかしキャンプでなかなかアピール出来なかったこの選手は、結局権利を元のチームに譲渡され、メジャーデビューすることは出来ませんでした。

しかしこの制度でメジャーでの地位を確固たるものにした選手もいます。その好例がサイヤング賞を2度受賞しているMinnesota TwinsのJohan Santana投手です。2Aレベルでしか投げたことがなかった彼はRule 5 DraftでTwinsに指名され、メジャーデビューし、現在の地位まで上り詰めたとか。

日本でも独立リーグが増え始め、プロ野球拡大の兆しもあります。良い人材をより活かせる環境でプレーさせるということは、リーグ拡大、実力拮抗を促す上で、非常に重要なことだと思います。そのための制度をどんどん整えていかなければいけないですよね。

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